大統領の地震対策:テヘラン市民、500万人移住計画はいずこ?
2013年03月05日付 Mardomsalari 紙

【政治部-モハンマドホセイン・ラヴァーンバフシュ】
 今から2年前、1389年(西暦2010年~2011年3月)は政府閣僚らが、地震対策とテヘラン市民500万人移住計画を盛んに取り上げた年だった。

 この一連のトピックは 同年第1月 〔2010年3月~4月〕に始まった。そして、同年最終月15日〔2011年3月6日〕、マフムード・アフマディーネジャード大統領は植樹祭の式典でテヘランでの大地震発生を懸念して、次のように述べた。

万が一にもテヘランで事が起こったとき――専門家は地震発生は確実だと言っており、また、我々はそのようなことが起こらぬよう願っているのだが――、市の責任者たちは、テヘラン南部地区つまり15・16区(訳注:いずれも人口過密地区)をいかにして管理下に置き、迅速な対応を取ることができるというのだろうか。そうした場合、これらの地区へ到達する経路は封鎖されてしまうのだ。どこにこれを打開する方法があるというのだろう。我々は革命的な決定を下し、革命的なプランを断行しなければならない。都市建設モデルにおいて変革を引き起こすのだ。そして、20年先も我々の子供たちはより快適に暮らすべきであり、生活にかかる費用も軽減されるべきである。

 この一連の議論の始まりは1389年の第1月17日〔2010年4月6日〕であった。アフマディーネジャード大統領はテヘラン西部にあるバシャーラト[吉報]非常災害時居住用仮設テント村で救急隊員や支援部隊を前に演説した際、テヘランでの地震発生を現実のものとして捉える必要性を強調した上で、次のように述べた。

いつ地震が起きるかは定かではない。しかし、複数の自然条件から判断し、テヘラン直下の地震は確実に起きると言えるだろう。

 大統領は、さらにこう続けた。

テヘランのある高位のイスラーム法学者が、私に、人々に常に備えているよう呼びかけよ、と述べられた。また、人々も罪を犯さぬように努め、厄災が遠ざけられるよう祈るとともに、 テヘラン市民に地震や建物の耐震強化に真剣に取り組むよう望んでおられる。〔…〕もし地震が発生すれば、フィールーズ山からナザラーバードまでが被害を受け、その範囲は広大なものとなるだろう。

 その5日後、アフマディーネジャード大統領は、革命住宅財団のトップや責任者ら と会談し、テヘランは気候問題や環境汚染問題などで重大な被害に晒されていると明かした上で、次のように述べていた。

我々が気候の問題を解決する際に、地震の問題にどう対処すべきだろうか。テヘランは明らかに活動期にある断層の上に位置している。人々の祈りと神のご加護でその活動は引き延ばされてきたが、今後も地震が起きないという保証はないため、我々には、科学と論理的思考に基づいて決定を下す義務がある。私の行った試算では、災害時にテヘランを混乱なく管理下に置き、救助支援活動を行うためには、最低でも約500万人をテヘランから移住させなければならない。

 大統領の発言に対し、テヘラン市庁報道官は次のように述べた。

首都からの500万人の移住計画が《政府諸機関のテヘランからの移転》〔に関する過去の計画〕のような運命をたどらぬよう願いたい。

 同報道官は、予想される地震被害を軽減を目的とした、大統領のテヘラン500万人移住計画に触れ、次のように述べた。

数年前にも、企業や政府諸機関の「軍事作戦展開地区」(訳注:イラン・イラク戦争時の前線を指す。主としてイランの西部や南部の沙漠地帯で、現在ではこれに戦時の苦難や戦勝の記念、国家称揚的な意味合いをもたせている) への移転計画が提案されたが、この計画は実行可能なものとはならなかった 。今回の市民移住計画が前計画のような運命を辿らぬよう願っている。

 また、テヘラン州知事のモルテザー・タマッドン氏は記者会見で次のように述べた。

テヘラン人口のスリム化計画に向けた大統領による施策や発言の後、テヘランからの移住を受け入れる人々に対し、いかなる支援や特典を用意するかが、政府の次なる課題とされた。いくつかの支援措置は議会で承認されたはずで、一部は告知されている。しかし、これらがなぜ正しく執行されなかったということは、きちんと検証されるべきであろう。

〔…〕

 アフマディーネジャード大統領は、同年第11月2日〔2011年1月22日〕にも行政機構改革に関する10指針に関する専門家らの協議の場で、次のように述べた。

我々はテヘランは地震が発生しやすい地域であると判断し、これに対するの課題を提起したのだ。〔…〕一部の政府職員をテヘランから移住させ、一部の行政サービスをテヘラン市の外で行う方向で話を進めているが、声高に異を唱え始め 、反対運動を展開している者たちもいるようだ。たとえば、いったい誰がそんなことを言ったんだ?だとか、テヘランの人口を減らすなんて、できっこない!だとか、まあ、こういった反対である。 何かを変えようとするとき、そして、それが実現されようとする時、必ずと言っていいほど、反対の声が起こるのだ。

 大統領によるこれらの発言の2年後、つまり第二次アフマディーネジャード政権の任期も残りわずかとなった現在、テヘラン市民500万人移住計画もまた、政府による多くの計画や提言と同様に実を結ぶことなく、月日とともに忘れ去られたトピックにすぎなかったことが明らかとなったのだ。

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:8410068 )
( 記事ID:29462 )