Milliyet紙コラム Hasan Cemal 「EU関連(4):モデル論争、変革への危機」
2005年06月24日付 Milliyet 紙

EUが危機に瀕している!これは何の危機であろうか?フランスとオランダでの欧州憲法批准否決、その直後の首脳会議での予算論争、そして膠着状態…。さらにユーロの対ドル下落…。
EUはどこへ向かっているのか?どのような危機が生じているのだろうか?どこまで根が深いのか?今後、EUはバラバラになってしまうのか、それとも統合するのか。
頭の中はごちゃごちゃ。

しかし、鳥瞰してみると一つの点が明らかになったと言える。
ヨーロッパで生じている危機の背後にはモデル論争が存在するのだ。そしてこのモデル論争とはおそらく変革論争と言い換えることができる。
この枠組みの中で、EUが対価を求めるべき問題がある。つまり、ヨーロッパはアメリカやアジア、より正確に言うと中国やインドに対抗する経済力を有することができるのだろうか?グローバル化の中で生き残れるのだろうか?そしてこうした経済情勢の中で必要な構造的、抜本的な改革を実現できるだろうか?ということである。

ヨーロッパはそれらを成し遂げられなかった。
だから失業問題に真っ向から取り組めないのである。今日、EU圏内には合計2千万人の失業者がいる。
拡大のスピードは大変スローだ。
農業分野では、長い間改革に向けた歩みが踏み出されなかったため、EU予算の42%が総人口のわずか5%を支援するために使われている。そしてこの22%はフランスへ。この不公平さが英国を始め、オランダ、スウェーデンの反発を招いている。
柔軟性を欠いた労働力市場や税金、硬直した社会保障制度の重みが長年経済成長にブレーキをかけ、地球規模の競争でヨーロッパを苦しめ、後退させている。

これらがEUの失業率が許容できる範囲に低下しない理由である。ヨーロッパはこのまま行くと、地政学的な重要性を徐々に失い、さらに世界政治の舞台での影響力が低下し、国際政治においてアメリカだけでなくアジアにも対抗できない状態を迎えるであろう。

EUから見れば、これら全てのマイナス要因の根底には経済問題が存在する。経済を立ち直せないためにEUは危機に瀕している。そしてこの問題ではフランスとドイツの二カ国が特に批判の標的となっている。
両国は、特にこの10年間、構造的な経済問題を解決できず、自国だけでなくEUをも道連れにしている。
モデル論争はここに現れている。変革の危機はこの文脈で姿を現す。

経済分野ではサッチャー以降ブレア首相と共に改革のレールを走り続ける英国は、目下このモデル論争のリーダー格の国となっている。この点ではオランダやスウェーデンと並んで、昨年EU加盟を果たした10カ国の国の大部分もモデル論争でブレア首相に近い意見を持つ。
意見を要約すると、
失業問題を真に克服し、福祉の水準をシステマティックに高めるためには、経済発展を妨げるブレーキを取り除くことが条件だ。そのためにはEUの経済をよりリベラルなレールの上に走らせることが求められている。それ以外にヨーロッパがグローバル化の問題に立ち向かう方法はない。
次はイギリスのストロー外相の言葉である。
「意見がこじれているのは、『将来に耐えうる力を持つヨーロッパか、それとも過去の罠に掛かってしまったヨーロッパか?’という点である』」
モデル論争である、これは。

変革の危機はこれらの言葉の中に潜んでいる。
ブレア首相の側近で、現在EUの貿易担当委員を務めるピーター・マンデルソンの次のような発言も、EU内のモデル論争を受けてのものだ。
「グローバル化を社会正義と結びつけることが出来る。市場をもっと開いて、経済改革を実現させることで、グローバル化の“勝者”と“敗者”の隔たりを小さくすることが出来る。このためには、ヨーロッパで新たな同意がなされる必要があるかもしれない」。

ヨーロッパでこうした新しい同意を求める立場の中に、フランスとドイツで政権奪取の機会を狙うサルコジとメルケルが位置している。
シラクに代わって政権を握ろうとする右派のサルコジ、そして秋にシュレーダーに代わって首相になることが確実視されている保守派のアンジェラ・メルケルの2人は、経済においてより自由で、市場原理に基づいた経済体制を志向する改革的考えの持ち主の代表として見られている。

しかしそれでもフランスとドイツの経済がより国家主導的で社会的なレールから出発し、より自由で新しいレールの上に乗れるかどうか、そしてこのために求められる経済的・社会的改革が成功するかどうか、つまりあるモデルから他のモデルに移行できるかどうかはまだ明らかでない。
容易な道であるとも思えない。
今のところ、トルコにも直に影響をもたらし、(経済体制をめぐる)モデル論争が背後にある変革の危機はまだまだ続くだろうということができる。答えよりも問いや不明瞭な点が多い時代になりそうだ。

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( 翻訳者:永井ひとみ )
( 記事ID:297 )