ラマダーン月の連続テレビ・ドラマに放送中止命令
2008年09月18日付 E'temad-e Melli 紙


【ファールス通信】連続テレビ・ドラマ「ベザンガーフ(きわどい時に)」がイラン国営放送番組監督評議会により放送中止を命じられた。

 イラン国営放送番組監督評議会がファールス通信に宛てた書簡には、「国民、ならびに多数の宗教界・大学界の良心的な指導者や専門家から寄せられた幅広い抗議、及び『ベザンガーフ』シリーズの非道徳的、非イスラーム的、さらには非合法的な規範を逸脱した番組内容に対する過去のイラン国営放送番組監督評議会の批判に鑑み、同評議会はイラン国営放送総裁宛ての書簡を通じて、同連続テレビ・ドラマの放送中止命令を通達した」と記載されている。

 同書簡は、イラン国営放送には「大衆の大学」としての使命や社会の見識・文化の向上という重要な義務があると明言しつつ、次のように述べている。「国営メディアであり最も重要な文化機関であるところのイラン国営放送の使命とは、社会の人民一般の知識・見識・気質を向上させ、視聴者、特に新しい世代にイスラームと革命の価値・理想を流布させることである。しかしながら、イラン国営放送により制作された一部の連続テレビ・ドラマの内容はその目的に沿っていないばかりか、西洋に由来する影響から、文化的侵略やイランの文化・宗教全体への害毒流入を助長する要因となっている」。

 イラン国営放送番組監督評議会のホセイン・モザッファル議長は、書簡の冒頭にて、一部の連続テレビ・ドラマにおいては「風刺」の意味が正確かつ論理的に定義されておらず、「風刺」を悪言や戯言、嘲笑の類と誤解しており、罵詈雑言やみだらな言葉が蔓延し、非道徳的、非イスラーム的、さらには非合法的な規範を逸脱した番組作りが大手をふるっていると指摘した。その上で、これらは国営メディアにおける風刺表現のあり方に関する最高指導者の見解に矛盾し、かつイラン国営放送の番組制作者が遵守すべき諸々の規定や基準に違反すると述べた。

 そのような規定の例として、モザッファル議長は「番組制作規則・方針」の第1-3-16(イラン国営放送の放送番組で使用される言葉・単語は、悪言、罵詈雑言、侮辱、その他不適切な言葉であってはならない)や、第2-19-30(話し手や国営メディアとしてのマナーや道徳、尊厳から外れたニュアンスを有する、含みのある言葉や文章、慣用表現を使用禁止とする)を引用している。

 その上で同書簡は、一部の連続テレビ・ドラマは番組制作の基準・規定から逸脱しており、視聴者らの激しい抗議を引き起こし、国営メディアの威信を傷つけ、「大衆の大学」としての崇高な地位を貶めていると指摘している。

 さらに同書簡は、神聖なラマダーン月の中でも最も精神的価値の高い時間帯に、「ベザンガーフ」は下品かつみだらな言葉を発していると指摘する。それらの言葉の例として、「うるせえんだよ、だまれ」、「ぶつぶついってんじゃねぇよ」、「あのマヌケ野郎、馬鹿な真似をしないだろうな」、「急げよ、ノロマ」、「おねんねして、二度と起きてくんじゃねぇよ」、「俺は時々馬鹿をするが、テメエははいつも馬鹿だな」、「もう黙れ」、「一体何してんだ」、「コイツらどこで見つけたんだ」、「おい、そこのヘンタイ」、「そんなに頭にきちゃいねぇけどよ‥‥」、「ゴミ拾いめ」、「邪魔なんだよ」、「失せろ」、「アタマのおかしいアホども」などを挙げている。

 また、不快な行動のシーンとして、慣習的にみだらなイメージ・意味を想起させる指の操作、繰り返し用いられる便所をテーマとしたシーン、トイレでの「オヤジの匂いがするぜ」といった親を侮蔑する発言を例に挙げ、これらの言動はイラン国営放送が果たすべき文化的使命と明らかに矛盾していると指摘している。

 イラン国営放送番組監督評議会の議長は書簡の終わりで、イラン国営放送のザルガーミー総裁に対して、これまでの数々の違反行為と「ベザンガーフ」放送中止を求める人々の批判に鑑み、これまでのように早急な対処を行い、その結果を同評議会に通知するよう要求した。

「ベザンガーフ」の放送は継続する

 一方、第3チャンネルのアリー・アスガル・プールモハンマディー局長は、イラン国営放送番組監督評議会が送った「ベザンガーフ」の放送中止を求めるイラン国営放送への書簡について、「私はまだそれを読んでいないが、『べザンガーフ』の放送はシャフリーヴァル月28日(9月18日)までは継続する。第3チャンネルは唯一《ガドルの夜》に、それ用の特別番組を組んでいるだけだ」と話した。
〔※《ガドルの夜》とは、ラマダーン月19日(9月19〜20日)、21日(9月21〜2日)、23日(9月23〜4日)の夜のことで、この日徹夜の礼拝を行う。預言者ムハンマドに啓示が下った夜とされる。またシーア派にとっては、ラマダーン月19日は初代イマームのアリーが刺客に襲われた日、21日はアリーの命日に当たり、特別に重要な日であるとされる〕

 また同氏は、風刺ドラマ「ベザンガーフ」は非常によい結末を用意していると指摘しつつ、イラン国営放送番組監督評議会のイラン国営放送に対する見解については、「いずれにせよ、我々は自由な国に暮らしており、あらゆる人は自らの見解を述べることが可能である。同評議会の発言・見解に対しても我々は十分な敬意を払うが、『ベザンガーフ』の結末は素晴らしいため、フェトル祭〔断食明けのシャッワール月1日=10月2日〕まで放送を継続するつもりだ」と語った。

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( 翻訳者:柴田愛子 )
( 記事ID:14739 )