トルコ・ロシア・エネルギー合意の通信簿
2009年08月08日付 Radikal紙

僅か8時間の滞在のためにアンカラを訪れたロシアのプーチン首相は、サムスン-ジェイハン間の石油確保について約束した。この合意により、トルコはガズプロム社から年間300億立法メートルの天然ガスを購入し、他のエネルギーについてもロシアへの依存を増すことになる。

ロシア連邦のウラジミール・プーチン首相はほんの8時間のアンカラ滞在の間に一石五鳥を実現した。同首相は、トルコから南下するパイプラインの実現の点で懸案であった黒海での「排他的経済地域通過許可」の取得を訪土の目標に掲げていた。トルコはこれに完全合意とはいかないまでも、今回、ロシア政府に対しゴーサインを出した。トルコ国内の原子力発電所の入札期間まだ終了していないが、プーチン首相は「入札は露土合弁企業が取得した」と述べて、入札の行方を「後戻りできない」状態にした。

■ 依存強化へ

イスラエルに販売する天然ガスを運ぶブルーストリーム2・パイプライン建設についてトルコを説得したプーチン首相は、ジェイハンの液化天然ガス・ターミナルとトゥズ湖地下の天然ガスの貯蔵庫建設工事についても、ロシア企業に有利に話を進めた。トルコ側はサムスン-ジェイハン石油パイプラインに関しロシアから石油確保の約束を取り付けたことに歓迎の意を表し、長期的なプランでジェイハンが戦略的に重要なエネルギー港となることを確保したが、そのため今後エネルギー問題ではロシアへの依存度をより強めることとなった。

プーチン首相が訪問中に署名した文書で大枠が示された天然ガス、石油、原子力の3分野での新たな露土エネルギー協力プランは、ロシアの石油・天然ガス市場における力をトルコだけにとどまらず、ヨーロッパ、そして世界で増大させることになると見られている。

■ プーチン首相の勇み足な行動

一方で、ロシアと署名が交わされた原子力合意はトルコの原子力発電所建設プロジェクトを拘束するものではないと外交関係の情報筋が明かした。同情報筋によれば、プーチン首相が「(原子力発電所の建設を)露土の合弁企業が落札したことと、発電所の工事開始予定は我々にとって誇り高いことだ」と述べたことは、「勇み足」の声明だったと注意を促した。

■ ロシアが得たもの

トルコ・ロシア間で署名が交わされた合意により、ガズプロム社から年間300億立方メートルの天然ガスを購入するトルコは、他のエネルギー分野でもロシアへの依存度を強めることになるだろう。トルコは石油と原子力エネルギーの分野でもロシアに依存することになる。

プーチン首相のトルコ訪問中に議論されたプロジェクトでは、次のような結果が出た。

1.サウスストリーム・プロジェクト
ウクライナでのオレンジ革命後、ロシアはヨーロッパへの天然ガス輸出にあたって、さまざまな困難に直面しはじめた。西側寄りのウクライナ政府は2006年以降、毎年ロシアとの間に天然ガス問題をおこし、ヨーロッパに輸出されるはずの天然ガスを自国領土で使用してしまうこともあった。 ロシアはウクライナに警告するため天然ガスパイプラインのバルブを閉じ、(ヨーロッパの)購入者らも巻き添えにせざるを得なかった。ロシアが、西部方面で、ウクライナ、モルドヴァなどEUへの統合を希望している国々を迂回するために企図したサウスストリーム・プロジェクトは、黒海を通ってブルガリアへ伸びる天然ガスパイプライン建設を目指すしている。しかしこのパイプラインは、国際水域だけでなく、黒海に面している国々の「排他的経済地域」を通らなければならない。トルコもこの一国である。したがって今回のアンカラ訪問のロシア側にとって非常に重要な目的のひとつは、トルコがロシアに排他的経済地域の通過問題で合意することだった。訪問期間中トルコがはっきりと合意を示したわけではないが、ロシア側はゴーサインを得たとの印象を周囲に与えた。

2.原子力発電所:
トルコのエネルギー問題を長期的に解決するために計画された発電所は、メルスィンのアククユに建設される予定だ。入札には露土共同出資のパーク・テクニック社(ジネルグループ)とアトムストロイ・エクスポートJSC社(ロシア国営企業)のみが申請を行った。最初の提案で合弁企業グループは、1時間のキロワットに21セントという値段をつけた。しかし、その後、15年間にわたって利益の10パーセントをえるとする案で1時間当たりの発電コストは15セントに引き下げられた。トルコ側は(それでも)入札額が高額であるとして入札期間を延長した。しかしプーチン大統領のアンカラ訪問に際し、両国の原子力エネルギー協会間で署名された2枚の文書により、入札期間問題は新たな局面に持ち込まれた。プーチン大統領は、入札を露土合弁企業が落札し、工事段階に移ること、入札額を下げるために努力したことを発表した。トルコのタイイプ・エルドアン首相は関連問題に回答せず、トルコ側は入札期間は終了していないと発表したが、プーチンのこの具体的発表は、入札期間を(結果的に)終わらせる効果をもった。

3.ブルーストリーム2ライン:
ロシアとイスラエルは30年間の天然ガス合意にサインをした。合意の内容は、ロシアがイスラエル対し、最初40億、最大も100億立法メートルの天然ガスを販売するというものだ。ブルーストリーム2・ライン・プロジェクトはまさにこの点で持ち上がってきた。ロシアはこのラインをトルコと共同して建設し、これによりサウスストリーム・ラインプロジェクトと競合するナブッコ計画にも参入しようと考えている。

4、ジェイハンの液化天然ガス・ターミナル
アクサ社とガズプロム社はジェイハンでの液化天然ガス(LNG) ・ターミナル建設問題でも合意した。これにより世界の天然ガス市場の半分以上を手にしているガスプロム社が新たな戦略的要地を得ることとなろう。

5.西部天然ガス協定延長とトゥズ湖底貯蔵庫:
1996年に合意された、トルコがロシアから天然ガスを購入するという協定期間は2011年でいったん終了する。トルコとロシアはこの協定の期間延長を決定した。ロシアは、イラン、イラク、アゼルバイジャン、あるいはトルクメニスタンに奪われる可能性があった、この天然ガス140億立方メートルの売却に関する協定を更新した。さらにこの訪問中、ロシアにとってはさらに良いニュースがあった。不正問題を理由に泥沼化していてトゥズ湖底天然ガス貯蔵庫プロジェクトを、ロシア企業が獲得するかもしれない、という話が持ち上がった。

■トルコが得たもの

1.サムスン-ジェイハン・パイプライン
トルコ政府はこのパイプライン建設作業のすべての段階を、閣議決定に沿って入札を経ずにチャルック・ホールディング社に請け負わせた。チャルック・ホールディング社はパイプラインの終点ポイントであるジェイハンでの石油精製所建設についてもトルコ共和国エネルギー調整委員会(EPDK)から許可を得ている。パイプラインが完成すれば、カスピ海やロシアで生産されているカザフとロシアの石油がサムスンに船で輸送され、そこからパイプラインでジェイハンに運ばれる予定だ。これにより、最大積載量が1億2千万トンと定められているボスフォラス海峡を、1億5千万トンを超えるタンカーが通過するということはもはやなくなるだろう。海峡でのタンカーの通過をトルコ側が制限し、タンカーが毎日も海峡の入口で待機している状況は、ロシアを陸上のパイプライン・プロジェクトに接近させた。このためめ、1つはトルコ、もう1つはブルガリア、ギリシャを通過し、黒海からエーゲ海に至る2本のパイプラインプロジェクトが計画された。ロシアは最近、ブルガリア・ギリシャの2国と、ブルガズ-デデアーチ間のパイプラインプロジェクトにむけて議定書にも署名している。石油輸出の増大ゆえに海上よりも陸上を経由するルートの計画を余儀なくされ、この流れを加速させたいプーチン首相は、さまざまな利益を生むことを考え、サムスン-ジェイハンのパイプラインを選択したことを発表した。

2.ジェイハン港
トルコは天然ガスや石油の原産国ではないが、長期的にこのふたつのエネルギー市場で意欲的なアクターとして自国のビジョンを実現させるだろう。石油、天然ガスのパイプラインと貯蔵庫が新たに建設されれば、インドからイスラエルまで、ギリシャからドイツまでの広範な地域で生活する消費者にとってトルコは重要な通過ポイントとなる。精製所と各経由所の建設によりジェイハンに出現するエネルギー施設施設群により、トルコはアムステルダムやニューヨークといったエネルギー基地と競うようになるだろう。

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(翻訳者:原田星来)
(記事ID:17147)