小切手が落ちない!:資金の流通に障害が発生
2008年10月30日付 Jam-e Jam 紙

【経済部】各銀行で市民の安心を踏みにじるような、驚くべき問題が起きている。銀行に、現金も「イラン・チェック」もないのである。
〔訳注:「イラン・チェック」は中央銀行が発行する一種の金券。イランには高額紙幣がないために、その代わりとして「チェック・プール」と呼ばれる代用通貨が広く流通している。そのうち中央銀行が発行するのが「イラン・チェック」で、どの銀行でも換金することが可能。なお、本記事では「イラン・チェック」とともに「トラベル」(=トラベラーズ・チェック)という語も用いられているが、「イラン・チェック」と互換的に使われているので、訳文では「イラン・チェック」に統一した。〕

 本紙記者の報告によると、手持ちの小切手を現金化しようと各行の支店を訪れた市民に対して、現金ないしは「チェック・プール」の在庫はないとの応対がここしばらく続けられているという。〔‥‥〕労働者への給与の支払いや商品の購入など、個人的ないしは職務上の理由から現金を緊急に必要としている人々は、このような驚きの対応に頭を抱えている。

 今のところ、〔換金可能な〕支店が特定されていない〔‥‥〕小切手については、このような問題に直面したとしても、他の支店をあたってみるなどの解決策があり、事実複数の支店を訪ね、最終的に現金を手にすることも可能だ。しかし、問題は手持ちの小切手が、他の支店で現金化することのできない特定の支店に限定されたものである場合だ。このような場合、銀行に現金ないしはチェック・プールが到着するまで〔支店内で〕しばらく辛抱強く待つか、後日に期待をつないで再度支店を訪ねるかしか方法はない。

 どうしても現金が必要な人、短期間のうちに現金ないしはイラン・チェックを調達しなければならない人にとって、このような冷酷かつ無責任な対応は、決して納得のいくものではない。この問題が原因で、一部の銀行の支店では言い争いが起こることもあるという。

 本紙記者はこのような問題が実際に起きているのかどうか、真偽を確かめるために、客になりすましてテヘラン中央部及び北部にある数行の支店を訪ね、200万トマーン〔約20万円〕分の小切手を現金化できるかどうか尋ねてみた。このうちヴァリー・アスル通り沿いにある3行で換金は不可能であるとの答えが返ってきた。〔テヘラン中央部にある〕ヴァリー・アスル広場周辺の支店では、支店長と相談した上で、100万トマーン分なら換金可能、残りは銀行為替ないしは銀行手形になるとのことであった。

 ターレガーニー通り沿いにある、ある政府系大手銀行の本店でも、事情は同じだった。担当者は現金ないしは中央銀行発行のイラン・チェックを支払うことができないことを詫びていたが、「どうなっているんだ」、「現金を手に入れるためにはどうしたらいいんだ」と詰め寄る茫然自失の顧客と、自分には責任はないとして曖昧な返事を繰り返す行員との間で、口論に発展する場面も数多く見られた。

 本紙記者が個別に複数の支店長から話を聞いた結果、この問題にはいくつかの原因があることが分かった。まず第一に、この問題は中央銀行が発行するイラン・チェックに関連している。イラン・チェックは、これまでと同様、各行が独自に発行することはできず、イラン・チェックを入手し、需要者に流通させるためには、その額面と同じ金額を中央銀行に支払わなければならない。このため、各行の資金繰りに問題が生じた場合、中央銀行発行のイラン・チェックを買うことができず、ひいては一般市民が必要とする量のイラン・チェックを供給することができなくなる、という仕組みになっているのである。

 第二に、各行の回転資金が不足していることである。これは、中央銀行の口座から資金を引き出すことが禁止される、中央銀行による金融引き締め政策によるものだ。各行は回転資金として保有している資金の一部を赤字の穴埋めに利用しており、そのため支店での現金不足に陥っているのである。

 この問題が今後とも続くようであれば、銀行に対する人々の信頼は傷つき、ビジネスや人々の日常にも障害が生じる可能性があるように思われる。各行や中央銀行には、同問題の解決策を早急に講じる必要があろう。

〔後略〕

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:15014 )