イラク・クルド自治区住民投票の成り行き(2)
2017年09月27日付 Jam-e Jam 紙

【イラク中央政府に対するクルド自治区住民投票の影響】

 イラク・クルド自治区住民投票は自治政府自身、またこの地域に住んでいる人々を厳しい困難に直面させているが、その悪影響はイラク中央政府、そしてそれ以上にイラク・クルド自治区周辺地域にも脅威を与えている。

 イラク中央政府はハウィージャ、キルクーク、ハーナキーン、サラーフッディーン県、アンバール県、ニネヴェ県の一部にいるダーイッシュ(ISIL)の残党との戦闘を続けており、自治政府の予想される安全保障的、政治的行動も考慮し、領有権への脅威に対抗する措置を構ずることを余儀なくされるだろう。

 当然、クルド自治区問題へのあらゆる軍事的干渉は、イラクにおける治安面での長期にわたる混乱を引き起こすことになり、その結果、イラクに住む様々な民族からなる罪なき人々が殺害され、テロリストの残党が再編される条件が整うことになり、テロ組織の活動が活発化することになるだろう。

 押さえておかねばならないことは、中東地域、とくにイラクにおいて国家解体を狙う陰謀の陰には、米国とイスラエルによる策謀があるということだ。これは以前から考えられてきており、米国やイスラエルの理論家や政治家、具体的にはヘンリー・キッシンジャーやジョー・バイデンといった人物が、過去十年にわたりその存在を強調している。

 換言すれば、世界の支配体制は中東地域の変革を牛耳り、決定的な域内権力出現を阻止する目的で、常に中東諸国の民族・宗教的多様性を分離主義の流れと国家の中心権力の弱体のための機会として利用しているのである。

 シリアにおける米国の動きとユーフラテス川東部のクルド民主統一党(PYD)の分離主義的要求への軍事支援もこの策動の枠組みにあると判断される。この枠組みに則り、米軍は、何度もシリア国軍の拠点をPYD拠点支援のため軍事目標に定めている。米国が、ユーフラテス川東部クルド人のグループの影響下にある地域にシリア国軍が侵入することに反対しているのは明らかだ。

【近隣諸国に対するクルド自治区住民投票の影響】

 イラク近隣三国、つまりイラン、トルコ、シリア[原文はイラクと誤植]を脅かす第一の影響は、イラクの治安の悪化と政情の不安定化が周辺国にまで及ぶことだ。

 それに加え、独立を求める(クルド人の)民族アイデンティティの悪用は、ある種の民族問題の扇動となり、周辺国における同問題が助長される。

 この住民投票の否定するもう一つの点は、中東における新たな安全保障上の危機の広がりを画策するイスラエル政府の支持に頼っていることである。言い換えれば、イスラエルの謀略に屈して、不信心者、つまりシリアとイラクとイスラエルのテロリストは、中東地域に民族闘争を軸とする新たな内乱を起こそうと企てている。この内乱をイラン、トルコ、シリア、イラクの4カ国で同時展開させ、中東のおける民族の伝統的な共存関係を広範な対立と脅威に置き換えようとしているのである。
(ジャーメ・ジャム編集委員、ユーセフ・エスマーイーリー)

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( 翻訳者:FN )
( 記事ID:43701 )