テヘランのブックカフェ、閉鎖の危機
2007年10月23日付 E'temad-e Melli 紙

【文芸部:パルヴィーズ・ベラーティー】昨日、テヘランで営業しているブックカフェ店に対して、72時間以内に営業をやめるよう通達する警告が発せられた。

 首都警察公共地域局は「サーレス出版」、「ケターベ・シャフル・ヴァナク店」、「ケターベ・ロウシャン」、「バドラゲイェ・ジャーヴィーダーン」の各ブックカフェ店に対してそれぞれ警告を通達し、これら店舗において「他業種への干渉行為」を犯したとの名目で、営業の停止を命じた。

 ブックカフェが営業停止処分になるのは、これが初めてではない。これより前から、「チェシュメ出版」に対する営業停止処分を皮切りに、一連のブックカフェ店への取り締まりが新たな段階を迎えていたのだ。

 一ヶ月前、すなわちテヘラン市民が祝月ラマダーンに向けて準備をしていた頃、公共地域局の捜査員らがブックカフェを運営していた書店に出向き、警察への出頭を求めた。いうまでもなく、書店経営者たちが出頭して問題が解決したわけではなかった。二日と経たぬうちに、彼らが経営するブックカフェ店に対して営業停止命令が下されたのである。

 今回の通達により、テヘランのブックカフェ店は48時間以内に店舗を撤去することになった。その一方で、数週間前に営業を開始したばかりの文化イスラーム指導省付属のブックカフェ店「文人の館」は、何の問題もなく営業を続けており、文化イスラーム指導省は自らブックカフェ店を経営しながら、他のブックカフェの営業に対しては、何ら保護を与えないつもりではないかとの疑惑が持ち上がっている。

 あるブックカフェの経営者は、「〔国は〕ブックカフェ店『文人の館』を開店すると同時に、他の書店やカフェブックに対して圧力を強めているが、書店や出版社を監督する立場にいる文化イスラーム指導省は、この手の店舗を保護するのが筋ではないか」と語っている。

 ブックカフェは読書の世界ではスタンダードなもの

 公共地域局は、ブックカフェ店の営業に対する言いがかりとして、「他業種への干渉行為」という問題を指摘している。しかし、ブックカフェの営業が文化的空間において一般化してからすでに4〜5年が経っており、最近ではほとんどすべての書店がブックカフェを併設するようになっている。書店にブックカフェがあることが、文化関係者らが書店に出入りする際の理由にもなっており、この存在は文化に対する新たな関わり合い方を生み出している。残念ながら、非公式の統計によると、ここ3〜4年のうちに、200店舗以上の書店が店をたたんでおり、書店経営を続けようとする意欲が失われつつある。

 俳優で劇作家のスィールース・エブラーヒームザーデは、ブックカフェの存在は世界中でスタンダードなものとなっているとして、次のように語る。「世界のどの国にも、芸術家や作家、文化関係者、文人などが集まる場というものがあります。伝統的に、これらの場所から多くの思想が生まれてきました。これらの場所は、新たな文学的・芸術的な流派やスタイルの発信を用意することもありました」。

 同氏によれば、パリやロンドン、ニューヨークには人々が集まり、さまざまな問題に関して議論を闘わせ、意見交換をする場として、多くのブックカフェが存在するという。エブラーヒームザーデが言及した国々のリストに、シリアやトルコ、マレーシア、アラブ首長国連邦(ドバイ)と行った国々を付け加えなくてはならないだろう。これらの国々の書店は最近、新たなスタンダードとして、ブックカフェをを取り入れているのである。一言で言えば、世界のどの大規模書店にも、ブックカフェがあるのであり、ブックカフェの存在はすでに、本と読書の世界にとって標準となっているのである。

〔中略〕

 見直しを求める声

 ブックカフェ5店舗が営業停止になったとの報を聞いて、何人かの作家や文化関係者らはすでに、このような〔警察の〕やり方に対して抗議の声を上げ、営業停止の本当の理由を明らかにするよう求めている。

 あるブックカフェの経営者は、公共地域局が持ち出した「他業種への干渉行為」という言いがかりは不当であるとした上で、次のように語る。「文化施設の横にカフェがあるというのは、すでに当たり前のことになっている。例えば、どの映画館にもカフェがあり、あるいはビリヤード場にもカフェがある。公共地域局は果たして、映画館は一つの営業許可しか持っていないとの理由で、映画館がカフェを運営することに対して取り締まりを行うことになるのだろうか」。

 また別の文化関係者は、もし公共地域局が持ち出した「他業種への干渉行為」という口実がブックカフェの営業停止の理由として当たっているのであれば、何らかの解決方法を見つけ出すことが肝要だと指摘する。「ヘジャーブ違反」といった問題が理由で店舗が営業停止処分を受けた場合にも、解決方法はあるではないか、というわけだ。〔※訳注〕

 いずれにせよ、文化関係者らは、書店とは神聖な場所であり、それゆえブックカフェに対して営業停止を通告した今回の決定を見直すよう求めている。



※訳注:イランの飲食店では、ヘジャーブをきちんと遵守しない女性が多数来店しているような状況を警察に押さえられると、その飲食店は一定期間営業停止処分に処せられることがある。そのため、これらの飲食店ではホメイニー師とハーメネイー最高指導者の写真とともに、「ヘジャーブを守りましょう」と書かれた看板が通常掲げられている。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:12268 )