憲法裁判所に審査権撤廃の提案
2013年03月31日付 Milliyet 紙

トルコ大国民議会憲法審議委員会において、憲法裁判所の役割と機能に関する調整が、委員の間で議論を生んでいる。公正発展党と平和民主党の委員は、憲法裁判所が根本的に国民の意思に反しており、裁判所が憲法違反を監視する権限は不要であると述べた。提案は、委員会で王政と専制君主制の議論を生む原因となった。

新憲法の「司法の部」で憲法裁判所の役割、権限、選挙、機能、決定に関する条項が議論された審議委員会で、公正発展党と平和民主党の委員は、「憲法違反を、形式的にも実質的にも監視することはできない」という規定[を組み入れる]点で合意に至り、共同提案をおこなった。

公正発展党の委員アフメト・イイマヤは、「憲法裁判所が国民の意思、考え方に反している。国民の代表の決定が、裁判官によって監視されていることは、 国民の自由に反している。つまり、議会は国民の大部分によって選ばれている。国民の代表者の決定が裁判官によって監視されるのは適切ではない」と述べ た。

■王政の類い

共和人民党の委員スヘイル・バトゥムは、イイマヤ議員に対して、「議会の多数が専制君主制あるいは王政の体制への移行を決定したらどうするのか。憲法裁判所は、議会の多数派を監視するために創設された。国民の意思は監視できないという思想は、フランス革命後に捨てられた。ヒットラーとムッソリニーニが選挙で元首になると、国民の意思は決して過ちを犯さないという考えは捨てられた」と反論した。

バトゥム議員は、次のようにつづけた。「アメリカ連邦高等裁判所は、 1857年にも『黒人に権利はない。国民ではない』という決定を下した。1965年にも同裁判所は、『黒人は、白人と平等である。しかし、別である』という決定を下した。つまり、裁判所は白人と黒人を別の学校に通わせ、別のバスに乗せるという決定を下した。この二つの誤った決定を基に、 誰一人として憲法裁判所の監視の停止、廃止を望んでいない。有名なフランスの法律家クエルメンは、「憲法裁判所は、軌道から外れようとする衛星に似ている。僅かな[誤った]決定を基に、憲法裁判所の権限をなくしてしまうことは、民主主義の点から正しくはない」と述べた。

■不変条項に譲歩なし

民族主義者行動党の法律顧問であるハサン・トゥンチ教授とアリ・アクユルドゥズ教授はというと、反論を表明し、「このようなことがまかり通るのか。公正発展党が一般に理解されている多元的民主主義ではなく、多数にたのんだ民主主義を望んでいる」と述べた。平和民主党の法律顧問メラル・ダニシュ・ベシュタシュはというと、公正発展党の意見を支持し、「党の解散という過程を含め、今日まで正しい決定がなされなかった。憲法違反が全く監視されないという考えに賛成している。私たちは、裁判官が悪い監視を行っていると考えている。裁判官を信用できない」と話した。

公正発展党のイイマヤ議員は、「政党は、[憲法の]司法の部の後にその前文と基本理念の部に関する提案を準備しなさい。今から」と述べた。同議員は、最初3条項は文言の変更を行うが、この条項[自体]は守るとし、「私たちは変更不可能な条文を含む第4条に自分たちの提案を加えることを考えていない」と述べた。共和人民党の委員バトゥムはというと、「これは、私たちにとって放棄できない条項である。妥協はしない」と反論した。

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:29589 )