すべては嵐のように起こった~ホーリー・アーティザン・ベーカリーの事件から1年~

2017年07月08日付 Prothom Alo 紙

(6月30日付)ちょうど1年前のこの日、首都ダカのグルシャン地区にあるレストラン、ホーリー・アーティザン・ベーカリーは賑わいを見せていた。外国人も含めた顧客が1日中ひっきりなしに訪れていた。店舗の前の芝生では多くの人がおしゃべりに花を咲かせていた。しかしその1日後、7月1日の夜がバングラデシュの姿を変えた。ホーリー・アーティザン・ベーカリーを襲ったテロリストたちの手でバングラデシュ国民と外国人が殺害されたこと、その犯罪にバングラデシュ人の複数の若者が加わっていたこと、恐慌と不信と恐れと危険と悲しみがないまぜとなって息の詰まるような状況となった。家族が社会がそして国家そのものが呆然となってしまったようだった。
 それから1年。前のあの恐怖の日を振り返り、レストランの共同経営者のひとり、サダト・メヘディさんは言う。「こんなことになるなんて、考えたこともありませんでした。すべてのことが嵐のように起こったんです。何も思い出したくありません」
グルシャン2番街の79番道路をまっすぐ東に向かうと、グルシャン湖のほとりの5番区に突き当たる。2014年の6月、ここに「ホーリー・アーティザン・ベーカリー」と「オ-・キッチン・レストラン」が開店した。建物の2階はベーカリーの調理室と素材置き場になっていた。1階はベーカリーのショップとレストランのキッチン、そして食事スペース。店の前は緑の芝生。客が多い時には2階にも席が設けられるようになっていた。
湖のほとりにあって芝生の庭のあるこのレストランは、外国人に人気が高かった。店は年中無休で、バングラデシュの休日にあたる金曜日と土曜日は朝8時から夜10時まで営業していて、朝食も食べられた。日曜日から木曜までの5日間は朝10時から夜10時まで店を開けていた。
プロトム・アロ紙は昨日、このレストランでアシスタント・シェフとして働いていたシシル・ボイラギさんに話を聞いた。店を訪れる客の80%は外国人だったという。ベーカリーではイタリアの各種のケーキやパンなどを販売していて、レストランはスペイン料理がメインだった。いつも4,50人の客がいたが、あの日は断食月の終盤とあって、客の数はそう多くなかった。25人ぐらいの予約が入っていた。前日の予約客はその2倍以上だった。
レストランで客たちが良く注文したのはサーモンやコラル魚、スペイン料理の中では、パエリア、カラマーロ(イカ)、ガンバス(小エビ)の評判が高かった。それにフライドチキン、フライドポテト、バーガー、ピッツァもよく出た。サラダも10種類以上あり、人気が高かった。
「金曜日と土曜日には、朝から外国人の客たちが来ていました。多くの人が家から布やマットレスを持参して、朝食を済ませた後、芝生に敷いて寝そべったりしていました。それからランチも食べ、夕食まで済ませて帰っていきました」とシシルさんは言う。
居心地の良いこのレストランを去年の7月1日夜、武装した5人のテロリストが襲った。断食月がもうすぐ終わるという時期だった。ホーリー・アーティザン・ベーカリーがテロの標的になったというニュースが伝わると、首都ばかりでなく国中が震撼した。テロリストたちはイタリア人9人、日本人7人、インド人1人、それにバングラデシュ人のファラズ・アヤズ・ホセンさん、オビンタ・コビルさん、イシュラト・アコンドさんと2人の警察幹部、計22人を残虐な方法で殺害した。この事件がどう展開するのか、不安のなかで一夜が過ぎた。翌日の午前7時40分、軍と警察の合同部隊が作戦を開始した。装甲車の突撃と絶え間ない銃撃でレストランの建物は大きな損傷を負った。この攻撃で5人の犯人は殺害された。息詰まるような状況に終止符が打たれたのは発生から11時間後のことだった。
ホーリー・アーティザン・ベーカリーは事件後約4ヶ月半にわたって治安部隊の監視のもとに置かれた。11月13日になって警察は建物を所有者に引き渡した。だが所有者たちはこの建物を商用目的で使うつもりはないことを明らかにした。2階建てのこの建物は所有者たちが自宅として使用するという。そのために現在改修が行われている。
事件のあった現場を最近訪れたところ、ホーリー・アーティザン・ベーカリーだった建物は外から見えにくくするために、外周を緑色のトタンで覆い隠されていた。中に通じる入り口は閉ざされたままだ。警備にあたっていたホセンさんは「改修作業が進んでいます。誰も入れないようになっています」と言う。写真を撮るのもだめだということだった。
しかし、同じ場所に商業施設はできないとはいえ、今年1月10日にはグルシャン北通りにホーリー・アーティザン・ベーカリーの支店がオープンした。ラングス・アーケードの2階、スーパーショップ・ゴルメト・バザールの一角の約500平方フィート(約46平方メートル、14坪)の場所にベーカリーのショップができている。なかなか繁盛していて、以前顧客だった人たちも多く訪れている。
6月12日に新しいショップを訪れて、共同経営者のひとり、サダト・メヘディさんの話を聞いた。
「事件の後、うちの店で働いていた従業員たちは大変な目にあいました。次の仕事も見つかりませんでした。この店を始めたのは、主にそんな従業員たちのことを考えたからです。今ここで働いているのは全員ホーリー・アーティザン・ベーカリーの従業員だったひとたちです」とサダト・メヘディさんは語った。そしてさらに「元の建物の改修作業はほぼ終わっています。あとはドアや窓を直すぐらいです」とも話した。元の建物にすでに荷物を運び入れ始めているとのことだった。


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翻訳者:篠原和
記事ID:662