オーストラリアという蜃気楼:移住を夢見て海の藻屑と消えるイラン人、後を絶たず
2013年08月06日付 Jam-e Jam紙

【社会部:メフディー・アーイーニー】希望と財産のすべてをカバンに詰め込み、カネのこと以外は何も考えぬ悪徳業者の口車に乗せられる違法移民たち。「違法移民らがインドネシアの海上で溺死」、あるいは「違法移民らを乗せた粗悪な船が沈没」といった時折報じられるニュースこそ、こうした安直な人々が迎える結末に他ならない。

 アリーはオーストラリアへの違法渡航を決意し、悪徳業者の手配した船が沈没したために、現在インドネシアに留め置かれている、数千という人たちの一人である。彼はどのように移住を試みたかについて、次のように述べている。「これまで7千ドル以上を費やした。ところがオーストラリアには着けなかった。あの国の新たな法律には絶望している。たとえチャンスがめぐってきても、パプアニューギニアに住まわされることになるんだから」。

 違法な移住方法では、移民たちはまずジャカルタに行き、そこで移民らを違法に国外へと渡航させる悪徳業者に接触して、海上を通ってオーストラリアに向かうことになる。

 アリーは次のように付け加えている。「私たちはある船に乗せられることになっていた。ところが移動の夜に目にしたのは、一艘の漁船だった。この漁船に300人が乗り込まねばならなかった」。アリーは悪徳業者が手配した船が沈んだあと、運良く他の漁船に救助された。沈没事故によって、11名が命を落とした。

 違法にイランを出国し、インドネシアの刑務所で長い時間を過ごした後に、イランに帰ってきた別の移民は、次のように話している。「インドネシアへの渡航を用意してくれた人物は、多額の金銭を前金とした払った見返りに、インドネシアにいる仲間に自分を出迎えさせると約束した。ところが自分に与えられたのは、連絡先の番号だけだった。インドネシアに着き電話をしてみたが、応答はなく、誰も約束の場所には現れなかった。私は必要な書類をもっていないという理由で逮捕され、投獄された」。

 非公式の統計によると、2009年初頭から現在まで、少なくとも600名の避難民がオーストラリアへの途上で海の藻屑と消えたという。にもかかわらず、いまだに希望の大地に行くことを夢見て、悪徳業者に騙される人々が後を絶たない。悪徳業者らは目的の地に行くのに、何の問題もないなどと約束する。しかしこうした約束が現実のものとなるのは、空想の中でのみか、あるいは難民船が沈没したり、避難民たちが周辺諸国に追い返されたりしたときのみ、というのが現実なのである。

 他方で、個人を〔違〕法に出国させたり、あるいは自ら違法に出国した者に対する罰則の適切な執行を担保するものは、我が国には存在しない。

 オーストラリア大使がジャーメ・ジャム紙に示した統計によると、イラン人避難民は相当な数に上り、その他の国の中でもトップクラスだという。実際、2013年1月初頭から現在まで、6406人のイラン人が違法に、自らが手配した船を使って、オーストラリアの地に足を踏み入れているという。

 ポール・フェリー豪大使はこのことについて、ジャーメ・ジャム紙に「オーストラリア政府の新たな決定により、2013年7月19日以降、海上を通ってオーストラリアに渡航した違法移民には、一人として滞在許可は与えられず、彼らはパプアニューギニア、あるいはわれわれの新たな政策に参加している、地域のその他の国に身柄が移送されることになった」と述べている。

 オーストラリア政府の当局者によると、こうした変更は違法移民を阻止し、避難民たちが溺死するのを防ぐための措置だという。そうした中、イラン人移民の多くは経済的な理由でオーストラリアを目指し、よりよい生活を求めて悪徳業者に騙されている。

 オーストラリア大使は「小型船舶を使ってビザを取得することなくオーストラリアに渡航しようとしている人々には、こうした方法でオーストラリアに着いても、もはやオーストラリアに定住することはできないということ、パプアニューギニアに移送されるということを伝えようと、懸命の努力を行っているところだ」と続けている。

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 フェリー大使は、移民希望者は法的な方法を通じて、オーストラリアに滞在することも可能だとした上で、「われわれは毎年、イラン人に2千件のビザを発給している。これに加えて、過去12ヵ月間で、イランにいた900人のアフガン人にも、オーストラリアでの居住許可を与えている。現在、3万人のイラン人がオーストラリアに住んでるが、この数に加え、キャンプや警察の拘置所にいるイラン人もいる」と指摘している。

 同大使はさらに、「現在、3350人のイラン人が移民拘置所におり、さらに880人が社会的拘束下にある。社会的拘束下にあるとは、つまり就労の権利はなく、時折警察に報告の義務を課されている、ということである」と続けた。

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本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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(翻訳者:白糸台国際問題研究所)
(記事ID:31144)