農業部門のDX、どこからはじめるべきか?
2021年11月16日付 VietnamPlus 紙
VietGAP基準(訳注:農業農村開発省が定めた農業生産管理基準)に従った衛生的な農園
VietGAP基準(訳注:農業農村開発省が定めた農業生産管理基準)に従った衛生的な農園

農業部門のDX、どこからはじめるべきか?


COVID-19の流行に伴い、主要な3つの課題である気候変動、市場変動、そして消費傾向により、ベトナムの農業部門ではデジタルトランスフォーメーション(訳注:以下「DX」)の発展が喫緊の課題とされている。



ベトナムの農業部門は3つの課題に直面している。気候変動、市場変動、そして世界的な消費傾向の3つである。

これら3つの課題に直面し、とりわけCOVID-19の流行が生産や加工、消費に影響を与えていることを考慮すれば、農業部門でのDXを用いた発展こそ、喫緊かつ加速すべき取り組みなのである。

上記の論点について、ベトナム国営通信社の記者は、ベトナム・デジタル農業協会のグエン・ドゥック・トゥン事務局長にインタビューを行った。


-記者:DXについて、とりわけ農業部門におけるDXの話になりますと、多くの人がいまだにそれがどのように、またどこからはじまるのか、その実施方法について疑問に思っています。そのことについてもっと教えてもらえますか?

-トゥン事務局長:農業部門を含む経済全体を転換するには、まずリーダーのマインドセットからはじめる必要があります。農業を機械化するというゴール設定が必要なのです。といいますのも、人間の生産や労働をサポートする機械や設備なしでは、労働生産性の最大化や技術の応用というのは非常に難しいからです。

加えて、農業部門におけるDXを促進するための最適な方針を立てる必要があります。

人的資源も、以下の両方を訓練することが重要な課題であります。まずは、農業における技術や機械化を担う企業のための訓練です。そして同時に、農業の主な労働力であり、農産物を生産する農民たちに対する訓練です。

次に、その土地の地理や土壌、その他の自然環境に最も適したテクノロジープラットフォームをいかに作るかとの点です。

それだけではなく、我々は市場を予想することが求められています。なぜなら、市場が抱えるリスクやニーズを把握せずには、DXというゴールを達成するのは難しいからです。


-記者:多くの専門家が農業部門におけるデータ同期システムの導入は未だに難しく、そのことがDXの推進を遅らせていると述べていますが、これについてはどうお考えですか。

-トゥン事務局長:DXのプロセスにおいて最初にすべきことはデータベース(ビッグデータ)の整備です。それにより、方針や計画、戦略を立てる際に参照するオリジナルの情報源を得ることが可能になるのです。しかし、そのデータは管理機関や企業、そして個人のところで分断されています。このような背景により、データの同期が困難になるのです。

しかし、農業農村開発省および我々ベトナム・デジタル農業協会の側には独自の解決策もあります。

我々は、最初に取り組むべきところとして、米やコーヒー等の高価値の商品群を選びました。そして現時点では、我々は初期のデータベースをもっています。

農業農村開発省は積極的に各当事者の参加を促すことに注力してきました。個人的には、政府の指導および当省のデジタル化計画を遂行していけば、データはもはやデジタル化を遅らせるボトルネックではなくなると考えています。


-記者:加えて、農産物の生産と消費に情報技術を応用するにあたり、どのような困難が障害となっているのでしょうか。

-事務局長:主観的な要因としては、地理的生産エリアによっては、導入かなり難しい場合もあると考えています。例えば、北部においては、小さく不揃いに断片化された区画が組織化された工業規模での生産を困難にさせていると考えています。

一方、農業従事者の高齢化率も急速に上昇しています。といいますのも、若者はしばしば、都市や工業地域での就職を好むからです。しかし、目下、若者が農業への従事に回帰するような十分に魅力的な政策が不足しています。もし若者が農業から遠ざかれば、DXという目標を達成するのは困難になるでしょう。


-記者:DXを成功させるには、企業や経営者のみでなく、農民たちからもアプローチする必要があるということですが、現在の農業部門の発展のトレンドに沿った、デジタルに通じた農民世代、デジタルに通じた労働者世代を生み出すためにはどうすべきだと思いますか。

-事務局長:現在、ベトナム・デジタル農業協会はベトナム国家大学ハノイ校やベトナム農業科学院、ホーチミン市工科大学等と連携しての訓練を行っています。しかし、現時点での連携は、講義計画や訓練プログラムの調整にとどまっています。

もっと多くの魅力的な政策があればと思います。例えば、農業農村開発省は企業と協力して農業を学ぶ学生への奨学金を提供することも考えられます。そうすることで、学歴が高く農業に従事するための十分な能力を持った学生たちを惹き付けることができると思います。

これからの5年、10年で以上のことがなされれば、ベトナムの農業部門への技術の導入における不足を補うために技術を適応させたり、創造したりすることが可能な重要な人的資源を確保することができるでしょう。


-記者:今日の農業部門が掲げるDXの加速という目標を達成するために、人的資本以外の提案はありますか。

-事務局長:私が思うに、資本も一つの重要な論点になるかと思います。農産品の寿命からテクノジーの寿命を決定するといった、農業部門それ自体が農産品の寿命についての問題を抱えています。そのため、企業や経営主体らは、常に自身で技術発展のニーズや目標を予想しないといけません。それにより財務的な問題は解消されるでしょう。

現在、他にも多くの魅力的な政策があります。しかし、実践面での話になりますと、行政上の制約が依然としてあるのも事実です。例えば、事業収益の10%はイノベーションに投資されるが、イノベーションが何かは明確に定められておらず、これにより企業の資本管理は困難になっています。

それゆえ、我々は企業がより積極的に資本調達が可能となるようにするべきです。そして企業らが技術へ前向きに投資できる十分な資本調達を得るための、法人税政策などの支援策を打ち出すことが必要となります。

加えて、農産業の発展計画は見直され、変更する必要があります。なぜなら、多くの政策は重複しており、これにより企業の農業部門への投資が困難になっているからです。

そのほかにも、農業部門は早急に、詳細かつ明確な農産業の発展計画を公表する必要があります。同時に、将来の人的資源に対してもより積極的に検討する必要があると思います。


-記者:お話ありがとうございました。

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( 翻訳者:新里フランコ )
( 記事ID:6234 )