Orhan Kemal Cengizコラム:不完全な9.12(1980年クーデター)裁判
2012年04月06日付 Radikal 紙

9.12裁判が、十分に深く、広範囲に及んで行われていたら、それぞれに関連性のある3件の異なる裁判が開かれるのを目の当たりにすることができたであろうに。
1981年に米国の首都を訪問したアルゼンチン人大将のロベルト・ビオラ(大統領)は、全世界で軍事独裁者たちが自分たちを弁護するために使ったあの有名な主張を持ち出した。「成功を収めた軍は裁かれない。」
ケナン・エヴレンが、クーデター後に成立した「政権」は裁かれないと主張したように…。エヴレンは、世界の別の場所で、過去によく使われ、有罪の宣告を受けてきたこの「弁明」路線を続けている。事実、ロベルト・ビオラは、ワシントンでこの演説を行ったたった4年後にアルゼンチンで裁かれ、投獄された。
ケナン・エヴレンの弁明自体、9.12裁判が始まることがいかに重要であるかを示している。実際に、他のクーデターと同じように、1980年9月12日のクーデターも、新たな立憲体制を生み出した。そして今日、9月12日が生み出した「立憲体制」が否定されたのである。この観点から、この裁判はトルコにとっての転換期となる。未だに憲法がガラクタの寄せ集めのような状態であるとしても、9.12裁判と共に1980年クーデター体制は終わることになる。
裁判自体も、他のいくつかの観点から重要である。未だにクーデターを起こそうと思っている人がいるかどうかは分からないが、この裁判はおそらく、すべてのクーデターをもくろむ人々に、(クーデターに)成功したとしても、何年も経ってから裁判にかけられる可能性があることを示した。この裁判を意味あるものにしている別の理由は、現政権下で初めて、現政権そのものを標的にしないクーデターが裁かれることである。この観点から、1980年クーデターが裁かれることは、エルゲネコン裁判とは一線を画している。
次は裁判の問題点について…。9.12裁判が、十分に深く、広範囲に及んで行われていたら、それぞれに関連性のある3件の異なる裁判が開かれるのを目の当たりにすることができたであろうに。
1つ目の裁判は、クーデターの準備のために起こった集団虐殺及び挑発が裁かれることになる裁判であった。この裁判の中心には、特別軍事局とそのシンパであるファシスト的な市民が行った非人道的な罪がくるはずであった。1977年に「血まみれの5月1日」から始まり、アレヴィー大虐殺まで続く一つのプロセスについて私は述べている。裁判のこの部分は、本来は、ドアン・オズが執筆しようとした際に殺害されたという告訴状が仕上がることを意味するはずであった。オズは、作り出された混とんとした状況の中での特別軍事局の中心的な役割を突き止めていた。しかし、9.12裁判の告訴状では、特別軍事局の名前すら出て来ない。
2つ目の裁判は、クーデターそのものが裁かれる裁判になるはずだった。3つ目の裁判では、1980年クーデター以降、普通にそして組織的に行われるようになった拷問をふくめ、いわゆる「非人道的な罪」が裁かれるもう一つの裁判を目の当たりにするはずだった。もちろん、エヴレンとシャーヒンカヤは、この3つのどの裁判でも被告人として裁かれるはずであり、他の何百人もの容疑者が裁かれるところを目にするはずであった。
私がこの文章を書いているこの瞬間にも、裁判の第2回公判が続いており、裁判所は、まだ補助参加の要請について決定を下せないでいる。この裁判がどれだけ深く追求されるかという点においては、補助参加や裁判の拡大要請が、どれほどの規模で、どの範囲で受け入れられるかが、決定的な役割を果たすことになる。
しかし、第1回公判で告訴状がこれほど表面的な範囲でしか扱われなかったことで、その後解決が非常に困難になるいくつかの問題を生み出したことは明白である。例えば、先述したような、特別軍事局や1980年クーデター以前の虐殺が裁判の中心になるような一つ目の裁判、9.12裁判が行われていれば、被告人席に座るはずの人たちが「補助参加」要請をするのを我々は目にしたであろう。もちろん、この人たちが前述の一つ目の裁判、9.12裁判で「虐殺者」及びゲリラ掃討組織(kontrgerilla)のシンパとして裁かれ、前述の3つ目の9.12裁判で、拷問を受けた「被害者」として裁判に参加することも可能だった。しかし、彼らをただの「被害者」のように見立てるこの裁判が、我々に真実の全てを語っていると言えるだろうか。
このようなことを考えながら、9.12裁判を苦虫をつぶしたような顔で、でも楽しみながら見ている。これらの問題のいくつかは、裁判を続ける過程で乗り越えることができると期待している。
追記:9.12裁判のため休んでいるアルメニア問題に関するコラムの第3回を月曜日に掲載するので読んでください。

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( 翻訳者:田辺朋子 )
( 記事ID:25991 )