Murat Yetkinコラム:緊張は深層部へ
2009年12月27日付 Radikal 紙

アルンチ[副首相暗殺未遂]事件の捜査に関して、刑事司法と警察がはじめて軍の本部の深層部にまで強制捜査を行った。エルドアン首相とバシュブー参謀総長が3時間会談した。

タイイプ・エルドアン首相の昨日(26日)の予定では、11時30分に、12月28日に行われる国家安全保障評議会(MGK)のメンバーである閣僚達との会合を行うはずだった。しかし、この会合は15時に始まった。なぜなら11時にバシュブー参謀総長とウシュク・コシャネル陸軍総司令官が首相官邸を訪れ、エルドアン首相と会談に入ったのだ。バシュブー将軍は2日前に週の定例会のために首相官邸に出向き、通常より長い2時間にも及ぶ会談を行っている。2日後の12月28日にも国家安全保障評議会が予定されていた。したがって、首相官邸からの説明が「国内外の問題(についての協議)」であっても、3時間続いたこの会議がPKKに対する広範囲な軍事行動と関係があるという可能性は低い。

会議は、特別軍司令部のアンカラ本部が刑事検察官と警察によって強制捜査され、朝まで続いた捜査の結果、8人の将校(その中には12月19日にビュレント・アルンチ副首相の自宅周辺で逮捕され、釈放された陸軍大佐と少佐も含まれる)が朝方逮捕された、その数時間後に行われていた。会合が昨日(26日)の午前中に決まったことは、(その影響で)中止が決定された会見、延期された会合からみて明らかだ。

この会合をどちら側が求めたのか?この重大な疑問に対しては首相側からも、参謀総長側からも的確な答えを得られなかった。もし、会合を首相が望んだのなら別の、参謀総長が望んだのならまた全く別の解釈をすることができる。会合は誰が、なぜ望んだのか?

迅速な会合を首相側が望んだのであれば、明らかになった新しい情報に関して、参謀総長から情報を求めたという可能性がある。参謀本部が望んだのであれば、特別軍司令官が強制捜査されたことによって生まれた現在の状況に関し、軍の意向を急ぎ伝えたかったという可能性がある。

以前に似たような曖昧さから、間違った解釈がされたことがあった。前参謀総長のヤシャル・ビュユクアヌト将軍が2007年5月4日に首相のもとへ出向き、(政府への)不快感を伝えたという報道をもとにさまざまな解釈が行われた件である。しかし、その後、エルドアン首相の方がビュユクアヌト将軍をドルマバフチェに呼んだという事実が明らかになり、この解釈は無駄な議論だったとわかった。

昨日(26日)の会合がどうして開かれたかの理由に関する最も詳細な情報は、「エルドアン首相がバシュブー将軍と木曜日に行った週の定例会でペンディングになっていたいくつかの問題を、国家安全保障評議会(MGK)の前に話し合うことに合意した」ために集まったというものであった。この会合ではPKKとの抗争だけが話し合われたのではなく、アルンチ[暗殺未遂]事件も話し合われた。印象では、アルンチ事件が国家完全保障会議で議論の対象にならないようにするために、この事前会合で特別軍への強制調査について話しあわれ、これは、おそらく参謀本部の要望で実現したのだろう。

とはいえ、この会合に陸軍司令官がなぜ参加したのかは理解ができない。特別軍は陸軍にではなく、参参謀本部第二司令官下にあるからである。(2003年7月4日イラクのスレイマニエでおきた[アメリカ軍によるトルコ軍コマンド拘束事件、いわゆる]、布袋(çuval)事件以降、特別軍は、作戦司令部から離され、第二司令部に直属している。)思い浮かぶ推測は、陸軍総司令官のコシャネル氏が次期参謀総長とみれらているため、この会合に参加した、というものだ。

しかし、会合がどちら側からの要望であったにせよ、会合がトルコで初めて、軍の本部が非軍事担当の検察官と警察によって強制捜査を受けた後に行われたという事実ほど重要なことではない。

■まず、国家諜報機構(MİT)、その後、特別軍

特別軍のアンカラ、キラズルデレ(陸軍総司令部真向かい、イノニュ通りの反対側にある地域)にある本部で行われた捜査は、トルコで軍の本部における―先にも述べたように、―検察官と警察によって行われた最初の捜査であった―これは別の言い方をすれば奇襲である。

検察と警察が12月5日に、同じく初めて(エルズィンジャンで)国家諜報機構(MİT)本部を強制をしていることを思い起こすと、軍本部で行われたこの初めての実質的な捜査は、表玄関からではなく寝室から始められたということも可能だろう。

特別軍はトルコ軍(TSK)の最も内密な組織のひとつである。特別軍の中の最も機密な機関は通信情報収集室(MAK)と戦争遂行研究機関Seferberlik Tetkik Kurulu(STK)である。特別軍と戦争遂行研究機関本部はこういう理由で軍の寝室にたとえられているのである。

昨晩(26日)行われた捜査で得られた情報の大部分は内密な事実だろう。この機密情報の中には戦争遂行研究部門が任務として集めた―それが表沙汰になることは安全保障上の問題になるほどの機密性をもつ―民間人のリストがあるのと同様、戦争遂行研究部門の任務外のこと、例えば政界の重要人物に関する情報のリストがあるという疑いもある。

そして、ここ2,3週間の出来事から、トルコで検察が軍と諜報機構の最も内密な部分へ強制調査を行うことができる、ということが明らかになった。

■罪に対する戦いか、内部対立か

このことをある方向からみると、犯罪と犯罪に対する戦いの前にはもやは障害物が残っていないと解釈することができる。EU加盟のための改革の影響もあり、トルコが法治国家にむけて一歩を踏み出したという証拠ともいえよう。

しかし別の方向から考えると、バシュブー将軍によって先週行われた「司法権の行使に注意せよ。組織間の緊張をうみ出す可能性がある」という警告や、同様にエルズィンジャンの逮捕劇の後、国家諜報機構次官のエムレ・タネル氏が、アブドゥッラー・ギュル大統領を始め、エルドアン首相やバシュブー将軍、その他の要人達へ苦情を訴えたことが思い浮かぶ。
バシュブー将軍は、軍に一般の司法権が及ぶ範囲を広げるという法律が国会で承認されたのを受けて、6月30日の国家安全保障評議会後にギュル大統領の招待でエルドアン首相と行った三者会談で、この法が、「軍の不可侵性を傷つけ、密告により軍本部が調査対象となりえる」との不安を口にしていた。(ラディカル紙、2009年7月5日、6日記事)
アルンチ事件を単なる「デマの密告」事件と見るのは正しくない。疑惑はかなり深刻だ。そして、犯罪調査において、非捜査特権をもつものがいてはならない。

一方で、司法の一部と警察が、軍と諜報機関に対して(なんらかの)「仕返し」をしようとして行動しているという、強い疑いも浮かんできはじめている。組織間の緊張は、この見方から生まれている。特別軍司令部が強制捜査されたことにより、国家のもっとも最も深い部分へ捜査の手が入ったことになる。

これに加えて、トルコの安全保障機構は互いに相手のことを暴露しあい、外国の情報機関がなすべき仕事を奪っている。国の重大な問題を解決する任にある政府には、この件が、自分たちにとって有利な方向に流れているからといって、(機構間の対立を)見ないふりをしているようなぜいたくはもはや許されていない。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:猪股玲香 )
( 記事ID:18153 )