Can Dundar コラム:変化の“陰”の立役者 ― クライ教授の記したアナトリア女性と家族
2007年11月13日付 Milliyet 紙

アナトリアにおける女性の位置付けとはどのようなものだろうか?男性に服従する「ペチコート(=侮蔑的な意味合いを込めた「女」)」なのか?
家庭内の「真の権力の持ち主」なのか?
この役目は固定されたものなのか、それとも変化しつつあるものなのか?

先日亡くなった(社会学者の)ミュベッジェル・クライ教授は、1976年に発表した論文(「Mediterranean Family Sctructure(地中海的家族構造)」ケンブリッジ大学出版局)の中で、こうした問いへの答えを模索する一方、モデルとして選んだ(内陸アナトリア・コンヤ県の)エレーリで、変化した家族間関係の結び目を1つずつ解きほぐしながら、女性のキーパーソンとしての役割を明らかにした。
今日はクライ教授を、この意義深い論文とともに偲びたいと思う。

* * *

多くのアナトリアの小都市同様、エレーリにおいてもまた(伝統的な)拡大(複合)家族は減少し、1組の夫婦とその子どもたちから成る「核家族」に取って代わられた。
クライ教授によれば、父親の有する伝統的な権力の崩壊を招いたこの変化が(家庭内での)衝突なしに生じたのは、女性たちが(変化に伴う)ショックを吸収する役目を果たしたからだという。

クライ教授はこの役目を次の4つの側面(関係)から探求した。
・父-息子関係:息子は、父親の権威に反抗し、独立を宣言した。結婚して別の家を構え、(家業ではなく)自分の仕事を起こすことを望む。父は、自分の権威を失墜させないために変化に抵抗する。権力の衝突が起こると、母親が中に割って入る。審判役を果たしながら、「両サイドを」冷静な状態にする。息子の別の家を構えるという要求に対し、(母親は)いかにも起こっているかのような「嫁-姑の衝突」を口実に持ち出す。このようにして母親は「スケープゴート」役を引き受け、問題を父親の権威を揺るがさない形で解決したことになる。
・母-息子関係:結婚して家に入った嫁は、新しい家では「よそ者」である。彼女の地位は低い。男の子を産んで初めて認められる。そのため自らの将来プランを息子の存在を念頭に構築する。息子は成長すると母親の地位を高め、衝突が起きたときには母親の側に立つ。この協力関係は、父親に新しい価値の承認と、母子からの要求への服従を強いる。
・娘-両親関係:娘は家の誰からも監視されている。新しい要求をするたびに、家の男たちとの間で問題が生じる。ここでも問題の解決は母親に委ねられる。双方を落ち着かせ、衝突を防ぐ。一方、拡大家族において嫁は姑の家庭内でのサポート役であるが、別居(=核家族化)によりこの役割は逆転する。今度は嫁の手助けのために実家の母親が家に呼ばれる。母親は、今回も義理の息子の権威を認め、娘の家族がよりよい条件で生活するための役目を引き受ける。
・夫-妻関係:常に夫の命令に従って生活している女性は、次第にその地位を向上させた。核家族(化)により(妻の夫への)従属の度合いは弱まる。家族内で多くの活動を分担し、夫の相談役となる。これもまた、男性の絶対権威が終わりに近づいていることの証である。

* * *

クライ教授によれば、変化が家族内で支障なく完了するためにショックを吸収する役目を引き受け、統合をもたらした女性が、この役割をうまく果たすことができたのは、(自尊心を植えつけられながら育てられた息子たちには見られない)次の2つの特質を持っていたことによる:
(1)男性が支配権を握る中、自らの影響力を柔軟かつ間接的な形で行使する能力...
(2)不利な条件を甘受しながらも、毅然とした態度で調和をもたらす能力...
そしてもちろん「自己奉仕の精神」、すなわち家族の他の成員のために自分を犠牲にすることを厭わないこと、さらにこのことに喜びを感じること...
この2つの特質により女性は、社会における性別役割が、最小限の損傷だけで変化できたことの陰の立役者である。

この立役者の姿を明らかにしたクライ教授を心から追悼したい。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:12437 )