最高指導者「交渉団が弱い立場に置かれるようなことがあってはならない」(下)
2013年11月04日付 Jam-e Jam 紙

 ハーメネイー最高指導者はそこからさらに、アメリカとの間で抱えている最近の諸問題について、重要かつ根本的な点を指摘した。同師は5+1との交渉にあたっている責任者らへの支持を表明した上で、「彼らは革命の子らであり、イスラーム共和国の当局者らである。彼らは多くの努力によって、困難な使命を遂行しているところである。誰であれ、彼らを弱い立場に置くようなことをしてはならない。彼らを侮辱したり、妥協的だと断じたりすべきではない」と強調した。

 アーヤトッラー・ハーメネイーは、アメリカを含む6ヵ国との協議は、核問題のみに関するものであり、ただそれだけだと述べた上で、「神の許しがあるならば、この協議で害を被るようなことはないだろう。むしろこのことで、〔有益な〕経験が国民に与えられ、〔ウラン〕濃縮活動を一時的に停止した82年から83年〔※2003年から2004年〕にかけての時のように、国民の思考・分析能力が向上するだろう」と述べた。

 革命最高指導者は当時の国民的経験について、「10年前、ヨーロッパ諸国との協議では一種の後退をすることで、実際には強要される形で、〔ウラン濃縮活動の〕一時停止を受け入れた。しかし〔ウラン濃縮活動を〕停止し、多くの〔核関連〕活動を休止してから2年後、われわれは皆、こうしたことをしても西洋の協力に期待を抱くことは断じてできないということを理解した」と説明、さらに

もしこうしたこと〔=ヨーロッパ諸国の求めに応じて、ウラン濃縮活動を一時的に停止したこと〕をあのときしなかったなら、今になって「一度だけ後退すれば問題は解決し、核問題も正常化するに違いない」などと主張する輩が出てきた可能性もある。しかし〔ウラン濃縮活動を〕一時的に停止するという経験を積んだことで、われわれは〔国際協調ではなく、核エネルギーの独自開発/国産技術の発展という〕別の目的を追求しているのだということを、皆が理解した。だからこそ、われわれは進歩に向かって仕事を再開することができたのである。

 と指摘した。

現在の協議を楽観はしていない

 同師は、現在のイランの核をめぐる状況と10年前のそれとは、天と地ほどの違いがあるとした上で、アメリカとの問題にあたっている責任者たちへの強い支持を表明し、次のように付け加えた。「私は現在の協議を楽観してはいない。なぜなら、国民が期待している結果が得られるのか、分からないからである。しかしこの経験は無駄ではないと信じている。ただし、国民が目覚め、何が起きようとしているのかをしっかりと認識するならば、である」。

 革命最高指導者は一部の「世間知らずであるか、あるいは私利私欲に溺れたアジテーター」を強く批判した上で、「外国メディアに想を得て、核問題で降伏すれば、すべての経済問題やその他の問題は解決するなどと吹き込み、世論を迷わている者が一部にいる」と述べた。

 同師はこうしたプロパガンダ上の策略の虚偽性を証明するために、イラン核問題が浮上してくる前のアメリカによる反イラン的な謀略の数々を引き合いに出し、全国民、特に大学生や中高生の若者に対し、このことについて深く考えるよう呼びかけた。

 同師はいくつかの質問を投げかけ、「革命の初期、アメリカはイランに対して制裁を科し、それをその後も継続したが、果たしてそのとき核問題は存在しただろうか?〔アメリカが〕イランの旅客機を標的とし、290名の乗員・乗客を虐殺した際、果たして核問題という名の口実は存在しただろうか?革命の初期、アメリカは『殉教者ノウジェ基地クーデター計画』〔※〕を実行に移したが、果たしてその当時核問題は問題とされていただろうか?革命の勝利後、アメリカは反革命組織を武器供与の面から支援し、あるいは政治的に支援していたが、それはイランの核活動に理由があったのだろうか」と問うた。

※訳注:「殉教者ノウジェ基地」とはイラン西部ハメダーンにある国軍航空部隊の基地の名で、革命の初期、同基地に所属する国軍の一部関係者が反ホメイニー・クーデターを画策した。

 ハーメネイー最高指導者はこれらの疑問に否と答え、「それゆえ、核問題は口実以外のなにものでもないのだ。たとえこの問題がいつの日か、われわれの後退によって解決されたとしても、彼らは親愛なるイランへの敵対関係を継続させるために、ミサイル開発やシオニスト体制に対するイラン国民の異議、〔パレスチナ〕抵抗運動に対するイスラーム共和国の支持などをはじめ、その他何十もの口実を設けてくることだろう」と強調した。

〔‥‥〕



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:白糸台国際問題研究所 )
( 記事ID:31943 )