Joost Lagendijk コラム:すべてがイスラームフォビアでは説明されえない
2009年08月30日付 Radikal 紙

欧州の多くの国でイスラームフォビア(イスラーム嫌悪)は高揚しているのだろうか?答えはイエス、残念ながら高まっている。トルコ人はこの傾向の影響を受けているのだろうか?答えはイエス、折々に影響を受けている。では欧州のトルコ人に起きるすべてのことの説明がイスラームフォビアでつくのだろうか?答えはノー、そうではない。

欧州のポピュリスト政治家は、近頃票を集めるための最もよい手段が、多くの欧州国民がイスラームに感じる恐怖を利用することであることを知っている。2001年9月11日の攻撃以来、多くの国でなされた選挙結果にこの傾向をはっきりと見ることが可能だ。最新の例は今年6月になされた欧州議会選挙であった。右派政党が反EUと反イスラームのスローガンを基に議席数を伸ばした。いくつかの国では獲得した支持率が20%を超えた。こうした状況に対し、欧州で、場合によってはトルコでも我々は声をあげなくてはならない。

しかし、そこには避けるべき2つの間違いがある。第一に、イスラームフォビアが20%の票を獲得した国々で、80%の人々は彼らに投票しなかったということを忘れてしまうこと。非常に簡単に聞こえるが、実際には時折忘れられてしまうのだ。トルコのよく知られた新聞、特によりイスラーム的な保守路線である幾つかの新聞を読むと、容易にすべてのオランダ人が、ドイツ人が、あるいはフランス人がムスリムに対して深い憎悪を抱いているという結論に達することができる。あたかもEU諸国のすべてが反ムスリム表現の魔法にとらわれているかのように見せている。ことの真相は次のことだ:声の大きい少数の人々が、本当に憎しみを引っかき起こす政治家の挑発的な呼びかけに耳を傾けている。大多数の人々はこうではなく、こうした挑発に強固に反対している。

第二の間違いは、ムスリムに起きるすべてのことを、イスラームを攻撃するうるさい輩の考えを参照しながら説明しようとすることである。確かに、思考をポピュリストに毒された者らがムスリムに対する激しい攻撃をしている。しかし、欧州のムスリムが遭うすべての不快な出来事がイスラームフォビアに関連があるわけではない。

一つ例を挙げてみよう。3週間前にアルズ・エルバシュさんがアムステルダムで刺されて殺害された。アルズさんは非常に成功した2つの幼稚園の経営者だった。彼女はよく馴染んでいて人気のある移民の完璧な一例であると、多くのオランダ人とトルコ人に見なされていた。オランダ女王が彼女を宮殿に招待するほどにアルズさんの活動に感激していたのだ。周囲の人は皆アルズさんの死にショックを受けた。親たちや隣人たちは悲しみと怒りを示すためにデモ行進を組織した。

いくつかのトルコ紙が即座に示した反応はといえば、アルズさんの死をオランダで高揚している外国人への敵愾心の波に関連付けることだった。彼らはこの件に関する確かな論拠も具体的な証拠も全く取り上げなかった。私が確信しているのは、多くのトルコの読者は最も深刻な恐怖が確認されたと考えた、ということだ。欧州はもはやトルコ人にとって安全ではないということは明らかであると。

実際のところこれは悪質で偏向した新聞の仕事だ。今週、大規模な警察の捜査の後、主犯の容疑者が麻薬とアルコール中毒者であり、暴力的な態度で知られるトルコ人男性であることが明らかになった。反ムスリム思考や組織との繋がりは全くなかった。アルズさんのドラマティックな死の背後にある事実を知るには、もう少し待つ必要があるだろう。

私たちは待つ一方で、あの良く知られたトルコ諸紙も、読者に対してこの事件から早々に結論を引き出したことが大きな不幸であったことをはっきりと述べてくれれば。将来、欧州においてイスラームフォビアと関連がありトルコ人を巻き込むあらゆる出来事が、トルコのメディアで全ての側面から検討されること、そしてトルコの政治家や国外の政治家たちによっても強く非難されることを私は希望する。しかし同時に、人種差別主義や外国人への敵愾心で証明され得る関連性のない事件である時には、しかるべき形で報じられることも希望している。というのも、悲劇的な事件も人生の一部であり、これを私たちが望まないとしても認めなくてはならないからである。

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( 翻訳者:幸加木 文 )
( 記事ID:17329 )