インドの学者:ベトナムはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉を主導的に推進
2020年06月27日付 VietnamPlus 紙
インドのRCEP不参加に関し、以前から、いくつかの懸念要因が存在
インドのRCEP不参加に関し、以前から、いくつかの懸念要因が存在

 FORE経営学校(FORE School of Management/インド、ニューデリー)のファイサル・アメッド(Faisal Ahmed)博士・准教授によると、ベトナムはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉の進展促進で主導的で責任感のある役割を担っている。

 ベトナムはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉の進展促進で主導的で責任感のある役割を担っている。
 これは、FORE経営学校のファイサル・アメッド博士・准教授による評価で、6月25日に、RCEPがもたらすチャンスや協力の展望、そして、交渉の進展におけるベトナムの役割についてのベトナム通信社の質問に答えた時のもの。
 RECPの交渉に参加している15か国が6月23日にオンラインで会合し、インドの交渉復帰の可能性について協議したが、今後のインドの交渉復帰への展望や交渉復帰の条件に関し、ファイサル・アメッド准教授は、RCEP交渉参加国による第10回閣僚会議でのプレス声明ではRCEPはインドに対する門戸を開いたままだと強調している、と指摘した。
 ファイサル・アメッド准教授によれば、インドのRCEP不参加に関しては、以前から、いくつかの懸念要因があったという。
 インドのいくつかの要求の中には、中国からの輸入品の急増を抑制するための自動発動システムの適用、サービスに関するより適切な合意、原産地規則の厳格な適用などが含まれている。
 しかし、上記に加え、インドのRCEP参加における最も大きな障害はインド国内の工業部門からの圧力で、同部門は従来から、中国からの輸入品が国内市場に溢れ、インドの工業に悪影響を与えるのではないかというリスクを懸念していた。
 今も、その懸念があり、そのため、RCEPがその懸念を払拭できるかどうか、見守る必要がある。
 さらに、「地経学」(ジオエコノミクス)的な検討要因もいくつかある。インドはアメリカとの貿易合意を目指しているが、今年中には実現できそうになく、できたとしてもアメリカの大統領選挙後になるであろう。よって、インドがRCEPの再参加を検討できる環境になるのは、早くとも今年11月の大統領選挙の結果が出た後になるであろう。
 ファイサル・アメッド准教授は、RCEPへの参加はインドにメリットをもたらすとし、参加は「メイド・イン・インド」を後押しすることにもなりうる、と述べた。
 さらに、インドは既にASEANや日本、韓国と貿易合意に達している。そうした貿易合意はもともと、現在の新型コロナウイルスの感染拡大の状況下においても、インドが様々な大きな利益を得られるようサポートするものである。
 ASEANの今年の議長国として、RCEPの交渉促進におけるベトナムの役割に対する評価に関し、ファイサル・アメッド准教授は、ベトナムが議長国を務める2020年のテーマは「結束と主体的な適切対応のASEAN」で、地域統合の強化や、第4次産業革命時代への適応・推進に向けたASEANの結束のための環境整備において、ベトナムは重要な役割を担っている、と述べた。
 さらに、ベトナムは、ASEANだけでなく、インド太平洋地域においても、経済的にも戦略的にも重要な役割を果たしていると言う。

【関連記事:RCEP署名はコロナ後の地域経済の回復に貢献する】

第36回ASEAN首脳会議に先駆け、ベトナムの商工相はRCEP交渉参加国の閣僚会議を主宰した。よって、ベトナムはRCEP交渉の促進において主導的で責任感のある役割を担ってきた。
RCEPの交渉参加国は今年の年末までにRCEPへの署名ができるよう希望しているが、ファイサル・アメッド准教授によると、現在、具体的な期限は一つも決まっていない。もしアメリカの大統領選挙前に署名で合意できれば、全てがはっきりしてくるが、2020年11月までに署名できなければ、年内の署名合意はできない可能性が高いと言う。
その理由として、トランプ大統領が再選した場合、アメリカは一部のRCEP交渉参加国との二国間合意を望む点があり、その中には中国との第2段階の貿易合意も含まれる。
また、アメリカは、韓国との貿易協定など、現行の二国間の貿易協定の改定に乗り出すであろう。そうなると、地域の経済力学を変えることになる。
しかし、ファイサル・アメッド准教授によると、民主党がアメリカで政権を奪還すれば、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)が見直される可能性が非常に高く、日本、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、ベトナムなど、RCEP交渉参加国の多くはCPTPPの加盟国でもあり、そうなると、RCEPの合意がもたらすものよりも、CPTPPの合意の方がよりよくなると言う。
そのため、アメリカの大統領選前までに署名できなければ、RCEPは今年、あるいは、2021年中にも、署名できる可能性は非常に低くなるであろう。

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( 翻訳者:池田樹生 )
( 記事ID:5454 )