子供の安全確保が急務
2008年10月21日付 Jam-e Jam 紙

【社会部:キャターユーン・メスリー】
いつも子供には、路地から学校の正門までの道を一人で行かせていた。子供を最後に見た時、子供はまだ学校には着いていなかった。子供は無邪気にこちらを振り返り、笑いながら手を振る。最後にちょっとだけ子供の方を見た。あとほんの少しで学校だ。

すると、車が静かに子供の側に横付けしてきた。体格のいい男が何事か、笑いながら話しかけている。気になった。多分通りすがりの人だろう。そんな考えも、車から手が伸びてくるまでだった。いつも子供には、知らない人と話しちゃいけないと言ってきたつもりだ。もしかしたら、言うのを忘れたのかもしれない。

車のドアが開き、私の心臓の鼓動は大きくなった。思わず子供の方に駆け寄った。娘の片足はすでに車の中だ。あわてて車に近づき、娘を引き戻した。「あんた、子供をどこに連れて行くつもり?」。男は悪びれる様子もなく、大声で怒鳴ってきた。「あんたこそ誰だ?俺の娘だぞ」。驚きのあまり、おどおどして尋ねた。「じゃ‥‥じゃあ、あんたは私の夫ってことね。で、でも、あんたなんか私は知らないわよ」。

男はびっくりした様子でアクセルを踏み、タイヤをきしませながら行ってしまった。私は自問した。「もし私がここにいなかったら、もし数秒でも遅かったら、もし最後に娘の方に目をやらなかったら、もし‥‥」

 首都テヘラン治安維持軍長官は〔9月下旬からの〕教育年度の始まりに合わせる形で、人々の安心感を高めるのに最も重要なのは学校の児童・生徒の安全であり、それゆえ治安機関は児童・生徒の安全確立に特別の重点を置いていると述べた。しかし残念なことに、各家庭の日常的な経験や現在進行中の事件報道の数々を見る限り、子供たちの安全はつねに深刻な危険と隣り合わせであることが分かる。

 主に仮想空間ないしは現実の空間で子供たちを脅かし、精神的・肉体的な依存や非倫理的行動へと誘う危険とは別に、より直接的に子供たちを苦しめ、略取し、遠くへと連れて行ってしまう、そういった種類の危険が存在する。

 子供たちを付けねらう「狩猟者」たちの目的は通常、子供たちが身につけている金品を奪うこと、子供たちを性的に虐待すること、そして子供たちを殺して体の部位を売り飛ばすこと、である。
〔訳注:「体の部位を売る」というのが臓器売買を指しているのかどうかは不明。なお、イランでも貧困による人身売買や腎臓売買が行われていると言われている〕

 家族は子供が略取されたこと、ないしは略取未遂事件が起きたことを早期に警察に通報しなかったり、子供への暴行があった場合には、家族の名誉を守るために通報をためらったりするケースが多く見られる。この問題に関する正確な統計が存在しないのも、恐らくこのためであろう。

 各家庭にとって盲点となっている問題の一つに、女の子の安全に多くの注意が払われる一方で、男の子にはほとんど注意が向けられないことが挙げられる。これまでの経験から、小学生の男の子だけでなく、ときに中学生・高校生の男子も、「狩猟者」の標的になることがあるということが分かっている。そしてその際、多くが性的暴行を受け、体の部位を売り飛ばすために殺害されているのである。

安全を確保する責任者は誰?

 「安全」というものに対して多くの注意が払われている一方で、通学路での子供たちの安全を確保する責任者は誰なのか、いまだ曖昧なままとなっているのが現状だ。もちろん、治安維持軍は新学期にあたり、士気の高い精鋭たちを養成し、学校の近辺に配置するなど、子供たちの安全確保のための責任を果たしている。

 捜査警察社会課は、児童・生徒たちには正確な教育が必要だと強調しつつ、緊急時に連絡が取れるよう、子供たちの住んでいる地域や親・兄弟の住所・電話番号を子供たちのカバンに記入してほしいと述べている。また、同課は見知らぬ人とは話さないこと、見知らぬ人の車には乗らないこと、金品を身につけないことなどを子供たちに教育するよう呼びかけている。

 治安維持軍は今年、社会的安全計画の実施を延長する中で、テヘランの学校周辺をこれまで以上に監視し、その目的のために私服警察官も活用すると表明している。

 これらの措置にも拘わらず、治安維持軍が子供たちの登下校をすべて監視することは、イランであれ世界のどこであれ、現実的ではないし、不可能である。恐らく治安維持軍の他にも、子供たちの安全を守る二本柱として学校と家庭の存在を挙げることができよう。果たして、学校と家庭は自らのこのような役割をきちんと自覚しているのだろうか。

 教育省広報担当顧問のモフセン・ファリーディー氏はこのことについて、学校は学校内で起きる出来事に責任を持つものであり、教育サービスの監督にこそ、子供たちの安全確保に向けた学校の最大の努力があるとの認識を示している。「イランの学校は、世界で最も安全な学校である。他国と比べても、〔イランの学校に存在する〕危険性など些細なことでしかない。しかしいずれにせよ、子供たちには必要な注意を行う必要はある。その一方で、イラン国営放送や家庭、司法・治安機関にはより多くの責任がある」。

 このように、様々な危険に直面する子供たちに情報を提供したり、彼らを教育したりするためのきちんとしたプログラムが教育省にはなく、多くの負担を治安維持軍や家庭に背負わせていることが分かる。

 ともあれ、子供たちの安全確保は、学校内の環境や通学送迎サービスに還元されるものではない。病的な人物はあらゆる学年の子供たちを待ち伏せしているのである。国の検事総長は全国の各検察庁ならびに治安維持軍に対し、子供たちの安全向上へ向けた一層の努力を最近呼びかけている。この安全を確保するためには、学校、家庭、警察、司法の各方面を多角的に動員することが必要であろう。

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:15006 )