Hilmi Yavuz コラム:よく売れた本、よく稼いだ本
2011年05月11日付 Zaman 紙

「フォーブス」5月号に2010年に最も売れた作家ランキングが掲載された。一位は57万2千部を売り上げたエルゲネコン事件の容疑者、ハネフィ・アウジュ氏だ。トップ10のうち「文学者」と言える作家は、アフメト・ウミット氏、エリフ・シャファク氏、アイシェ・クリン氏、イスケンデル・パラ氏、オルハン・パムク氏くらいだろう。残りは10位のメフメト・バランス氏、13位のエルギュン・ポイラズ氏、15位のムスタファ・バルバイ氏、20位のネディム・シェネル氏のような新聞記者たちである。最後の3人がアヴジュ氏同様エルゲネコンの容疑者であることはご承知の通りだ。

新聞記者上がりの作家について言うことはない。私は本来の「文学者」としてランクインしている作家たちについて分析したいと思う。
本は当然一つの商品である―すなわち他の様々な商品同様に売り買いされるものだ。資本主義がものの使用価値よりも交換価値を優先した結果、本を占有するものは、使用価値を代表する「読者」から交換価値を代表する「消費者」へと変わった。マルクスが「資本論」の中で「物神崇拝」と定義した状態は、本で言えば「読者」が「消費者」へ変わったことに他ならない。以前書いたことをあえて繰り返すが、本もまた全ての労働生産物と同様に商品、つまり商品として市場に出回り、崇拝されているのである。ここで言う崇拝とは、人間の労働によって生産されたもの(ここで言わんとするのは本である)が、交換価値(本の価格)で捉えられているということである。物神崇拝は、交換価値を、唯一そのものの本質であるかのように見せる。本の価格がその本の本質となるのである。ジェラルド・コーエンの著作『カール・マルクスの歴史理論』流にいうなら、物神崇拝には二つの段階がある。一つ目は交換価値が物質的基礎(労働)から離れる段階であり、二つ目は交換価値がものの(本質)根源に帰する段階である。これにより、交換価値は単独でものの本質(あるいは根源)的状態に至るのである。市場は商品を崇拝する。ブックフェアは、ヴァルター・ベンヤミンの「パサージュ論」の表現を借りれば、崇拝された(物神となった)商品が「崇められる場所」である…。

ベンヤミンは、現在のトルコ書籍市場における物神崇拝に光を当てるような、非常に挑発的な確証を行ってくれている。「商品と呼ばれる崇拝物(物神)が、どのような宗教的儀礼と共に崇められるかは、その時々の流行が決めるのである」。まさにその通りである。本が、自身の労働から離れて交換価値に変換し、「流行」となったお陰で、たくさん売れることを喜ぶ作家たちは、物神崇拝が自身と自身の労働の産物である本の間に溝をつくってしまっていることに気付きもせず、書店に並ぶ消費者(読者ではない)の大群を満足そうな笑みを浮かべて眺めるのである。まさに他の商品と同じく、本が「流行」になり、「作家」の肩書きが「ブランド」に成り下がったことに危機感すら感じていないのだ。まさにこれっぽっちも!「作家」ではなく「ブランド」として、「読者」ではなく「消費者」と対峙しているということに何の不満も持っていない。本当に悲しいのはこのことである。

ベンヤミンの言葉に耳を傾けようではないか。「世界見本市は商品の交換価値を何倍にもする。それは利用価値が押し退けられた枠組みを作り出すのだ。そして人間が、時間を過ごす為に、その中身に没頭してしまうような奇妙な幻想を作り上げるのだ。娯楽産業は、人間を商品がもたらした秩序へと導き、この幻想を抱きやすくする。人々は自身や他人を別物にしてしまう楽しさを味わい、自身をこのような世界の導きへと委ねてしまっている」

経済政策の「使用価値」と「交換価値」といった概念を書籍業界に当てはめると、以下のようなことが見えてくる。ある文学作品で「質」を重視する使用価値は、「作家」と「読者」の関係に言及するが、本の商品としての「量」を重視する交換価値は、それが「売り手」と「消費者」になってしまうのだ。交換価値が量を重視するということは、本が文学的価値によってではなく、いくらで何部売れたかによって評価されることを意味する。作家が自身を「売り手」、読者が「消費者」として認識すれば、市場の法則に則したことになるし、「市場の人」になったことになる。それなら『もうひとつの声』という比類なき作品で、「もっとも売れるものは、文学作品ではなく商品である」と言ったメキシコのノーベル文学賞を受賞した詩人、オクタヴィオ・パスがこう加えている。「市場の論理は文学の論理ではない」。この言葉から得られる教訓があるはずだ。

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( 翻訳者:湯澤芙美 )
( 記事ID:22462 )