「ハバル」紙、発行を休止:「ハムシャフリー」紙、発行停止処分に
2009年11月24日付 Mardomsalari 紙

プレス監視委員会の会合が開かれた昨日、イラン出版界に動揺が走った。昨日の「ハバル」紙の社説・風刺コラムに、同紙が同日を最後に発行を休止することが宣言されたからだ。

 「原理派」の新聞として知られるハバル紙のアリー・レザー・モエッズィー発行責任者—同氏はラーリージャーニー国会議長の派閥に近い人物であると多くの人間が認めている—は、「次の機会まで」と題された同紙の昨日の社説の中で、次のように記している。「今号が一時的なお別れの号です。近い将来、読者のみなさまに再びお会いできることを願っています。私たちは、〔ハバル紙のウェブ版である〕「ハバル・オンライン」に力を集中させることにしました。〔現在の私たちにとって〕ハバル・オンラインが〔情報発信の〕好ましい機会を与えてくれるでしょう。紙媒体としての制約のあるハバル紙、新聞特有の困難とは別に、一部の狭隘な視野・悪意ある態度によって、現在その活動に制限が加えられているハバル紙を休刊させることがよいと判断しました」。

〔中略〕

 こうした論説には、〔なぜハバル紙の休刊を決意したのかという〕理由について、直接的な言及はない。しかし同紙のある消息筋はイラン労働通信(ILNA)とのインタビューの中で、一部の政治集団、特に政府支持の急進派から同紙に対して圧力があったことを明らかにしている。この人物はその上で、「現在、ウェブ版のハバル・オンラインという形で活動を継続していくことを考えている」と述べている。

 上記のような指摘を裏付けるものとして、最近、一部の政府支持派のウェブサイトや新聞はハバル紙、及びその関係者らを攻撃する内容の記事を発信していた。同紙の編集方針が〔政府支持派にとって〕我慢のできないものとなり、最終的に同紙は自主的な休刊に追い込まれたようだ。

 ハバル紙は原理派に属する新聞であると見られてきたが、しかしその編集方針は政府の政策に対して批判的で、政府の経済・政治・文化・社会政策に異議を唱えてきた。例えば、同紙の最終号に掲載された〔‥‥〕社会記事には、「国家青年庁には全国大学入試テストの合格者を振り分ける権限などない」、文化面には「文化イスラーム指導省、映画協会と対立激化」といったタイトルが踊っていた。政治面には、「対立、行政権と立法権の境界を越える」というタイトルで、「補助金の目的化」法案をめぐる政府と国会の対立を伝えていた。ハバル紙最終号の一面には、メディア担当の大統領顧問であるメフディー・キャルホル氏との独占インタビューが掲載され、イラン国営放送の第2チャンネルを政府専用に割り当てるべきだとする同氏の〔突拍子もない〕発言を伝えている。

 他方、イランでもっとも発行部数の高い新聞「ハムシャフリー」の今後の発行継続をめぐって、昨朝問題が持ち上がり、最終的に同紙に一時発行停止処分が下ったとする報道が、複数のウェブサイトのトップページに掲載された。プレス監視委員会の会合終了後、すでに多くのメディアがハムシャフリー紙発行停止の報道を伝えていた。しかしその後、1週間の発行停止をプレス監視委員会から宣告されたハムシャフリー紙は、〔委員会との〕話し合いの結果、発行停止処分から数時間後、処分が解除されたとする報道をILNAが伝えた。この発行停止処分の解除は、しかし数時間ともたなかったようだ。

 ここ最近の政府とテヘラン市の対立激化の結果、政府の政策に対して批判的なトーンと強めていたハムシャフリー紙は、キヨスクのスタンドから姿を消すことになった。この処分がいつまで続くか、いまだ不透明なままである。ハムシャフリー紙は一面に、バハーイー教に関連した施設〔の写真〕を掲載し、それを宣伝したことが問題視され、発行停止処分を科せられた模様だ。
〔※訳注:アフマディーネジャード大統領とガーリーバーフ・テヘラン市長はともに「原理派」の人物であるが、極めて険悪な関係にあるとされる。ハムシャフリー紙はテヘラン市が発行する新聞であるため、ガーリーバーフ市長の意向に沿って、アフマディーネジャード批判を強めていたと考えられ、政府による同紙の発行停止処分は大統領とテヘラン市長の対立の結果であると思われる。かねてから両者はテヘランの地下鉄の運営をめぐって対立を深めていたが、最近アフマディーネジャード大統領はテヘラン地下鉄を政府管轄とし、アフマディーネジャード大統領の政敵アクバル・ハーシェミー=ラフサンジャーニー氏の息子で、現在テヘラン地下鉄の総裁を務めるモフセン・ハーシェミー氏を総裁職から排除しようと考えていたことが、政府・テヘラン市の対立をさらに強めたとされる〕

 報道によると、同紙は日曜日、一面の下半分に「旅の中で人生を経験しよう」とのキャッチコピーが付いた大きめの広告を掲載した。この広告は、複数の旅行代理店がインド旅行に人々を勧誘するために作成・掲載したもので、この広告に使われた巨大な写真が、ニューデリーにあるバハーイー教関連の寺院だった。
〔※バハーイー教は、19世紀にイスラームから分派する形で生まれた新興宗教で、「預言者の封印」(ムハンマドが最後の預言者であり、イスラームが神の最後のメッセージだとする、イスラームの基本原理)に真っ向から対立するため、イスラームでは異端とされ、イランでは特に外国の手先として歴史的に迫害・スケープゴートの対象とされてきた〕

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17980 )