お休み時間はベベッキにあるこの食堂に
2013年04月14日付 Milliyet 紙


ニシャンタシュにある「カンティン」が、ベベッキ海岸に新店舗「カンティン・ドゥッキャーン」をオープンした。常連客が列をなしている。カンティンのオーナーであるシェムサ・デニズセルさんは、新店舗についてそして料理に関する考えを語ってくれた。

本当のことを言うと、私も「カンティン」ファンの一人である。ニシャンタシュで店がオープンした日から、この食堂の壁の黒板に書かれた、毎日変わるメニューの中で、食べたことのないものなどない。私が「カンティン」ファンである第一の理由は、この食堂に独自のルールがあることだ。私の中の小さなドイツ人の女の子は、ザクロ・オレンジジュースは2時以降提供しない、チャイのサービスは平日の3時から5時まで、食堂は夜の9時まで、「肉の隣にある付け合せをサラダに変えてもらえますか?」と客に頼まれても、はっきりと「ノー」と答えてくれることをいつも好ましく思っている。平日、忙しい仕事が終わって、夜、家に料理を食べにくる女友達たちに、私の手作りの料理を用意する代わりに、「カンティン」のテイクアウトカウンターから、自分が気に入った最も新鮮な食べ物を買ってくるのだ。「カンティン」のハッカの入ったアイラン、パリッとしたピザ。いつしか、私がここに夢中になっていることに気づいた。

■ベベッキの「カンティン」は、レストランではない

「カンティン」のオーナーであるシェムサ・デニズセルさんは、私がいつか会いたい人のうちの一人だった。そうこうするうちに、「ベベッキ海岸カンティン、ここにオープン」として営業開始した。訪ねてみるとベベッキ公園の向かいにある小さな店が「カンティン・ドゥッキャーン」という名前になっていた。ここはカフェやレストランではない。ニシャンタシュの「カンティン」のテイクアウトカウンターにあるパン、ケーキ、その他の料理の大半はここにもある。しかしニシャンタシュの店舗とは違い、トーストとサンドイッチがメニューに追加されている。店内には飲食用のちょっとしたカウンターと3つの椅子がある。外には2つの小さい腰掛がある。シェムサさんとあいさつを交わした場所もまさにその二つの小さい腰掛でであった。時間がないと言って始めたインタビューであったが、長々と続いた。

―「ベベッキにある「カンティン」はどのようにしてオープンしたのですか?」
ベベッキの場所は、もともと私も気に入っていました。ここは友人の店でしたが、カンティンをここに移すことをその友人が私に提案しました。ここにレストランをオープンすれば、ニシャンタシュよりもいい仕事ができると確信していましたが、ニシャンタシュの「カンティン」が今日ここまで質が高くなった理由は、ただ一つ、支店がないことでした。私やお店で働く料理人たちがもう一人ずついるわけではないので、同時に二つの場所で仕事をすることはできません。商品を運んでレストランは開けませんが、店は開けます。そのため私たちの唯一のレストランというのは、あくまでもニシャンタシュの店舗です。

■「イスタンブルで最高のパンはここにあります」

―「ニシャンタシュのお店との違いはなんですか、ベベッキにある「カンティン」には何がありますか?ニシャンタシュとベベッキの常連客の求めるものは違いますか?」
ベベッキの「カンティン」では、トーストとサンドイッチを提供しています。このお店を始めた理由は、ただ一つ、私たちのパンです。イスタンブルの最高のパンはここにあると言えます。
40時間にも及ぶ発酵をおこない、サワードウ(サワー種)でパンを作っています。他に以下のようなメリットがここにあります。例えばニシャンタシュ店のテイクアウトカウンターで売られている食べ物は誰もそこで食べることはできず、テイクアウトのみでしたが、ここでは食べることができます。

■「決まりがあることは悪いことですか?」

―「あなたのレストランには絶対不変のルールがありますが、なぜですか?」
ルールがあることは悪いことですか?人々にはあまりなじみがないものですが、これらのルールは気まぐれで決めたものではありません。今日たとえば自宅にお客が来たら、その人をもちろん丁重にもてなします。しかしその人が私の客であるということは、すべての要求を聞き入れるという意味にはなりません。カンティンでも同じことです、誰かが肉の隣にある付け合せをサラダにしてほしいと言っても変えません。なぜなら私はその皿を自分が思う最高の形で用意しているからです。隣にサラダを置くと、水が流れて肉のおいしさを損なわせます。料理の味を落とすようなことをするでしょうか?ザクロ・オレンジジュースは決まった時間にのみ出しています。なぜならその時間を過ぎると味が悪くなるからです。味の悪いものを提供するでしょうか?旬でない野菜は料理しません。(旬の時と)同じ味にはなりませんから。私が追及しているのは、自分の仕事を最良の形で行うということです。

―「料理を仕事にしようといつ思いましたか?」
私は19歳の時から料理人になりたいと思っていました。私の家族はイスタンブルのど真ん中に住む7人家族です。食べ物を食べ、料理することは私たちにとって常に大事なことでした。そのため物心ついたころから料理を作りたいと思っていることに気づきました。しかしその頃は、良家の子女が料理人になるというようなことはありえないことでした。私も雑誌の出版社に入りましたが、この思いを捨てられずに、数年後にカンティンを開きました。

―「どんな料理を作るのが好きですか?」
好きなものはすべてちゃんと作ります。例えば生パスタ。トマト入りのピラフは母が作ったように料理します。なぜなら今までそれよりもおいしいものを食べたことがないからです。

―「メニューは一週間分決めるのですか?」
はい。毎週土曜日にオーガニックの市場に行きます。料理の秘訣は、手元にどういう食材があるかで決まります。鶏肉のスープストック、マスタード、ジェノバソース、乾燥トマトソース、パン。これらの食材からあらゆる種類の最良の料理が生まれるのです。料理の真髄とは素材の良さを生かすことです。

―「あなたの本を読むことはできますか?」
「カンティン」の本を書く計画があります。時間があるときに内容を整理しようと努めています。

■「ベイランは素晴らしい味」

―「イスタンブルの食文化はあなたを満足させていますか?」
残念ながらとても長い食文化があるこの国ですが、テイスト(趣、嗜好)がありません。イタリア人やイギリス人のようなテイストがトルコ人にはありません。なぜならテイストというものをもたらすためには、料理する食材を正しく選び、うまく料理をし、テーブルアレンジをそれに合わせ、席にちゃんとした服を着て座る必要があります。伝統と新しさはお互いを支え、育て合うものです。イタリア人にはたとえばこれが生まれつきあります。男性がテーブルにコップを置く仕草さえ違います。イスタンブルでは次々に店が開かれており、手近なお店がたくさんあります。そのため外食するときはいつも期待を中ぐらいにしておきます。しかしいくつか気に入った場所もあります。イスタンブルで唯一よく行くところはカラキョイ・ロカンタです。しかし上の階ではなく下の階です。なぜなら料理人のムハッレムさんが下の階で魚を自分で料理しているからです。ミクラとディデム・シェノルのマヤもとても好きです。ジェレン・ビュケやメフメト・ギュルスも素晴らしい料理人です。

―「他に都市の食文化に関してどう思いますか?」
食に関しては、ニューヨークからはインスピレーションを感じません。なぜならすべてのものが力づくで、人工的だからです。しかしロンドンは別です。リバー・カフェ、バッラフィナ、セント・ジョンは全く別格のレストランです。スペインやイタリアも素晴らしいです。インドの食文化は自分の好みとはちょっと違うと思います。ベトナムや南米は、行って食べ物を食べてみたいと思う場所です。

―「アナトリア料理で好きなものはありますか?」
ガズィアンテプ料理とアンタキヤ料理です。例えば、ガズィアンテプにあるメタネト・ロカンタでベイランというスープを作っています。コメの上に油で炒めた羊肉、チリ・ペッパーとニンニクがのっています。これを朝食で食べます。素晴らしい味です。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:菱山湧人 )
( 記事ID:29679 )