Hasan Cemal コラム「米土関係-師匠と弟子の関係?」(Milliyet紙)
2005年06月11日付 Milliyet 紙

エルドアン首相のワシントン訪問の結果について話し合っていた。トルコ側の上級の担当者の一人は、アメリカの態度について次のような不満を漏らした。
時にアメリカは、「さあ、私の子弟になれ!」「私に従え!」という。だがこんなことがあってはならない。アメリカの言いなりになる“イエスマン”の関係は両国にとって利益にはならない」
もっとも、これは最近のことではない。冷戦時代にもアメリカはこうだった。強大な権力をもつ存在として、全ての発言に敬意を払われることを望み、言うことに従わないことを快く思わなかった。これに関するいくつかの例を、私はデミレル氏からも聞いたことがある。

■まずは発展
しかしいかなる時も、「はい、わかりました」と言って従うアメリカとの師弟関係を持つことはなかった。アンカラとワシントンの間の利益の統一が常に優先されたが、見解の相違にも欠くことが無かった。それには今日も違いはない。アメリカが冷戦後の世界で唯一の強大な権力として存立したことがこれを変えなかった。しかし、アメリカの政策を精査することの意味がイラクに生きる人によって今一度もたらされた。
ブルッキングス研究所のオメル・タシュプナル博士は、雑誌『Foreign Policy』の最新号に載せた論文で次のように記しているらしい。
「イラクで今日アメリカが直面し続けている困難は、軍隊を代替するものについての問題を考える上で教訓となった。今日の状況を見る限り、シリアやイランにおいて軍事介入により民主化することは不可能であるということをブッシュ政権は理解した。ワシントンでは既に最も過激な新保守主義者でさえ中東で力ずくで国家体制を変えることを口にすることは出来ない。こうした状況ですべての望みは、大中東プロジェクトが生み出す経済、社会そして文化の発展の結果もたらされるであろう民主化の過程に結び付けられている。つまり、まずは社会及び経済の発展、次に民主主義をという考え方が支配的だ。

■トルコの新たな重要性
さて、こうしたイスラム世界と民主主義の論争において、トルコはアメリカにとって全く新しい、冷戦時代には無かったある重要性を手に入れた。それは、トルコの近代化が長い間に最も成功した例とみなされたこと、そしてもっと重要なことはイスラム教徒がいる国であることからきている。このように、9月11日以降のアメリカの外交の歴史でトルコは初めてどこに位置しているかではなく、どういう存在であるかということで重要視され始めた。要するにトルコはもう地政学的な意味ではなく、政治上・文明上の立場から重要性と価値を獲得した。
私の見解では、この状態は今日もなお続いている。トルコの地政学的な重要性の名のもとに展開されるモデルやひな型、アイデアが何と言おうと続いている。実際、水曜日のホワイトハウスでの会談後ブッシュ大統領とエルドアン首相が行った会見では、両者がこの話題を、つまり大・広域中東プロジェクトをいかに重要視していたかが再び明らかになった。

■ギブとテイクの均衡
アメリカは、イスラム世界で唯一民主化と改革がテロを根絶やしにできると確信している。こうした背景から、トルコが安定した強固な国としてEUへの道のりを歩む必要があると信じている。トルコのEU加盟を当初から支持しているのはこうした理由があってのことだ。トルコの抱えるいくつかの問題は、自由民主主義が確立することによってのみ乗り越えられるという考えが優位に立っている。アンカラは、もちろんアメリカによるEU加盟支持を自覚し、この支持を重視している。特に今後、(トルコのEU加盟に反対する)ドイツとフランスの勢力がヨーロッパで伸長することでアメリカがEU加盟問題で一層トルコ側の立場に立つと予想している。なぜなら(ドイツの)メルケルと(フランスの)サルコジは、シュレーダーやシラクに比べよりアメリカ政府に近く、政治的見解も似ている政治家だからである。
EU同様キプロスにかんしてもトルコは、アメリカの支持を必要としている。エルドアン首相はこの問題において、ブッシュ大統領とのホワイトハウスでの会談から手ぶらで戻らなかった。(トルコ政府は)アメリカとギブ・アンド・テイクの均衡が取れれば、キプロス問題でアンカラの期待により良い見返りが得られるだろうと考えている。
PKK(クルド労働者党)と北イラクの問題は異なるものではない。アメリカが今後何らかの行動を起こすであろうという最初のシグナルは、エルドアン首相がアメリカから離れる前に出され始めた。
キプロスとPKKは、エルドアン内閣の内政を最も悩ませ疲弊させる問題である。野党はこの2つの問題で政府を締め付けるかもしれない。しかし、これらの問題は同時にアメリカへの反感や反アメリカ主義を煽り立てる問題でもある。このためアメリカは、アメリカへの反感を不満に思うときにキプロスとPKKの問題に対し施策を投じる必要がある。

■プラス面を強調
キプロスで何が起こる?エルドアン首相がニューヨークで国連のコフィ・アナン事務総長と行った会談の意味はというと・・エルドアン首相は先手必勝の政策を推し進めている。そしてこの政策が南キプロスのパパドプロス大統領に重圧をかけるだろうと信じている。これ以外に10月3日以前にキプロスで何らかの動きは予想されていない。なぜなら南キプロス政府は10月3日を待っている。EU憲法否決の国民投票が、メルケルのドイツとその協力関係にあるオーストリアの立場を強めることを望んでいる。
エルドアン首相のワシントン訪問に関連した4度目の談話は次のようなものになる。かいつまんで言えば:
アメリカとトルコが協力して行う仕事はたくさんある。その関係のプラス面を強調し、共通の利益に反映させるために、トルコ―アメリカの友好が時としてぐらついたとしても続いていくと言うことは正しいことである。

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( 翻訳者:清水葉月 )
( 記事ID:191 )