ガソリン配給制が発表された夜、テヘランで事件が続発
2007年06月28日付 E'temad-e Melli 紙
2007年6月28日付エッテマーデ・メッリー紙1面より(写真:ホッジャト・セパフヴァンド/エッテマーデ・メッリー)
2007年6月28日付エッテマーデ・メッリー紙1面より(写真:ホッジャト・セパフヴァンド/エッテマーデ・メッリー)

 政府高官と有力議員の二人が報道特別番組に出演し、ガソリン配給制の実施にはいかなる問題も起きないことを市民に確約していた、まさにその頃、全国各都市に住む住民らはここ数年類を見ないような事件の数々を目の当たりにしていた。

 火曜日の夜、ガソリン配給制が発表されたことを受けて、車の所有者らは空のガソリンタンクを満たすべく、ガソリンスタンドに殺到した。そしてガソリンスタンドで起きたこのような空前の混雑が、多くの事件を引き起すこととなった。

 第一ステージ:ガソリンスタンドの経営者

 ガソリンスタンドに車が殺到したことで、一部のガソリンスタンド経営者はスタンドのスイッチを切って、給油をストップした。このことが原因で、一部スタンド経営者と車の所有者の間で諍いが発生、数十ヶ所のガソリンスタンドで火の手が上がった。

 《空軍基地30メートル》、ダマーヴァンド、テヘラン・ノウ、メグダード通り=ピールーズィー通り交差点、ガズヴィーン通り=シャビーリー通り交差点、レサーラト通り=ラシード通り交差点、キャミール通り、ヴァファーダール通り、ハーガーニー通り、シャリーアティー通り、モタッハリー通り、アーザーディー通り、シャムシーリー通り、ホシュ通り‥‥などの各ガソリンスタンドでは、スタンド経営者らによってスタンドのスイッチが消されたことに対して、ガソリンを買い求める客たちが放火する騒ぎが起きた。

 イラン石油精製・石油製品流通公社の代表は、昨日この件についてISNAに対して、次のように述べた。「ガソリンスタンドに車が殺到するであろうことは、想定の範囲内であり、われわれとしても必要な手を打ってきた。どのガソリンスタンドにも、ガソリンは十分にあった。問題は、ガソリンがなかったことにあるのではなく、スタンド経営者が警戒して、スタンドを閉めてしまったことにある。このことが、衝突を招いてしまった」。

 第二ステージ:警察

 ハーガーニー通りのガソリンスタンドは、もっとも被害の大きかったスタンドの一つである。このスタンドの周辺で起きた衝突では、警察の特殊部隊が現場に出動するシーンも見られた。

 夜12時、ガソリンタンクへの給油を諦めざるを得なかったドライバーたちの一部がスタンド経営者らと衝突する事態が発生した。極めて多くの人が集まっていたために、諍いは集団による衝突へと発展していった。

 集団的な小競り合いが起きてから20分後、事件がさらに発展していくのを阻止するために、警察官らが現場に出動した。警察官らは現場に到着するや、集まっていた群衆をコントロールするにはもっと多くの人員と装備が必要であることを悟った。

 特殊部隊が現場に到着すると、群衆—彼らのほとんどは給油するつもりでその場にいたわけではない—は通りに出て、破壊行為に手を染め始めた。これに対し、バイク部隊が行動を起こし、騒ぎを制圧することにかなりな程度成功を収めた。

 事件現場に警察の特殊部隊が到着するのが遅れたことは、同部隊の準備ができていなかったことを物語っている。首都テヘラン警察のある情報筋は、本紙記者に次のように語っている。「われわれは、臨戦態勢をとっておけとの命令を受けていなかった。配給制の開始とともにこのような事態が発生するとは、警察は想定していなかったのだ」。

 驚くべきは、火曜日夜の事件が終息して8時間後に、やっと警察の臨戦態勢が整ったということである。首都テヘラン警察の作戦実行担当次官であるモフセン・ハーンチャルリー大佐は、昨日警察の臨戦態勢が整ったことを明かし、「今朝(火曜日〔水曜日の誤りか?〕)から、警察は臨戦態勢に入っている。治安維持軍は、すべての給油所に常駐している」と語っている。

 警察が遅きに失した対応を明らかにした頃、16の給油所が破壊行為や焼き討ちにあったとの非公式情報がすでに報じられていた。消防庁も、12の給油所が放火されたことを認めているが、被害の程度についてはいまだ不明である。

 火曜日夜の事件が起きてから15時間が経過しても、首都警察広報局長は詳細な情報について一切明らかにすることなく、本紙記者に対し、「現在のところ、情報は一切ない。問題を調査しているところである」と述べるにとどまっている。

 大規模な略奪、殺人、地方の給油所への放火といった事件が、非公式筋から漏れ伝わっており、この件に関する正確かつ詳細な情報について質問すべく、治安維持軍広報局長のゴドラト・アーバーディー大佐に連絡を取ってみた。しかし、同大佐の携帯電話の電源はオフのままになっており、彼の事務所に電話してみても、誰からも回答は得られなかった。

 第三ステージ:破壊分子

 警察の現場到着が遅れたことで、多くの破壊分子が通りに散らばっていった。その結果、ハキーミーイェ地区、及びバハーラーン地区にあるスーパーマーケット《シャフルヴァンド》への略奪行為が発生している。

 《シャフルヴァンド》の広報局長は、「昨晩約11時、正体不明の者たちがシャフルヴァンド・ハキーミーイェ店に侵入、同店の商品を略奪していった」と語っている。略奪犯は、同店舗への略奪を働いた後、警察による捜査を撹乱するために、同店舗に放火したとのことである。

 シャフルヴァンド・ハキーミーイェ店の関係者らによると、物品の略奪による被害に比べれば、店舗放火による被害は極めて小さいとのことである。

 その他の店舗も、略奪犯・破壊分子らの悪行から逃れていたわけではない。多くの店の窓ガラスが割られ、自動車用品や売り物の携帯電話などの店の物品が盗まれている。また目撃者の証言によると、銀行やテヘラン州運輸交通局など、政府系の建物への被害がもっとも大きかった模様である。

 ガソリン配給用のスマートカードが盗まれたと警察に訴えるドライバーも多い。あるドライバーは、警察に次のように訴え出たという。「ガソリンを入れようとしていたとき、ある若者が〔スマートカードを読み取る〕機械から私のカードを抜き取り、逃走してしまいました」。

 テヘラン一般・革命検察庁治安担当次官のハサン・ハッダード裁判官は昨日、火曜日夜に起きた事件で逮捕された者たちに対する取り調べが、治安特別検察庁内で行われていることを明らかにした上で、「これらの者たちの容疑は、《公衆秩序の撹乱》であり、彼らの件は治安特別検察庁で取り調べが行われる予定である」と語った。ハッダード裁判官は、このように述べた上で、逮捕者数、及び彼らが逮捕された場所については、明言を避けた。

 一部の目撃証言によると、殺人事件も起きたとのことで、そのうち2件はハキーミーイェ地区で発生した模様である。1件目は、25歳くらいの若者がハキーミーイェ地区で、正体不明の者の銃弾に倒れ、命を落としたとのことである。2件目は、ハキーミーイェ地区のガソリンスタンド近くの人家の屋根から、クーラーが外に投げ出され、通行人の若者1名がその直撃を受けて死亡したというものである。

 通りを横切った車に向かって石やレンガを投げつけて襲撃したり、数台の車(ペイカーン・ヴァンなど)を横倒しにしたりするなどの破壊行為を行った者も、複数いるとのことである。

 第四ステージ‥‥

 火曜日夜、首都や多くの地方で恐ろしい事件の数々が引き起こされたのは、事件の誘因となる《火の気》が重なり合ったためである。ガソリン配給制の突然の発表、人々の恐怖、ガソリンスタンド経営者の過ち、警察の準備不足などの要因が、この機に便乗した破壊行為や略奪行為を誘い、ガソリンを横目に、数々の不快な事件を招いたのである。

 現在のところ、警察は臨戦態勢に入っており、社会は平常な状況にもどっている。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:11269 )