Ismet Berkan コラム:問題は、時間のかかる裁判プロセス
2012年01月21日付 Hurriyet 紙

そう、トルコでの裁判における、国民にとっての最大の問題点は、時間がかかることである。先週、数値でもって例を挙げた。特任検察庁では、取調べにかかる平均日数は648日で、犯罪裁判における検察庁での平均取調べ日数は、合計310日だ。

これらは受け入れがたい数値である。

考えてみてほしい。あなたは何らかの理由で容疑をかけられるが、あなたについての起訴状が作成されるまで、又は検察が「起訴条件はない」と決定を下すまで、310日かかるのだ。

約1年である。

その後は?取調べ、つまり、裁判というプロセスがある。特任裁判所では、この期間は248日にもなる。

これらは、裁判に時間がかかっていることで、国民が困難な状況に陥っている数値的証拠である。

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さらに、この続きもある。取調べの次は、必ず上訴がある。これに関する平均的日数はないが、最高裁判所における負担は明らかだ。

また、最高裁が上訴を却下すれば、再びゼロからのスタートとなる。2回目の上訴となれば、プロセスは更に延びることになる。

一方で、公平を扱う仕事、特に裁判は、急いではならない。

アクセルを踏んでスピードを速める車ではないのだから。

では、どうすれば、公平が保たれ、且つ、国民が困難な状況に陥らないように裁判のプロセスを速められるか?

法務省は先週、裁判のプロセスを速め、国民を困難な状況に立たせている項目を見直すため、ある方針を発表した。

ひとことで言えば、この方針によって犯罪裁判のプロセスが速まるということは不可能に思われる。もしろん、最高裁にとって大変な重荷となっている破産裁判の数は減るだろう。しかし、犯罪裁判への効果には限りがある。

犯罪裁判のプロセスを速める、正しくは、裁判の件数を減らし、各裁判所や最高裁が各自の裁判案件について適切な裁きを行うようにするためには、もっと徹底的な改変が必要である。

ここでいう徹底的改変の筆頭には、検察官に対して(もちろん判事の監督下において)告訴(の有無を決める)交渉の可能性を与えることがある。

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もうひとつの徹底的改変はと言えば、検察官の取調べ期間を短くする、強力な対策を講じることである。はっきり言えば、取調べ期間に制限を設けることである。

もちろん、この延長線上には、立件するかしないかということに関して、検察官にもっと広い意味での主導権を持たせる一方で検察官の説明責任を確保しておく、ということがある。

■告訴交渉システムによる負担軽減

毎年300万ほど、新たな犯罪裁判案件が起こっている。この大部分は、裁判を起こすまでもなく解決できるものである。

これらについては、検察官が取調べをし、その後弁護士と共に刑罰に関する交渉を行うことができる。裁判を起こさなくても、ある刑罰を受け入れるという状況がおこる。アメリカ、イギリスなどの国ではこのシステムが適応されていて、犯罪裁判案件のうち90%はこの段階で終わっている。

こう考えてみてほしい。オギュン・サマスト容疑者は、そもそも、フラント・ディンクを殺害したことを全く否認しなかった。そのため、この殺人事件は、1ヶ月も経たないうちに、裁判にもかけられずに終わり、このために5年間も待つ必要はないはずであった。しかし他方で組織捜査とその裁判は従来どおり裁判所で審理を行うことができたはずだ。

もう一度数値を思い出してほしい。検察官らは100人に関して約310日間取り調べをしている。そして、この100人のうちたった50人に対して裁判を起こしている。裁判にかけられた50人のうち、さらにたった17人が有罪判決を受ける。

告訴交渉システムは、不必要な裁判や不必要な取調べの排除のために、とても意義のあるシステムとなるだろう。

しかし、告訴交渉システムたったひとつだけでは、十分でない。このシステムを、検察官らが強い主導権を握り且つしっかりとした形で説明責任を取らせるシステムと合わせて運用すべきだ。

■取り調べ期限の設定

検察官に関する法律を改定し、犯罪の種類によって、最長取り調べ期間を設定することもできる。

主には先進国、特にアングロ=サクソン系の国々では、検察官は、警察がある容疑者を逮捕したほぼ直後に、起訴状を裁判所に提出している。

もちろん、これを実現するためには、法律面の基盤をしっかりと作らなければならない。

特に組織犯罪において、検察官は取り調べに期限がないのをいいことに気楽に振舞っている一方、被告人を困難な立場に立たせている場合がある。被告人の苦労を排除し、検察官に速く質の良い取り調べをするようプレッシャーをかける必要がある。

この点に関しても、検察官が(案件の)軽重をわけ強力な主導権を握ることを促せば、多くの案件を裁判にまで持ち込まなくてすむようになる。

しかし、このシステムには監視が必要だ。そのため、検察官による立件の有無に関して、本当の意味での説明責任を問える状況を作らなければいけない。

検察官の説明責任は、今後の最も重要な議論点となるに違いない。

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( 翻訳者:津久井優 )
( 記事ID:25293 )