Cengiz Candar コラム:イスラエルを攻撃できないものが、なぜレイハンルを?
2013年05月13日付 Radikal 紙

レイハンルでの爆破を、トルコが中東政治で存在感を増したことに対する「避けられない代償の一つ」として捉えるべきだ。

土曜日レイハンルで発生し、本紙の一面にでかでかと「虐殺」という見出しで報じられた爆破[のような]事件は、レバノンで1975年に始まった内戦の1年後、シリアが2,500人の兵士と諜報機関を率いて同国に居座ってから頻発するようになった。イラクでも2003年のアメリカ軍の占領から今日に至 るまで、少なくとも2週間に一度は同様のことが起きている。

おそらくこうした文脈においてだろう、この事件を「中東へようこそ」という見出しで報じた新聞もある。

それも事件の一面だろう。以前、ある機会に―ちょうど3か月前、ジルヴェギョズ国境ゲートで起きた爆破事件について―、私はこのコラムで次のようなことを書いた。「シリア問題に立ち入れば、シリアも我々の中に入り込んでくる。」

決して、これによって「トルコはシリア問題への対処を間違えた。トルコはシリアと中東から距離を置くべきだった」というような、敗北主義もしくは冷戦時代の現状維持主義的な主張をしたかったのではない。トルコはシリアに関しいくつか間違いを犯したが、決してその代わりの選択肢は、シリアと中東から「距離を置くこと」ではなかった。

したがって、レイハンルでの爆発と、これまでの同様の事件の中でも類を見ない数多くの犠牲を、トルコが中東政治における「重要人物」になったことに対する「避けられない代償の一つ」として捉える必要がある。

何とも殺伐としているが、残念ながらそれが現実である。こうした犠牲を生まないよう、トルコはシリアで起きていることから距離を置くべきだったのではないだろうか?

いいや、それは不可能だった。トルコが到達した発展のレベルと、国際システムを取り巻く現状が、中東における「重要人物」になる他に選択肢をトルコに与えなかった。これも避けられなかったのだ。

こうなると、トルコの今後は、この役割をいかに演じるかにかかっている。トルコはこの役を演じる上で間違いを犯したと見受けられる。しかしこの役を「正しく」演じるための公式も存在しないのである。

■犯人は明らか

レイハンルでの爆破テロに話を戻そう。テロが実行された場所、方法、タイミングに鑑みるに、「犯人」を突き止めるのはさほど難しくないはずだ。もちろんシリア政府である。このような、車両に爆発物を搭載し多くの死者を出すというやり方は、―レバノンで起きた事件がよく示しているように―いわばシリアの「専売特許」として知られている。

レイハンルは、ジルヴェギョズ国境ゲートに、誇張するなら「石を投げれば届く」ほど近い。町の中心部は、自由シリア軍とイスラム主義抵抗組織の人々で溢れ かえっている。先週、化学兵器の製造拠点を標的にイスラエルが空爆を行うと、シリア政府は動揺した。トルコのタイイプ・エルドアン首相は、シリア政府が化学兵器を使用したことは明白な事実であると断言し、アメリカにとって化学兵器の使用は超えてはならない「赤線」であると述べているオバマ大統領と会談する ため、ワシントンに向かっている。エルドアン首相は、アメリカのテレビに対し、アメリカがシリアの「飛行禁止空域」を設定することを支持すると語った。こうした背景を考えれば、レイハンルの事件の背後に誰がいるのかということは、聞くまでもない。

事件に対する最初のコメントで、タイイプ・エルドアン首相以外のトルコの政界人はみな、すでに犯人が分かっているようだった。首相はというと、レイハンル のテロはクルド問題に関する「解決プロセスに対する挑発」であるという奇妙で的外れな発言をした。恐らくわざとであろう。しかし内務大臣と外務大臣は疑いの矛先を明らかにした。

内相は、「事件の犯人の特定に向けた捜査は、大方完了している。襲撃を行なった組織とそのメンバーが、シリア体制支持組織のアル=ムハーバラートと繋がっていることが判明した。この忌まわしい事件が、シリアからの難民やシリア反体制派と無関係であることは確かだ」と述べた。

この発言は、疑いの矛先を明白にしているが、問題もある。「シリアの体制支持組織アル=ムハーバラート」…。「体制支持組織」などというものは存在しな い。アル=ムハーバラートは、シリア政府の根幹をなす公式な諜報機関の名前なのだ。忌まわしい事件が「シリアからの難民やシリア反体制派と無関係であることは確かだ」という推測も誤りである。もちろん彼らと関係があるのだ。標的は他でもないトルコである。シリア反体制派を匿い、シリア難民の楽園であるから、標的にされたのだ。

アフメト・ダヴトオール外相は、「いかなる理由があっても、トルコに避難した無実の人々に危害を加えることは認められない。これは人道上の罪である」と発言し、あたかも内相と正反対のコメントをした。

次のダヴトオール外相の発言は、レイハンルの襲撃の背後になぜシリアがいるのか、なぜトルコが標的として選ばれたのかということを説明している。
「我々は今、決定的な状況に置かれている。シリア問題をめぐる外交は加速している。それを進めたのは我々だ。この加速を受けて我々は、中東地域全体、欧州やアメリカが一体となって(問題解決に向けて)尽力するよう調整を行なった。また、外交の加速によってケリー米国務長官のロシア訪問の足場もできた。今日、すべてはプーチン露大統領とエルドアン首相の会談で我々が提案した解決法にもとづき進行している。」

ダヴトオール外相のこのコメントは部分的に妥当である。あくまで部分的に。この発言で外相が指しているのは、昨年ジュネーヴでロシアの出席のもと、シリア に「暫定政府の設立」をする方向で合意に至ったことである。しかしロシアとトルコ、アメリカは、これをそれぞれ異なるやり方で解釈している。トルコと、特 にトルコの支援を受けているシリア反体制派が、これを「バアス党が一部を占めうるがアサド抜きのプロセス」として理解している一方で、ロシアは必ずしも 「アサド抜きのプロセス」としては捉えるべきでないと、数回にわたって強調している。ジョン・ケリー米国務長官とセルゲイ・ラヴロフ露外相が話し合ったのはこのことだろうし、エルドアン首相とオバマ大統領もこれを確認するだろう。その場合、レイハンルの襲撃はトルコをはじめとする「多方面へ向けたメッセー ジ」であったと理解することができる。

■ダマスカスのメッセージ

今回の爆破テロによって、シリア政府にはその気になれば危機を自国の外へ拡散する力があることが明らかになった。同様に、ロシアにはアメリカとトルコに抵抗し「アサド抜きのプロセスは有り得ない」と主張するための「証明書」が与えられた。

また、この事件は、トルコに対しては明らかに「牽制」のメッセージを向けている。「私にはいつなんどきもお前を混乱に陥れるだけの度胸がある」と言っているようなものだ。シリアは一体なぜこんなにも大胆に振る舞えるのだろうか?

一つ目の理由として、トルコの内政の分裂がある。今回の事件に、(クルド問題の)「解決プロセス」が絡んできうる部分はここである。公正発展党と最大与党 の共和人民党(CHP)および民族主義者行動党(MHP)がこれほど分裂している今、レイハンルの事件や同様のテロはこの亀裂を深めることができる。バフチェリMHP党首の会見に目を向けると、そうなってしまったことが分かる。シリア政府の目論見は当たった。

二つ目の理由として、シリア政府は、アメリカと同様にトルコにも、いかなる行動を受けてもシリアへ軍事介入する意図がないと見なしている。「必要な報復を行なう」といったレトリックは、2012年夏にトルコの戦闘機が地中海のシリア領内に撃墜されたときから用いられ続けている。同様の発言はレイハンルの事件の後も行なわれた。

シリア政府は、トルコを刺激しあたかもトルコが「ゴロゴロ鳴るくせに雨を降らせられない」国であるように演出しつつ、トルコのカリスマ性を地域的なものとして描こうと企んでいるに違いない。

もちろん、「理性を失わないこと」、「挑発に乗らないこと」が必要である。しかしレイハンルの「犯人として」特定した後、シリアに対し「理性的」かつ「挑発」に乗らずに「どんな報復を行なう」べきだろうか?

私は、今日この答えを知っている人がいるとは思わない。

シリア政府もそのように考えているため、レイハンルと同様の事件をまた繰り返す可能性が、残念ながらある。シリアは「イスラエルを撃てなかった」ため、「トルコのやわらかい腹」を撃つことを選んだようだ。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:29957 )