「アフマディーネジャードが勝利しなかったら、今頃偽善者たちが生まれていただろう」:メスバーフ=ヤズディーの門弟が発言
2009年08月05日付 E'temad-e Melli 紙


メスバーフ=ヤズディー氏が主宰する「イマーム・ホメイニー研究所近代史センター」のラフダール元所長は昨日、「われわれはどのようにして、突如として偽善者となるのか」と題されたシンポジウムの中で、「もしアフマディーネジャードが大統領選で勝利を収めなかったならば、まさにイスラーム初期のアブー・バクル派のような偽善者集団が今頃生まれていただろう」と述べた。
〔※アブー・バクルは、預言者ムハンマドの後継者としてイスラーム共同体を率いた初代正統カリフ。シーア派にとっては、初代イマーム・アリーが継ぐべき地位を簒奪した者として見なされている。「偽善者」は、現代的文脈では、特にイスラーム共和国体制を信奉していると見せかけて、その実マルクス主義やリベラリズムに走った人々を指す〕
 
 テヘラン大学学生バスィージによって開かれたこのシンポジウムの中で、ホッジャトルエスラーム・ラフダールはさらに、次のように述べた。
《セイエド》という地位は敬うべきものではあるが、同時にイスラーム史の中では、偽善を生み出してきたのも事実だ。というのも、イスラーム史におけるセイエドたちは、ちょうどヨーロッパ史における《ロード》(Lord=封建貴族)の役割を担っているからだ。イスラームには、ヨーロッパ的な貴族主義のようなものはないが、しかしイスラームには《相対的な貴族主義》とでも言えるものがある。《セイエド》という地位は、まさにそれに当たる。

〔※「セイエド」とは預言者ムハンマドの血を引く子孫のことで、イスラームでは一定の尊敬を集めてきた。ラフダール氏はここで、「セイエド」がイスラームでは特別なステータスとして悪用され、本来平等であるべきイスラームを歪める結果を招いていると非難している。なお、貴族主義=特権主義の排除はアフマディーネジャードのスローガンの一つ〕

 同氏はさらに次のように付け加えた。
セイエドとは、神によってハーシム家にのみ与えられた地位であり、特にザフラーの血を引いたセイエドたちのことであると言われている。にもかかわらず、ザフラーの血を引かないセイエドたちがいるのも事実だ。

〔※ハーシム家とは、預言者ムハンマドの曾祖父ハーシムの血を引く一族のこと。西暦750年に始まるアッバース朝は、ハーシムの孫アッバース(預言者ムハンマドの叔父)に由来する。ザフラーとは、預言者ムハンマドの娘で初代イマーム・アリーの妻ファーティマのこと。ラフダール氏がここで述べているのは、ムハンマド=ファーティマの血を直接引く子孫こそ敬われるべき「セイエド」の本流であって、アッバースの血を引くセイエドは本来の「セイエド」ではない、ということ〕

 イラン労働通信の報道によると、ゴムのフォトゥーフ・イスラーム研究所所長を務めるラフダール氏は、ザフラーの血を引かぬセイエドたちは歴史上つねに、ザフラーの血を引くセイエドたちと混淆しようと努力してきたと強調した上で、次のように指摘した。
アッバース一族のような人々は、セイエドの家系を利用し、またそうであると僭称することで、権力を手に入れようとしてきた。彼らは「われわれは預言者一族の叔父の子孫だ」などと言い張ることで、自らをセイエドであるかのようなフリをし、国家権力を手にすることに成功してきたのだ。

 イスラーム神学校の教授を務める同氏はまた、「アミーロル・モオメニーン」〔=信徒たちの長〕や「オンモル・モオメニーン」〔=信徒たちの母〕といった概念もまた、イスラーム初期に偽善を生み出したことばであると指摘し、次のように述べた。
イスラームの預言者は、「アミーロル・モオメニーン」という称号を、アリー閣下〔=初代イマーム・アリー〕に対してのみ使った。ところが預言者が亡くなると、この称号は初めて〔アリー以外の人物、すなわち〕ウマルに対して使われるようになった。このことばはウマイヤ朝からアッバース朝といった流れの中で、イスラームに害を及ぼすようになった。このような偽善的な雰囲気はさらに深刻なものとなり、〔第6代イマームの〕イマーム・サーデグが〔アッバース朝のカリフ〕マンスールを「アミーロル・モオメニーン」と呼ぶまでになった。

〔※アミーロル・モオメニーン(信徒たちの長)は、シーア派では初代イマーム・アリーに対してのみ使われるが、スンナ派ではカリフ一般に対して用いられた。ラフダール氏はここで、シーア派にとって、カリフはイマームが担うべきイスラーム共同体の指導者の地位を簒奪した者たちであり、そればかりかアミーロル・モオメニーンという称号も僭称したといって非難している。なお、「オンモル・モオメニーン」(信徒たちの母)とは預言者ムハンマドの妻たち、なかでもアーイシャを指すが、シーア派にとってアーイシャはイマーム・アリーのカリフ就任に反対し、「ラクダの戦い」を起こした「悪女」とされる〕

〔中略〕

 イスラーム神学校及び大学の両方で教授を務めるラフダール氏は、反アフマディーネジャード連合を、「タルハ=ズバイル=ムアーウィア」連合に喩えて、次のように問いかけた。
一方に氏とその兵士〔=アリーとシーア派信徒/アフマディーネジャードとその支持者〕がいるときに、彼ら〔=タルハ=ズバイル=ムアーウィア/ムーサヴィー=ハータミー=ラフサンジャーニー〕はそれに対する反対連合を作った。これほど悪辣な偽善があろうか。

〔※タルハとズバイルは、イマーム・アリーの第4代正統カリフ就任に反対し、預言者ムハンマドの最愛の妻とされたアーイシャとともに反旗を翻した、いわゆるラクダの戦いの首謀者。ムアーウィアはイマーム・アリーと対立し、アリー暗殺後ウマイヤ朝を創始した人物。いずれもシーア派にとっては、「イスラーム共同体の正統な指導者」であるイマーム・アリーに反対し、カリフ位を世襲化した「悪漢」〕

 ラフダール氏は「ラクダの戦いの後、アーイシャに対して寛大な措置を取られたアリー閣下のような行動を、われわれも取るべきなのでしょうか」との学生の問いに対して、次のように答えた。
アリー閣下はアーイシャ一派の反乱を鎮圧し、平定した。しかし彼女を辱めるようなことは一切しなかった。イマーム・アリーは彼女ら〔の軍勢〕に対して軍を率い、彼女に与した人々を一人一人殺した〔が、首謀者である彼女は殺さなかった〕。

 同氏はその上で、ニヤッと笑って、「われわれも同じようなことをしてはどうだろうか。この〔イスラーム共和国〕体制内にいる《アーイシャ》を見つけ出し、彼女の兵士たちを殺し、根絶やしにしようではないか。しかし彼女自身には用はない。もちろん、彼女を礼拝の導師・指揮官に祭り上げよう、ということではない」と語った。

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17269 )