マルマライのすべて―スルタン・アブデュルメジドの夢、ついに実現
2013年10月28日付 Zaman 紙


世界の一大プロジェクトの一つとされ、「世紀のプロジェクト」として知られるマルマライは、明日アブドゥッラー・ギュル大統領とレジェプ・タイイプ・エルドアン首相が参加する式典で開通する。

イスタンブル・ボスフォラス海峡下を横断する海底鉄道トンネルの最初の構想は、1860年にスルタン・アブデュルメジドによって提言された。スルタン・アブデュルメジドの夢は10月29日共和国記念日で叶えられる。長い構想の歴史をもつプロジェクトの過去をひもとくと、その各々から興味深い事実が浮き出てくる。では、今日までのマルマライ・プロジェクト構想を…

構想は1860年に生まれたが、海峡下を通過するよう計画されたトンネルは、ボスフォラス海峡最深部を通ることもあり、かつての技術では、海底上または海底の下にトンネルを建設することは不可能であった。そのためこのトンネルは、構想では、海底に建てた柱の上にトンネルを設置するよう計画された。

この構想や発案は、その後20〜30年の間でより進んだ形で検討された。1902年に同様な計画が再考された;この計画でもイスタンブルのボスフォラス海峡下を横断する鉄道トンネルが想定された。しかしながらこの計画で検討されたのも海底上に設置されるトンネルであった。その当時から現在までで、全く異なった考えや構想が検討され、新しい技術のおかげで構想はより自由な形へと姿を変えてきた。

マルマライ・プロジェクトの一環として、イスタンブル・ボスフォラス海峡横断のための技術(沈埋トンネル技術)が19世紀末以降発展した。初めての沈埋トンネルは、北アメリカで1894年に下水道のために建設された。この技術を利用して、交通を目的に作られた最初のトンネルもアメリカ合衆国で、1906-10に敷設されたミシガン・セントラル鉄道トンネルである。ヨーロッパで、初めてこの技術を採用したのはオランダであった。ロッテルダムで建設されたマース・トンネルは1942年に開通した。アジアでの最初は日本であり、大阪で二本のチューブからなる道路トンネル(安治川トンネル)が1944年に開通した。一方でこうした工法のトンネルの数は、1950年代に、安全性や効果を実証した工業技術が発展するまで、限定的なものにとどまった。この技術の進歩のおかげで、その後数多くの国で大規模なプロジェクトが開始されることとなった。

イスタンブルの東西を結び、ボスフォラス海峡下を横断する鉄道(公共交通機関) の建設に対しての要望は1980年代初頭から徐々に増加し、この結果1987年に最初の包括的な実現可能性の検証が行われた。この検証の結果、鉄道は技術的にも建設可能であり、財政面でも採算可能であるとし、今日プロジェクトで示された設置ルートは数々のルート候補から最適なものとして選出された。

1987年には主要な路線が明らかになり、その後数年間議論を重ね、1995年には、より詳細な検証と作業をおこない、1987年の推定利用者数を含めた実現可能性の検証を新たに行うことが決定された。この作業は1998年に終了し、その結果は以前の検証結果が正しかったことを示した。またこのプロジェクトがイスタンブルで働きまた暮らす人々多大なる利益をもたらすこと、そしてイスタンブル市内の交通渋滞に関して急速に増えている諸問題を軽減することになることが明らかになった。

1999年にトルコと日本の国際協力機構(JICA)の間で借款が行われた。この借款は、プロジェクトのうちイスタンブル・ボスフォラス海峡横断鉄道トンネル(マルマライ)部分で見積もられる融資の基礎となっている。借款には、競争入札で選出される国際的なコンサルティンググループの獲得をも含まれている。選ばれたユーラシア・コンサルタントは2002年にプロジェクトのために入札書類を準備した。入札は国内外の工事請負業者、または合併企業に向けて公開で行われた。

■2004年に最初の工事

2002年に、ボスフォラス海峡横断チューブトンネルと4駅の建設を含む「ボスフォラス海峡横断鉄道トンネル(マルマライ)建設:トンネル・駅(BC1契約)」の入札が行われた。落札した合併企業と2004年3月に契約を交わし、2004年8月に工事が開始された。この契約のために2006年にJICAとの2度目の借款が結ばれ、2010年にはこの借款に補遺が付け加えられた。さらにプロジェクトの重要な部分の融資契約を締結するために、欧州投資銀行(AYB)との間で、2004年と2006年には郊外鉄道システム改修 (CR1/CR3契約)、2006年には鉄道車両生産(CR2)の融資のための借款が締結された。欧州議会開発銀行(CEB)とも2008年に CR1・CR3の契約の融資のため、2010年にはCR2の契約の融資のために借款が結ばれた。

■最初の海底トンネルは2007年に沈埋

マルマライの、ボスフォラス海峡下横断を可能にする11のトンネルの第一号は、ビナリ・ユルドゥルム交通海事通信大臣と当時の鉄道港湾航空建設局(DLH)のアフメト・アルスラン局長が参加した2007年3月24日の式典で海に設置された。エルドアン首相は昨年1月15日アイルルクチェシュメでマルマライの最初のレール敷設をおこなった。エルドアン首相が運転席に座り、マルマライ・プロジェクト最初の試運転は2013年8月4日に行われた。

■運賃は1.95リラ(約95円)

マルマライでの所要時間は、ゲブゼーハルカル間105分、ボスタンジューバクルキョイ間37分、ソウトリュチェシュメーイェニカプ間12分、ウスキュダルースィルケジ間4分となる。マルマライの1時間当たりの片道乗降客数が7万5千人、1日の平均乗降客数を20万人と見込んでおり、運賃は市内の公共交通機関と同様1.95リラになると明らかになった。ちなみに、マルマライ工事の際に行われた考古学発掘で3万5千点以上の歴史的出土品と沈没船13隻が発見された。この歴史的価値のある品々は、イェニカプの「100の島」と名付けられる地域に建設予定の考古学公園とマルマライ博物館に展示される予定。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:小幡あい )
( 記事ID:31829 )