Can Dundar コラム:穏健イスラムとアメリカ①
2007年09月25日付 Milliyet 紙

[昨今の]マレーシアに関する議論がどのように始まったのか思い出してみるのが有益である。
アメリカの元国務副長官であり、次期国務長官だと目されるリチャード・ホルブルックは、この8月、PBSの討論番組で次のように述べたのだった。
9・11以降アメリカは、世界中で穏健なイスラム的民主主義を望んでいます。ええ、ただふたつの例があるばかりですが、つまり、トルコとマレーシアです・・・。トルコ人は極めてドラマチックな選択をしました。穏健イスラム政党が、トルコ共和国の建国者アタテュルクにその正統性を求める名の知れた民族主義的諸政党を破ったのです。この穏健イスラム政党は、イスラエルとも良好な関係を保ち、EU加盟を望んでいます。私も、これを強く支持します。

「穏健イスラム」という定義が生み出す反感にマレーシアからのニュースも加わって、人々は鳥肌を立てた。なぜなら、マレーシアもトルコのように憲法改正の準備を整えており、「マレーシアは世俗的な国家である」との条文が改正されるものと考えられていたからである、
マレーシアの上級審の首席判事は、シャリーアの諸規定を法体系に組み込むよう、提言したのであった。
アメリカの思惑に対する疑念は、何にもまして深まった。
この思惑をより良く理解し、現在進行している事態をはっきりさせておくためには、アメリカの戦略のもとになっているレポートを思い返してみるのが、極めて有益である。

■外交官を養成すべき
これから述べるレポート群には「ランド・コーポレーション」という署名が入っている。
アメリカの外交政策を左右する、この有力な「シンクタンク」は、ドナルド・ラムズフェルド、コンドリーザ・ライス、フランソワ・フクヤマといった学者たちによって世に知られている。
ランド・コーポレーションの、穏健なイスラーム主義勢力と接近すべし、という提言は、CIA出身のグラハム・フラーが執筆した1990年の「トルコにおけるイスラム原理主義勢力の将来」と題されたレポートにも見られるものである。
ムアッメル・アクソイ、チェティン・エメチ、トゥラン・ドゥルスン、バフリィエ・ウチョクが次々に亡くなったのが、この年だった・・・。
中道右派は危機に瀕していた。エルバカンが首相になるのは5年先。
ランド・コーポレーションは、アメリカ政府のためにこのレポートを用意し、2つのことを提言した。
①我々は、トルコにおけるイスラム運動をより間近で理解し、彼らのイデオロギーについてより間近で情報を得て、[トルコ事情に明るい]外交官を養成するべきである。
②アメリカがイスラム主義潮流の穏健派メンバーと非公式な関係を構築することが有益であろう。

1999年にアメリカ国務省によって作成された「宗教の自由に関するレポート」では、フェトフッラー・ギュレンが「穏健イスラム主義のリーダー」であると言及されるはずであった。

■ラディカルな諸ステップ
次に、シェリル・バーナードのレポートについて。
バーナードはアメリカのザルマィ・カリルザード前イラク大使の妻でありユダヤ系である。彼女も2003年に「市民民主主義的イスラムについてのレポート」を執筆し、次のように記している。
イスラム世界は目下、発展性の乏しさと、グローバル化との不調和という難問と格闘している。今日までイスラム世界において[頼るべき]手段と見なされてきた民族主義、汎アラプ主義、イスラム革命などの諸概念も、解決策としては不十分なものに留まってしまったとされている。イスラム世界は彼ら自身をいかに定義するかという論争のなかにある。では、アメリカがこの論争において優先すべきなのは何か?まず、イスラムに起因する暴力を抑制すること。次に、アメリカが反イスラムであるというイメージを払拭すること。しかるのちに、イスラム世界が民主化させられるために採用されるべきラディカルな諸ステップを策定すること。


■イスラム世界の4つのカテゴリー
バーナードはレポートにおいて、イスラム世界を4つのカテゴリーに分類している。
①原理主義派。彼らは、民主主義的諸価値を拒絶し、イスラム的諸価値によって統治される権威主義的な国家体制を支持する。
②保守主義派。彼らは、保守的な社会を求め、近代化と変化について疑いの目を向ける。
③近代主義派。彼らは、イスラム世界がグローバル化の一部であることを支持し、イスラムにおける改革と近代化を求める。
④世俗主義派。彼らは、宗教と国家の諸問題を峻別すること、および西洋型の民主主義を支持し、宗教を個人的なレベルまで抑制しようとする。


■世俗派を左派から遠ざけるべし
では、アメリカはどれを支持するのだろうか?
レポートでは、原理主義派のテロ行為や抑圧、不正を継続的にメディアに流させて、彼らの間での分裂を加速させるよう薦めている。
「保守主義派」が「原理主義派」と連携するのを抑え、「近代主義派」と接近するのを確実なものとするため、そして「保守主義派」の中でもとりわけスーフィズムに立脚点を見出すために尽力することを提言している。
では、世俗派はといえば?
レポートでは「ケマリスト」がアメリカと緊密な関係であり続けたわけではないことが明記されており、次のように述べられている。
世俗派が原理主義の脅威に対してアメリカと思惑を同じくするよう、尽力することになるであろう。これは、世俗派が民族主義や左派潮流と協調するのを抑え込むことで実現されるはずである。


■学校設立を保証すべし
レポートによれば、アメリカにとっての最良の盟友は「穏健イスラム勢力」である。
支援の方法については次のように提起している。
彼らの活動と思想の普及と伝播のために物質的貢献がなされるように。
より広範な大衆、特に青少年に[それらが]行き渡ることが推奨されるように。
市民社会組織の設立、教育の場の確保、政治プロセスにおける進展に対して支援がなされるように。
彼らが、自らの思想を広めるためにウェブサイト、学校、研究機関を設立するに当たっての障害が取り除かれるように。
穏健なイスラムが大衆にとっての選択肢となることが保証されるように。


■フェトフッラー・ギュレンの例
「政権獲得要求を断念した、市民的かつ民主主義的なイスラム」モデルを目指したレポートの「深遠な戦略」と題された最終部では、より具体的な提案をしている。次のように述べていた。
穏健イスラム主義勢力に物怖じすることのない市民的なリーダーが登場するよう尽力されるべきである。民主主義、人権、女性の諸権利について、実効力のある政策を進めることが保証されるべきである。市民社会組織を設立し、穏健イスラム主義のリーダーたちを支援するよう努めるべきである

フェトフッラー・ギュレンが例としてあげられた穏健イスラム主義勢力が、経済力に乏しいことが言及され、物質的な支援がなされるよう提言されている。
これらは3年前の提言である。その影響力は誰の目にも明らか・・・。
今年、同組織は新しいレポートを出版し、より一層興味深い提言を行った。それらについては、水曜日(ママ)の私のコラムで触れようと思う。

注記:この問題については、今晩20:30からの[テレビ番組]「ネデン」で議論することにしましょう。

Tweet
シェア


現地の新聞はこちら
Can Dundar コラム:穏健イスラムとアメリカ②

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:12028 )