ベトナムにおける激甚自然災害1年の教訓
2020年12月19日付 VietnamPlus 紙
クアンチ省での地滑りで埋もれた第四軍区所属の第337経済国防団の幹部、兵士の捜索で緊急に掘り起こし作業をする当局部隊
クアンチ省での地滑りで埋もれた第四軍区所属の第337経済国防団の幹部、兵士の捜索で緊急に掘り起こし作業をする当局部隊

 地域住民の各世帯の特徴に応じた「4つの現場」[訳注:現場で指揮、現場の部隊、現場の手段・物資、現場で後方支援]という方針の柔軟な導入と同時に、基礎レベルでの突撃部隊の役割発揮は自然災害防止対策に極めて必要。
 農業農村開発相で自然災害防止対策に関する中央指導委員会常任副委員長のグエン・スアン・クオン氏は今回の歴史的な自然災害への対応に努めることを通して、成果を収めた一方で、克服すべき課題や限界が数多くあったと伝えた。

   多くの不備と限界

 グエン・スアン・クオン大臣によると2020年の間に自然災害による人的被害はとても大きく、特に土砂災害によって救助部隊に所属する幹部、兵士35人と地方の幹部2人が命を落とした。
 各省庁、業界、地方では、科学的な研究が行われ、評価が総括され、寸断された時の僻地区域など広い範囲での大きな自然災害の状況に対するシナリオや対応策が示された。[しかしそれらは]限界があり、秩序だっておらず実状に合致していない。自然災害防止対策や救護、救難のための部隊は、専門性に欠け、深い専門性の訓練や養成がなされていない。専用の設備が不足し、自然災害の多くの状況でのニーズに応えていない。
 「全体的に言って、インフラ基盤の耐災能力、特に住民の家屋や自然災害防止対策のための建築物の耐災能力は、台風・洪水の破壊力に対して低い。交通網では頻繁に土砂災害や浸水、寸断が起こる。自然災害の影響を受けた人々に対する一部の組織や個人の救助活動、募金、キャンペーンの運営には依然として多くの不備がある。行政機関、一部地域の自然災害防止対策機関の指導の執行がまだきちんと行われていないため、人的にも財産的にも残念な被害を引き起こしている」とグエン・スアン・クオン大臣は強調した。
 深刻な被害を引き起こした洪水・台風の原因に関して分析し、農業地方開発省のトップは「自然災害の客観的な要素が日増しに激しく、異常になっており、数量、強度、範囲を含めて歴史[的なレベル]を超えた」との見方を示した。それと共に、山の地形の斜面傾斜角度が大きく、強く分断された。山岳地域の大部分の土地の構造がもろく、地滑りが起こりやすいところに、歴史的なレベルを超えた雨が結びついたため、急速に集中的に洪水が起こり、土砂崩れや鉄砲水が起こる危険性が高まった。

 [関連記事:2020年を振り返る:深刻で異常な自然災害の1年]

 多くの河川の[洪水を氾濫原などに]誘導する[河道の]底には土砂が堆積しており、高潮になると洪水の排水が遅くなる可能性がある。洪水で深く浸かると2mから3m、レ・トゥイ県(クタンビン省)のように5mになるところもあった。山岳地域や工業団地、沿海地域の人口は増えており、安全性を失う危険がとても高い。
 主観的な面に関して、グエン・スアン・クオン大臣は「認識[不足]のため、いくつかの地域では行政機関と住民の関心レベルに限界があるため、具体的な問題解決方法の提示を集中的に行っておらず、自然災害防止対策業務への適切な投資も行っていない。一部の地域では、インフラ整備、生活、生産活動の過程で、自然災害と被害の危険性を急速に高めるようなことまで行われている」と明確に指摘した。
 自然災害防止対策や捜索救難のための陣営組織のシステムのほとんどが兼任で、活動は専門性に欠け、専用の設備や指導・運営をつなぎ、監視、モニターを補助する機器なども不足している。そして、広い範囲での大きな自然災害の状況に対応し、悪い影響を克服する際に、戸惑い、動揺するような状況をまねいている。
 各省庁、業界、地方の自然災害防止対策業務における科学技術の応用、データベースシステムの構築には、特に土砂災害警報において、まだ多くの限界がある。
 「4つの現場」の方針を良好に実施するための、投資への関心及びコミュニティの能力の向上、基礎レベルでの宣伝は、まだニーズに応えるものではなく、各計画も、実状に即していない。一部の地域ではまだ形式的[な対応]で、特に大きな自然災害に遭遇した際、[対応の]効果があまり高くない状況をまねいている。
 自然災害防止対策業務に配分される経費もまだ不備で、分散しており、各重点[箇所]の処理に何年も長引き、その効果も高くない。2020年、当局の各機関は、堤防に関して重要な位置、重点箇所である230箇所と倒壊、浸透の危険が高い貯水池200箇所を確定したが、まだ処理されていない。
 船舶の係留エリアでは、ニーズのおよそ48%しか対応していない。自然災害防止対策の各プログラム、スキーム、プロジェクトを実現するためのリソースが不足している。

   経験から得た教訓

 グエン・スアン・クオン大臣は、気候変動の影響により、いつでもどこでも自然災害が起こりうるリスクの危険性があるとの見方を示した。住民の生命と社会の成果が安全に確保されるのは、防止対策と対応業務が重視され、経済・社会活動の中に恒常的に結びつけられた時にだけである。特に防止段階での投資への関心が必要だ(防止に1ドン投じれば[被害の]克服で7ドン[出費を]減らせる)。自然災害が過ぎ去ってから状況を克服すると、関連する活動は、大抵、軽視される。
 「自然災害防止対策、救助救難活動では、先進的現代的な設備や、業務の専門性と地域について把握し、情熱があり、困難・危険に萎縮せず、常に訓練・演習を積むプロの部隊を装備しなければならない。予報や監視、分析、警報のための統一的なデータベースや正確で効果的で時宜にあった決定も求められる」とグエン・スアン・クオン大臣は明言した。
 このほか、狭い範囲への正確で早期の予報・警報業務、特に雨や洪水、鉄砲水、土砂崩れに関する業務は、自然災害への対応と指導・運営において最も重要な役割を持っている。

 地域住民の各世帯の特徴に応じた「4つの現場」という方針の柔軟な運用と同時に、基礎レベルでの突撃部隊の役割発揮は自然災害防止対策に極めて肝要である。それに加えて、地域での自然災害による被害の軽減において、特に寸断されやすい地形の山岳地域では、トップの人間の役割が決定的な意味を持つ。
 グエン・スアン・クオン大臣は[今回]ありありとあらわになった経験から得た教訓の中での1つを共有した。それは我が民族のお互いを思いあう気持ち[相親相愛]は、特に困難苦難の中でもとても大きなものであるというものだ。
 しかし、この[助け合いの]各活動が、透明性があり綿密に組織され、タイムリーに広く情報が伝わり、地方行政機関と連携するための条件を整えなければ、[活動が]重複し、適切ではなくなり、悪用されかねない。自然災害が起きている時、社会や個別の各活動の監視では、強い方法を使用しなければならない可能性がある。例えば、厳しい禁止、強制、許可証の回収はとても必要だ。対象者を直接守るだけでなく、多くの場合コミュニティをも守ることに貢献するからである。

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( 翻訳者:須藤遼 )
( 記事ID:5725 )