スンナ派・シーア派・世俗派―中東の分断?
2012年01月30日付 Zaman 紙

公正発展党(AKP)は、エジプトで47%を得票し政権についた自由公正党の代表団に「世俗主義の教え」を説いたという。(スター紙、1月28日より)

ダヴトオール外相もテレビ局アル・アラビーヤの取材に「トルコは、民族もしくは宗派による分裂には、それがいかなるものであっても反対する。トルコは世俗的な政治形態を支持している」と語っている。(habervaktim.com、2012年1月22日より)

ここのところ世俗主義が強調されているが、これをエルドアン首相がエジプト、チュニジア、リビアを訪問した際、新政権に「世俗的憲法」の制定を勧めたことと絡めて考えてみると、トルコが「世俗主義を主張」しているのは地政学的な狙いによるものであることが分かる。

トルコにおいて共和国建国から今日まで、世俗主義政治は強制的な概念として問題となってきた。我々に世俗主義を課した者たちは、オスマン帝国とイスラムの 歴史の中では宗教や宗派の争いによって集合体が破壊されたことは無いとを知っていた。西洋に世俗主義を必要とするいかなる政治的・宗教的理由があったにせよ、我々の歴史の中ではそのようなものは一つもなかった。今日も存在しない。にもかかわらず、西洋は新しいトルコ共和国にこの概念をほとんど押しつけるよ うにして課した。この一環で数多くの改革が行なわれたが、世俗主義は1937年になってようやく憲法に記された。

世俗主義は、新しい共和国が建国の対価として西洋の国々と交わした二つの約束を保証するものであった。二つの約束とは、新しいトルコはイスラム王朝であった過去に戻らないこと、イスラム世界との連帯(イスラムの統一)を意図しないことである。

今日、中東では根本的な変革が起きている。西洋同盟の一員としてトルコには中東で調整役を担うことが求められるとされている。しかし中東は昔とは違い「宗教以外の影響力」に開かれていない。1979年イランでイスラム革命が起きた。イランは一方で法制度をイスラムのシャリーアに照応させ、他方ではアメリカとイスラエルに対抗し中東におけるイスラムとムスリムの守護者に変身した。しかしイランは君主制から共和制に移行する際、大統領は「シーア派」から選出されると憲法で定めた。このため、必然的に中東でシーア派を代表するイスラム共和国として見なされるようになった。したがって「スンナ派世界をまとめ、スンナ派イスラムを代表できる力」を対抗者として据えることが、イランを牽制する手段となった。昨年までトルコがイランに対抗しスンナ派という軸で中東を束ねるだろうと考えられていた。したがって、トルコの「イスラムと世俗主義」もしくは「イスラムと民主主義」を融合させた経験は、付加的なアドバンテージだった。

しかしこうした構想は今となってはあまり有用でないことが分かる。なぜならチュニジアとエジプトで自由選挙によってイスラム系政党が政権についたことで、 こうしたトルコの役割に大きな疑問が生じたからである。もし「イスラムと民主主義」が融合するとするならば、それを可能にするのはチュニジア人とエジプト人だろ う。というのもイスラム系政党が自由選挙で政権についているが、彼らは多党制、法の優位、言論の自由に異議を唱えていない…などと考えられるからである。

「イスラムと世俗主義」に関して。中東の人々や政権についた新政党のメンバーたちは、あまりこれに魅力を感じていない。なぜなら権威的・抑圧的な体制下においてさえ、国家は社会的生活 ‐市民の領域‐ を宗教や宗派に従って組織しており、個々人の私的な規範や、市民の生活に干渉していなかった。つまり世俗主義を必要とする物理的理由は存在せず、問題はあくまで体制の民主化であった。そして今それが実現しようとしている。

こうした状況の中でもし「シーア派イラン」に対しスンナ派の役者が必要とされているならば、それはこの「世俗派トルコ」ではなく、スンナ派の本家であるエ ジプトでありうる。トルコの主たる任務は、「スンナ派」ではなく「世俗派」にある。サウジアラビアのワッハーブ派もしくは厳格なサラフィ派がシーア派の拡大を阻止できない場合は、エジプトのイフワーン派や穏健なサラフィ派がその機能を果たしうる。この新たなコンビネーションに対し、トルコは「第三軸」 の立場を得るだろう。つまり世俗主義を売りにしてイニシアチブを取りうる。中東は「シーア派イラン」、「スンナ派エジプト」、そして「世俗派トルコ」とい う三つの極に集まりつつある。トルコの保守政権は、エジプトとアラブ諸国に対し執拗に「世俗主義」を強調することで、後援者の地位を逃すまいとしている。 私に言わせればこれは徒労だ!

さらに中東がシーア派、スンナ派、世俗派という主たる三極に分裂し競り合うことはイスラムとムスリムのためになるまい。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:25391 )