建築家シナンに関する都市伝説、否定するのは容易ではない
2012年03月04日付 Zaman紙

どの検索サイトで、「400年後への手紙」と検索しても、99%の確率で下記の文章がヒットするだろう。

ネット住民はだまされやすく、すぐに信じこんでしまう。特に、それが国民の誇りや意識を呼び起こし、祖先がいかに聡明で先見の明があったのか尾ひれがついていれば、つまり、私たちが昔から持っている劣等感の一端に触れていれば、よく考えたり調べたりせずに、そのことを信じ込んでしまう。これだけにとどまらずに、「みんなこれを読み、教訓とするべきだ。かしこまり、自己を律すべきだ」と言って、善行として共有する。

その文章はそのようにさせる類のものなのだ。事前に注意しておくが、すべてを「一体本当なのか?」と疑いながら読み、いたずらで書かれた可能性を無視せず、批判の目を持ちながら見てほしい。

■建築家シナンからの手紙

この文章だ。文章というよりは伝説である。

90年代に、建築家シナンの作品の一つであるシェフザーデバシュ・モスクの補修工事を行っていた会社の建築技術者が、モスクの補修工事の時に起こったある出来事を、テレビで以下のように説明した。
「モスクの庭を取り囲む壁に扉があり、扉の上は石でできたアーチになっているのだが、その石のいたるところが崩れていた。補修計画には、このアーチの補修も含まれていた。私たちは建築学部で理論としてアーチの造り方を学んだが、石のアーチを造った経験はなかった。そこで、アーチの補修の仕方について職人たちと相談した。その結果、アーチを下から支える板型を打ち込むことになった。その後、アーチをゆっくり抜き、建築技術についてメモを取り、修復の際にこのメモを参考にすることにした。型を作り、アーチの楔石から抜き始めた。石を取り出すと、驚いたことに、二つの石のつなぎ目にあった円柱型の隙間にガラス瓶が嵌め込まれているのを見つけた。瓶の中には巻かれた白い紙があった。私たちは瓶を開け、紙を見た。オスマン語で何か書いてあった。すぐに専門家を見つけて読んでもらった。これは手紙で、建築家シナンによって書かれたものだった。こう書かれていた。『このアーチの石の寿命は、およそ400年である。その間にこの石は劣化するため、あなたたちはこのアーチの補修を望むだろうが、かなりの確率で建築技術が変わっているだろうから、このアーチの修復方法がわからないだろう。そこで私は、このアーチをどう造るかを説明するため、あなたたちにこの手紙を残す。』

偉大なシナンは、手紙をこのように始めた後、そのアーチに使った石を、アナトリアのどこから採ってきたかを書き、詳細にアーチの造り方を説明している。この手紙は、ある建築物や行った仕事を永遠に残すためになされる、超人的な努力の一例である。この手紙の偉大さは、現代人でも判断が難しい石の寿命を知っていた、建築技術が変わることを知っていた、400年もつ紙とインクを使用した、という高水準の知識から来ている。疑いなく、この高水準の知識も、その偉大な建築家の常人が到達できない特徴の一つだ。しかし、到達するのが本当に難しいこれら知識よりも素晴らしいのは、400年後に向けて解決策を授けるシナンの責任感である。」

このような伝説に、無鉄砲に熱中してしまう人なら、あなたはどんなに幸せか。しかし、「もしかして誰かが私を騙しているのでは?」と疑う人なら、よければ一緒にいくつかの質問への答えを探そう。

質問:その話は誰が話しましたか?
答え:あるテレビ番組の視聴者が話していました。
質問:ではその人は誰から聞いたのですか?
答え:起こった出来事をテレビで話した建築技術者からです。
質問:その建築技術者とは誰ですか?
答え:不明です。
質問:では、それがいつなのかは分かっていますか?
答え:えっと、90年代とおおよそ言われています。
質問:場所はどこですか?
答え:シェフザーデバシュ・モスクです。

ここで注意したいが、そのモスクの名前は間違いである。シェフザーデバシュ・モスクというモスクはイスタンブルにはない。シェフザーデバシュ地区にはシェフザーデ・モスクがある。これは重要なことだろうか。そうでもないが、すでに忠告はしてある。すべてのことに注目せよと。実際、少しあとになるとモスクの名前が変わり、スュレイマニイェ・モスクになってしまうのだ。

■そもそも石アーチの造り方を忘れていない!

どこからこの問題は出たのか。申し上げよう。私には、歴史問題、またそれよりも歴史の研究手法の問題に非常に関心があり、厳格なまでに注意深い親友がいる。彼は、同窓生と連絡を取り合っているメーリングリストに、この手紙の信憑性の程度について疑いを書いて送った。仲間からの返事で、手紙は偽物ではなく芸術史界で名の通った有名な建築家によって発見され、その上その建築家がこれについてのドキュメンタリー撮影で先駆者であると知り、親友は動揺した。親友の友人は、その話が本当であることを次のように主張している。

「その建築家はトルコで最も優れた補修ができる人のうちの一人だ。多くの重要なオスマン時代の建築物の補修工事で重要な役割を果たした。私は彼のことを知っている。TRT3チャンネルでこの問題に関するドキュメンタリーを制作して放送し、私もそれを見た。ドキュメンタリーに出てきたオスマン語の文章を、専門家の一人がラテン文字に転写していた。私が彼とコンタクトを取ろう、彼に手紙のコピーをお願いする。」

さてここで一休みしよう。私たちのうち誰が、何十もある似たような都市伝説の一つについて、本当であるかどうかをわざわざ真剣に調べようとするだろうか。私の親友はそんな人である。彼は友人に以下のように返事を書いた。「本当に理解に苦しむ。私たちは物事をなんと簡単に信じているのか。私がこの問題で口を閉ざす唯一のものは、手紙そのものである。あるいは、たとえばトプカプ博物館にある文書のカタログ番号に対してもそうだろう。私の調査では、その建築家とこの手紙を結びつけるような情報にはたどり着けなかったが、君はほとんど確信しているみたいだ。これほど君を確信させているものが何であれ、私にも見せてくれるとうれしい。なぜなら、君の返事を受け取ってから、知り合いの二人のオスマン史家に電話をした。君のおかげで彼らは私と軽い冗談も言ってくれた。そして手紙を見つけて、見てみようと言った。」

上でも述べたように、私の親友は研究手法について少し過度なくらい敏感である。彼はわが国の有名な建築家に電話をしたのだが、電話での会話で彼が何を知ったかを見てみよう。

芸術史家でもあるその建築家はとても特別な人で、名前が出ると私は息をのんだ。と言うのは、この話の紹介の仕方にどれほどポピュリズムの香りがしても、(事実かもしれないという)扉を開いておくことはいつもいいことだからだ。似たような都市伝説で、レオナルド・ダ・ヴィンチが当時、レストランを開いたというものを聞くと、私はあっけにとられたものだ。その後、それを話した人がいくつかのイタリア語の文献、絵画、さらには料金表を見せると、ことは変わった。その主張の持ち主は、有名な歴史家で、スペイン語とイタリア語ができる。要するに、建築家シナンの手紙の件は私を不安にした。耐えられず、私はその芸術史家である建築家の電話番号を見つけ、彼と電話で話した!とても礼儀正しい男性で、私にその出来事を説明してくれた。70年代に《でも90年代だったのでは?》、メルスィン県で、ある補修工事をしているとき、職人からこの噂を聞いたそうだ。この職人の父親も、イスタンブルのスュレイマニイェ・モスク《シェフザーデバシュ・モスク、正確にはシェフザーデ・モスクだったのでは?》の補修工事で働き、そのころに他界した職人らしい。彼は建築家シナンに心酔していて、毎年彼の魂のためにコーランを読んでいたそうだ。彼は父親に、なぜ毎年建築家シナンの魂のためにコーランを読むのかと尋ねると、父親は彼にその出来事を話したそうだ。アーチのキーストーンのところで手紙を見つけたことを…。

建築家はその話を聞くと興奮し、少し調べてみたくなったそうだ。「手紙を見つければ、絶対これを放送するのだが」と彼は私に言った。しかしことは進まなかった《つまり、そんな手紙はないのだ!》。建築家は、これを子供の遊びのようにペンに取り、子供たちへ責任感を教えるための良い例になると考えたそうだ。その計画は大きな関心を引いたらしい、70年代か80年代に、TRT3チャンネルのドキュメンタリー番組でこれが扱われた。建築家が言うには、「これには学問的な側面は確かにないし、ここまで広まるとはもちろん思っていなかった」。また冗談で、「知っていれば、自分がもっと得するものを広めたよ」と付け加えるのを忘れなかった。さあ、物語から教訓を得よう!

「こんなに素晴らしい伝説なのだから、本当ならいいのに」と言いたくなるが、ちょっと待ってほしい。そもそも私たちには、このような伝説や間違って理解された噂は必要ない。しかし、そろそろ確認しておこう。

1-伝説は、真実よりも魅力的で、長生きだ。
2-建築家シナンだろうが、他のオスマン時代の建築家だろうが、彼らが用いた建築技術はそんなに不可解で、理解し得ない性質のものではない。手に入れられないものは、建築家シナンの師匠と弟子が習得したプロポーション(比例、均斉)と、美に対する理解力である。素晴らしいことに、私たちは石のアーチの造り方を忘れていないのだ、これを再発見する必要がどこにある?発見されるべきは、シナンの芸術への見解そのものである。
3-脚色された話は、真実よりも重要視されてしまうものだ。

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(翻訳者:菱山湧人)
(記事ID:25735)