Eyup Can コラム:トルコはなぜ、イスラエルの支援を断ったのか
2011年10月25日付 Radikal 紙

トルコは、イスラエルもしくは他国の支援を必要としないかもしれない(注)。しかし、国家間の関係を好転させる必要はあるのだ。

[訳者注:この報道は10月25日のもの。その後、トルコは各国からの支援の受入に動いた。]

昨日(24日)イスラエルの各紙一面にはヴァン地震の記事が躍った。
ヴァンで発生した悲惨な災害は、イスラエルのみならず世界のメディアで最重要話題の一つであった。
しかしある点だけが違っていた…。
世界のメディアがより災害の激しさの方に焦点を当てたのに対し、イスラエル各紙はトルコ・イスラエル関係の側面から報道した。
例えば、ハーレツ紙は「アンカラ政府、イスラエルの支援申し出をつき返す」という見出しで報じた。
イェディオト・アハロノト紙は、イスラエルの支援申し出に対し、トルコが「ありがたいが、我々は自分たちで解決する」と返したと書いた。

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イスラエルのペレス大統領とトルコのギュル大統領の支援についての会談と、ネタニヤフ首相の「トルコが2010年の森林火災で我々に援助を送ったように、この困難に際して彼らも我々の支援を受け入れてくれるだろう」という発言が、イスラエルの報道で非常に多く扱われた。
しかし、私にしてみれば、最も注意を引く発言はエフド・バラク防衛相のものだ。
バラク防衛相は一方でイスラエル軍に対して救助活動のため「準備せよ」と指令を出したが、他方では「トルコは絶対に我々の支援を望まない」と発言した。
まるでトルコ・イスラエル関係の要約だ!
このためであろう、国際的な支援の申し出を断るトルコの発言がイスラエルメディアでは広く取り上げられた。
「ほらみろ、我々は人道的観点から援助の手を差し伸べた。しかし彼らは受け入れなかった!」と。

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では、ほんとうにそうなのか?
昨日イスラエル人の記者が電話で質問しなかったら、私もこれほどこの件に留意しなかっただろう。
私は彼にもこう言った…。
「はい」であり、「いいえ」でもある。
「はい」、なぜならトルコはイスラエルの強い支援申し出を実際に拒否した。
しかし「いいえ」、なぜならトルコはイスラエルだけでなく、ギリシャ、イラン、イギリス、日本、アメリカを含む30近い国々による人道支援の申し出を「感謝するが現時点で必要はない」と断った。
アゼルバイジャンとパキスタンという例外があるものの、外務省の発表によれば、これらの国はトルコに連絡する前に支援チームを出発させたという。

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実際ここでそもそも考えるべきことは次のことだ。
イスラエルが「人道的態度でもって」自然災害を政治的関係軟化のためのチャンスに変えようとしていることは明らかだ。
同様の窺いがアルメニアにもある。
しかしまた、トルコは1999年のマルマラ地震とは異なり(マルマラ地震後には日本からイスラエルまで多くの国が救助チームを派遣した)、ヴァン地震の被害から自力で復旧できると考えていることも明らかだ。
見てほしい、東も西も、ヴァンの復旧のためにトルコ全土が集結しているではないか…。
インターネット上に出回る精神病者の嫌悪的メッセージに反して、悲しみに満ちた都市ヴァンはトルコを一つにした。
政府の対応は迅速だった。
エルドアン首相は即座にヴァンへ行った。
共和人民党クルチダルオール党首、平和民主党デミルタシュ党首もこれに続いた。
民族主義者行動党バフチェリ党首もそこにいれば良かったのだが。

***

自然災害は我々に、我々が皆人間であるということを悲惨な形で思い起こさせる。
ある被災者が言ったように、「死体を巻く布に色は無い」。
痛みは国内問題も、国際問題も軟化させうる。
現段階で、トルコは、イスラエルもしくは他国の支援を必要としないかもしれない。
しかし、国家間の関係軟化が必要であることは明らかである。
また、非政府活動を行うイスラエルの市民救助チーム「FAST」は、トルコでの提携団体と多くの共同救助活動に参加した実績があり、是非と、いってくれている。
彼らは、「2国の政治は我々に関係ない。チームは準備ができている。トルコの提携団体が必要といえば出発する…」と言う…。
おそらく外務省はFASTチームには「今は必要ないが、少しあとで」とは言わないだろう。

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( 翻訳者:吉岡春菜 )
( 記事ID:24346 )