Jale Özgentürkコラム:岐路にあるトルコの労働組合
2011年10月04日付 Radikal 紙

正義労働組合連合の副事務局長、ムスタファ・パチャル氏は「労働組合として我々は分岐点にいる。私たちが変らないならば我々は歴史の1ページに埋もれてしまうだろう」と述べる

中核から労働組合員へ・・・母ミュシフィカ、父ユヌス・パチャルはトルコの困難な時代に石油労働組合連合の代表を務めたという。ムスタファ氏自身も27年間、労働組合員である。革命的労働組合連合でスタートした彼の労働組合人生は、正義労働組合連合と真正食品労働組合連合の副事務局長として現在も続いている。彼はトルコ労働組合連合、革命的労働組合連合そして正義労働組合連合が11月に開始する予定の総会に先駆けて、労働組合活動の将来について印象的な会見を行った。
さらに対峙する双方に協力し、批判の嵐を全ての労働組合の構造へ役立てた。労働組合活動は古いモデルのアプローチから抜け、新しい戦略を打ちたてる必要があるというパチャル氏は、「まず組合員を増やす必要がある。それから民主化と透明化が優先されねばならない」と言う。

世界の労働力市場では中国や極東の活動によって新たな局面を迎えている。労働組合における変化をどう説明されますか?
ILOの説明によれば、2008年経済危機の後の失業者数にはさらに4千万人が追加されたという。トルコでは出生率は低下していても、若干異なる状況があります。労働力率が非常に高い。毎年75万から80万人もの人が労働力に加わっています。この人々に雇用をもたらすためにはトルコ経済の毎年6~7%の成長が必須条件となる。この経済成長を創出すること自体も、可能に思えません。

それにもかかわらず、失業は大きな問題であり続けますか?
失業は実は、いまや恒久的なものになってきています。生産技術は発展し、生産性や労働システムは変化しています。市場での流通から脱落した古い仕事は急速に消えるのに、新しい仕事はなかなか出現しない。トルコ国民であればもらえるという国民収入(構想)やパートタイム労働、フレキシブルな労働時間といったテーマが議題に上る。失業者は、「生産」には居場所がないのに、「消費」はしなくてはならない状況です。

組合員の数は減っているのでしょうか?
世界中で労働組合の活動力が低下しています。世界中で生産技術や労働システムが変化しているからです。手作業に依存した労働力が求められなくなる一方で、サービス業部門は発展しています。農業部門の力も失われています。労働組合の目の前に、プラザ(デモ)と呼ぶ、私たちもあまり知らない場が設けられました。その間、公的部門の労働組合も民営化に伴って縮小してしまった。労働組合はこの新しい進展状況に対応する政策を作れなかったんです。

なぜ対応する政策が作れなかったのですか?この時代の変化が読めなかったということでしょうか?
公的部門における労働組合活動にはある種の官僚主義があります。労働組合の刷新や変化を受け入れる代わりに現体制の存続を選ぶのです。労働組合の構造は非常に反民主的です。組合は組合員には見知らぬ存在、体制批判がされなかったのです。

労働組合の将来をどのようにみていますか?
労働組合には伝統的に様々な異なるミッションが与えられてきました。現在、私たちは分岐点にいます。新しい道を描けるか、それとも歴史の1ページに埋もれてしまうのか。労働組合の財政業務から意思決定に至るまで新しいマネジメント文化を作る必要があります。労働組合による支配といった概念を撤廃しなければなりません。操られた労働組合活動というものはなくなるべきです。規則をはっきりさせていない労働組合もありますが、このような体制では労働者の要求を実現できません。

政府と労働組合の結びつきは危険な関係

政府と労働組合の結びつきは危険である。政府と共倒れになる。我々の失敗ももちろんある。しかし地方自治体の全ての人も正しい振る舞いをすべきだ。みなが政府、あるいは地方自治体の長と共に働いている。例えば、ヴァン県で平和民主党が勝利を収め、公正発展党が負けると労働組合の活動も終わってしまった。政府や政党の組合は利益を自分たちの周辺で利用している。これも労働者や労働組合活動に障害となっている。

新しい組織化の場、中小企業とそのサービス

階級の認識は変化するものであり、「アナトリアの虎」*は今では経済生産の基礎となっている。多くは中小企業であり、そこでは労働組合は組織化されていない。しかしながら労働組合の成長が求められるのはまさしくこの中小企業である。中小企業は労働組合にも、そして労働者にも閉鎖的な領域である。1960年代モデルで現在の状況を説明するのは不可能だ。以前より厳しい経済状況になっている。トルコでは人々は自身を階級によって認識はしない。

中国スタイルの資本主義は社会的費用を増加させた

トルコ産業家・企業家協会の発表したレポートによると、2050年にはトルコの人口は1億に達するという。トルコの若年労働力の潜在力も強みとしている。ところが実は、インフォーマル部門は基準外の非常に厳しい労働条件という重大な危険をはらんでいる。疲労を伴う職業病や若年者の老化、労災など。将来を破壊するような起業家や投資家は無意味である。つまり、中国スタイルの資本主義には何ら意味はないということだ。

世界の労働組合の加入率は20%だが、トルコは5%

世界の労働組合活動の中で、ICUと呼ばれるアメリカに本部を置く労働組合がある。モスクワを代表する別のユニオンでは1億人近くの組合員を擁する。世界では25億の労働者がいるが、労働組合に加入している人は6億から6億5千万人ほどである。トルコでは2600万人の労働者の労働力がある。しかし労働組合に加入している人の数は実数で60万から70万人に過ぎない。世界では労働者における労働組合員の割合は20%であるが、トルコではたったの5%である。

新労働組合法に関する4つの質問

1.新しい法律をどうみますか?
基本的な基準としてはトルコの労働組合法とILOの基準をあわせることが必要だ。トルコ労働組合連合は現行法からの変更をそれほど望まなかった。一方でILOがあり、他方では9月12日労働組合法がある。新法は少なくとも現状から一歩先へ進むべく行動を促すことになる。政府は我々の強い要望からではなく、ILOの労働組合の権利に関するブラックリストにトルコが入った結果、ようやく動いたのだ。

2.どのような変更が加えられたのですか?
国会が夏季の閉会になる前にこの法案は国会に提出された。法案では28の業種が18に減っている。例えば、航空業と陸運業は物流業にまとめられる。法案が成立していないがゆえに定数規制の問題が生じていた。現在、連合に加盟する労働組合においてはこの定数規制が適用されないよう方法が模索されている。ILOが明確に示しているように、団体交渉に際して定数規制はあり得ない。1人が望むにすぎないとしても、組合員になれるのだ。

3.新しい法律は労働組合の構造を変えることができるでしょうか?
労働組合における変化はいつもその姿形を変えるだけだ。しかし、そうではなく戦略を変える必要があるのだ。3つの労働組合連合が一堂に会し、新しい政策を作り出す必要がある。それなのに、我々は集まってシンポジウムを開くこともできずにいる。労働組合連合は腰を落ち着けて世界の経済、社会のトレンドがどういう方向に向かっているのか、また労働組合の内規はどうすればより民主化されるかなどを議論しなくてはならない。組織(化)の構造を変える必要がある。

4.退職手当の問題はどうなりますか?
トルコ労働組合連合は「退職手当をちらつかせるのは、我々にとってストライキの要因になる」と言う。トルコでは180万もの企業があるが、そのうちの8割が中小企業だ。巨大企業はもともと自身の銀行を所有していてこういったシステムは確立している。正義労働組合連合が言っているが、獲得している権利を守ろうではないか。ところがトルコでは、労働者のたった7%が退職手当を得ることができるに過ぎない。必要なのはシステムの変革だ。


*90年代半ば頃までに著しい経済発展を遂げた地方都市に対し、世銀の「アジアの虎」に倣ってつけられた呼称。後にその地方都市の企業家も含めて指し示す呼称となった。

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( 翻訳者:金井佐和子 )
( 記事ID:24164 )