Mümtazer Türköne コラム:「新オスマン人」
2010年12月16日付 Zaman 紙

ダヴトオール外相のとった外交政策は、二つの懐疑的グループから「新オスマン人政策」と捉えられている。第一のグループは、AKP(公正発展党)政府の強気の自己主張を懸念する米国とEU。第二のグル―プは、国民国家(トルコ国家)防衛という名のもと政府に戦いを挑む共和国主義者たち。この政府に懸念をいだく二つの勢力以外に、さらに頭を悩ませているグループがある。わが国の近隣諸国と、政府の外交政策が理解できない国内の民間企業である。

先々週のワシントン・ポスト紙で、ダヴトオール外相が行った会見での興味深い見解は、議論と懸念を白熱させた。見解には新旧二つの異なるトルコが描かれている。古いトルコとは「西洋と同じ方向性での確かな権威主義」であり、新しいトルコは「急速な経済成長と強力な地政学的野望を抱える民主主義」。米人記者の分析は「我々は何者か?」と語らせようとする類のものだ。この分析の中でトルコは、アフガニスタンで米国に協力し、対PKKでは米国の支援を確保する国であり、一方で米国の対イラン政策を妨げ、イスラエルと敵対する役者として捉えられている。そして記者はダヴトオール外相が語った言葉を以下のように取り上げている。「(ダヴトオール外相が)私に言ったのは、英国は旧植民地とともに英国連邦を形成しているのに、どうしてトルコにバルカン、中東そして中央アジアの旧オスマン領土でリーダーシップを新たに取らせないのか?」

これは紛れもなく帝国主義の幻想じゃないというのか?国内の共和国主義者らの反発はまだ本格的なものではない。「帝国主義幻想によって国民国家の根底が空洞化する」と要約できそうなこの反発は、共和人民党(CHP)が公正発展党(AKP)の外交政策を追及する際の主軸となる可能性が大なのだ。

政府やダヴトオール外相には本当に「新オスマン人」への幻想があるのだろうか?国内外で外相に向けられるこの問いに対し、ダウトオール外相はブルガリア訪問の際は「私自身も政府代表もこれまで一度もそういった表現をしたことはなく、今後もそれは変わらない」と返答している。また、富裕層クラブすなわちTUSIAD(トルコ経団連)での談話では同じ質問に対し「いいや、歴史は繰りかえさない。しかし歴史を無視することはできず、無かったことにもできない」と返している。いずれも同じ返答だが、それぞれ言葉を注意深く選んでおり、わずかに意味合いが異なっている。

オスマン人を新たに構築することは可能だろうか?まず概念における、歴史的な間違いを指摘する必要がある。「新オスマン人」は1860年代の最初の改革派・民主派知識人運動の名称である。ナームク・ケマル、アリ・スアーヴィ、ズィヤ・パシャなどの名前が挙げられる知識人反体制運動はこの「新オスマン人」という名前で思い起こされる。1890年代にはこの伝統は青年トルコ人という名前でもって引き継がれている。つまり「新オスマン人」という言葉は民主化要求に使われていた。では誰に対して?帝国に対してである。なぜなら帝国主義はその性質上民主主義とは相容れないものだからだ。民主主義は国民国家の中で成熟し発展する。従って、民主主義でもって実現し、民主主義を伴う未来を模索する政治運動が、帝国主義の幻想を追い求めることなど有り得ないのである。

ダヴトオール外相の「帝国主義幻想」として批判されている政策は、実は「国境開放」政策である。シリア・レバノン・ヨルダンをその中に含むこの政策は、中東地域を全体として包括する潜在的可能性を秘めている。この政策は、全ての人々が利益を保証する唯一の市場としてこの地域を統一する一方、国境が経済的観点からいかに人工的なものであるかを示している。この開かれた政治は同時に協力関係、安定、平和をもたらしてくれる。中東諸国がもっとも必要としているのはこれである。

旧オスマン帝国領の現在の国境は、「分断・統治(Divide and Rule)」政策に基づいてつくられた人工的な境界である。ハブルでビザ免除がなされたにも関わらずジルヴェギョズで列を作るTIR(長距離トレーラー)はこの象徴である。この地域がまず経済的統合、そして同時に文化的な融合を果たせるかは、川の前に立ちはだかるダムを取り除けるかにかかっている。このようにして人々は自分たちの自然な歴史的水路を新たに見つけ出し、安定を手に入れるようになる。トルコがこの地域でオスマン時代のような支配を手にすることは不可能であり、むしろ不要である。この地域に必要なのは平和であり、これは歴史的経験からトルコが構築し推し進めることができるものである。その名は新オスマン人政策ではなく、パクス・オトマニカ、すなわちオスマンの平和なのである。

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( 翻訳者:湯澤芙美 )
( 記事ID:20977 )