予算法への追加条項をめぐって、国会と公益判別評議会が一時対立
2008年02月21日付 Jam-e Jam 紙

【経済部】昨日、国会、護憲評議会、公益判別評議会の間で生じた問題は、その本質に目をつぶるならば、好ましい結果をもたらしたと言える。1387年度〔2008年度〕予算法に《憲法第44条》が復活したからである〔※訳注〕。

 本紙記者の報告によると、昨日〔国会の〕公開本会議が紛糾、ある問題に対して一部の議員が《立法制度における逸脱》であると非難する事態に発展した。問題の発端は、公益判別評議会〔議長・ラフサンジャーニー〕が87年度予算法案の審議を終え、同法案が護憲評議会における審議の最終段階にあったとき、公益判別評議会が護憲評議会書記〔ジャンナティー〕に書簡を出し、その中で87年度予算法案に《憲法第44条》に関する記述を挿入するよう求めたことにさかのぼる。

 公益判別評議会はこの書簡の中で、1384年シャフリーヴァル月15日〔2005年9月6日〕に最高指導者より出された監督権限の委任に関する通達に従い、同評議会は各年度の予算法案に《憲法第44条》政策〔=民営化〕が実現されているかを監督し調査する責務を有しているとした上で、この監督権を行使する形で、87年度予算法案と憲法第44条に関する国の基本的な指針との矛盾を解消するための文言を同予算法案に追加するよう求めたという。

 公益判別評議会は護憲評議会に対し、以下の内容の追加条項の承認を求めたという。
政府は87年度の終わり〔2009年3月20日〕までに、憲法第44条の冒頭に記述されたもの以外の〔‥‥〕国営企業の株式〔‥‥〕の最低でも60%、及び政府ならびに国営企業が保有している非国営企業の株式すべてを、競売あるいは証券取引所を通じて、民間、協同組合、及び非国営の公共部門に譲渡し、〔その旨〕87年度予算法案に追加しなければならない。

 公益判別評議会はまた、次のような内容の記述を、予算法案総則に追加するよう求めている。
政府は87年度の終わりまでに、憲法第44条で特定されているケースを除く、憲法第44条の冒頭に記述された国営企業の株式〔‥‥〕の最低でも40%を、競売あるいは証券取引所を通じて、民間、協同組合、及び非国営の公共部門に譲渡しなればならない。

 なお、公益判別評議会はこの要請の中で、通信や郵便の本体ネットワーク、機密上の、あるいは軍事・治安維持上必要とされる物資の生産工場、国営石油公社、原油や天然ガスの採掘・生産に関わる企業、中央銀行、「メッリー」や「セパーフ」、「鉱工業」、「農業(ケシャーヴァルズィー)」、「住宅(マスキャン)」、「輸出振興(サーデラート)」の各銀行、「中央保険」や「イラン保険」の各保険会社、電力送信の本体ネットワーク、民間航空庁その他については、今回の追加条項からは除外されるとしている。

 公益判別評議会は追加条項の中でさらに、予算法案の一部には憲法第44条をめぐる〔国の〕マクロな政策に合致しない箇所が見受けられるとして、〔アフマディーネジャード〕政権による〔国営企業の維持・補助金交付などを目的とした〕支出の引き上げを認めないよう、国会に要請した。

 公益判別評議会はまた別の箇所で、87年ホルダード月の終わり〔2008年6月21日〕までに87年度予算法が憲法第44条をめぐる〔国の〕マクロ政策と合致していることを示す報告書の国会への提出を政府に義務づけるよう、国会に要請した。

 公益判別評議会がこのような書簡を出し、それを受けて護憲評議会書記が国会議長に宛てて、公益判別評議会が追加した条項を示したことに対して、国会の一部の最有力議員らからは強い反発の声が上がった。議員らの発言を総合すると、彼らは公益判別評議会が出した追加条項そのものというよりはむしろ、国会がすでに可決した予算法案への条項追加を要求する際に公益判別評議会と護憲評議会が用いたやり方——しかも〔公益判別評議会が一度〕承認したあとになって——に、反発を示した模様である。

 ハサン・ソブハーニーアフマド・タヴァッコリーエリヤース・ナーデラーン、メフディー・クーチェクザーデの各議員は、公益判別評議会が87年度予算案に対して条項の追加を要求したことに強い反発を示した議員らの中でも、もっとも著名な人々だ。

 アフマド・タヴァッコリー議員はこのことに関し、ハッダード=アーデル国会議長に向け、「今、われわれの前には条文が置かれ、この条文を可決せよと求められている。問題を解決せよ、というのではない。〔似ているようで〕この二つはまったく別物だ」と述べた。

 タヴァッコリー議員はさらに次のように続ける。「今日〔国会に〕来てみたら、机の上になにやら驚くほど重要そうな条文が置いてあって、何も考えずに可決するよう求められている。このようなやり方は立法制度にとって逸脱以外の何物でもない。国民経済にとって危険なことだ」。

 ダームガーン選出のハサン・ソブハーニー議員も「この追加条項はどのような仕組みを経て、国会で可決されたものなんでしょうかね」と揶揄する。「これらは前もって通知され、提案され、委員会で審議され、その上で本会議に上げられて、賛成・反対双方の意見が述べられて、決定を下し、そうした後に護憲評議会が国会の決議に対して意見を述べる、というのが筋というものだ。こんなやり方は邪道だ」。同議員はこのように追加条項に抗議して、議場を退席にした。

 このような反発の声に対し、国会議長は次のように応答した。「私の方から聞かせて欲しいことがある。果たして、憲法には体制のマクロな政策は最高指導者が負うべき責任事項ではあると書かれていなかったか。もし最高指導者が予算やその他の法律に、体制のマクロな政策にそぐわないものがあると直接お感じになった場合、憲法の定めに従って、直接国会に対して勧告を行うことは最高指導者の権限ではなかったか。果たして最高指導者は、この〔国のマクロな〕政策が遵守されていない以上、〔国会が可決した法律は〕憲法に違反していると護憲評議会に対して発言することができないのだろうか。もちろんできる」。

 ハッダード=アーデル国会議長はさらに、次のように付け加える。「最高指導者は自らのこのような権限に従い、マクロな政策と矛盾した条項がないか、最高指導者の代わりに護憲評議会に通知する権限を、公益判別評議会に委任された。今回このようなこと〔公益判別評議会が最高指導者の代わりに、護憲評議会に対して、国会が可決した法律の問題点を指摘したこと〕が行われたのである」。

 最後に87年度予算合同委員会のレザー・アブドッラヒー委員長が次のような最終意見を述べ、国会もそれに同意した。「革命最高指導者は体制のマクロな政策及び憲法第44条の規定と様々な法律との適合性を判断する権限を、公益判別評議会に委任された。そこで、公益判別評議会内にそのための委員会が作られ、87年度予算法案を審議、最終的に同法案に対する意見を護憲評議会に通知した」。

 「護憲評議会に送られた公益判別評議会の意見は、通知であって発表ではない。すなわち、公益判別評議会は国会に対して直接書簡を送ってはいない。そのような行為は、立法行為に対する干渉、あるいは命令であるとみなされる。公益判別評議会は護憲評議会に通知したのであり、その上で護憲評議会が出した意見をわれわれは審議する。これは完全に法に適ったことである」。

 このような論理によって、国会は公益判別評議会の出した追加条項を護憲評議会の意見として審議、最終的に可決された。

 国会、護憲評議会、そして公益判別評議会の間で生じた昨日のこのような問題は、これまで経験されたことのなかったものである。また87年度予算法案に対して追加条項を通知した公益判別評議会のやり方への批判も、正当なものである。しかしいずれにせよ、今回の問題はよい結果をもたらした。憲法第44条をめぐるマクロ政策が87年度予算法にしっかりと明記されたからだ。

 専門家の意見によれば、今回の手法は法律上の様々な点に改善が加えられるならば、民営化へ向けたイランの新経済政策の実施に対して、質的にも量的にも、より効果的な監督が可能となり、憲法第44条の実施とイラン経済における真の民営化に対する最大の障碍である《政権の変化による中断》が起こることなく、この政策が一貫して行われることを保証するものとなりうるだろう。

87年度予算法案、正式の法律となる

 最新の報道によると、護憲評議会は昨日午後、公益判別評議会による追加条項が付加された87年度予算法案を承認、同法案は正式に法律となって、施行へ向け政府に通知された。これを受け、昨日午後5時から予定されていた国会会議はキャンセルとなり、こうして87年度予算と追加条項をめぐる問題は幕を下ろした。



※訳注:「憲法第44条」は国家経済を「国営」、「協同組合」、「民間」の三部門に分け、石油を含む大規模産業の国有化や計画化された国家経済の運営を定めた条項。外資の導入や貿易の自由化、国営企業の民営化など、1990年代のラフサンジャーニー政権以降進められてきた経済の自由化との兼ね合いで、憲法第44条はつねに問題となってきた。しかしその一方で、憲法第44条では「民間部門」は「国営」部門を補完するものとしての従属的な位置づけがなされてはいるものの、国営部門として明記されていない多くの産業の民間部門への開放を保証するものであるとも解釈される。なお、憲法第44条には国営企業の範囲として、「大規模産業」や「海外貿易」、「大規模鉱山」、「銀行」、「保険」、「電力」、「上下水道」、「ラジオ・テレビ」、「郵便・電信・電話」、「航空・海運・道路・鉄道」などが記述されている。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:13239 )