国民和解イニシアチブ文書の全文(サバーフ・ジャディード紙)

2006年06月25日付 al-Sabah al-Jadid 紙
■ 和解と国民対話計画文書

2006年06月25日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HP1面

【バグダード:本紙】
以下は和解と国民対話計画の全文である。

 イラク国民の団結を確かなものとし、挙国一致の基礎を築き、国を構成する様々な要素間の友愛と調和の雰囲気を醸成し、テロや行政の腐敗などが互いの信頼にもたらした悪影響に対処し、あらゆるイラク人がその権利と義務において平等であり、宗派や人種、政治党派によって区別されることの無い祖国イラクへの忠誠心を広げ、様々な挑戦に対抗する広範な国民戦線を築き上げ、イラクの再建と国民の安逸を実現し、完全なる意志と主権を取り戻すため、また我らが親愛なるイラクに地域と国際社会における指導的立場を取り戻すため、これらすべてのために、「和解と国民対話のイニシアチブ」をここに発表する。このイニシアチブは「機構」と「原則および必要とされる政策」の2部から成る。

1. 機構
・「和解と国民対話計画のための国民委員会」を名称とする最高国民委員会を組織する。委員会メンバーは、三権の代表者および国民対話担当国務大臣および政治諸派・無所属議員を含む議会リストの代表者および宗教権威と部族の代表者とする。
・最高国民委員会によって各県に下部委員会が組織され、和解を全土に拡大する任務を担う。
・文化・広報および和解プロセスの進行状況の監督と評価、関心の喚起を行う現場委員会を組織する。
・様々な社会階層に向けた会議を開催する。たとえば、和解プロセスを神への信仰の一部とみなして支援し、それに相応しいファトワー(宗教的見解)を発布するための宗教指導者会議や、流血の事態に対抗し、テロや腐敗を一掃するための名誉憲章を発布する部族長会議、国家を支え、政治プロセスを守り、テロと腐敗に対抗し、またそれらを謳った国民憲章を発布するための政治諸派による会議など。また和解と国民対話という目標達成のための意識向上と啓蒙の活動・会合・キャンペーンなどをあらゆる市民団体に呼びかける。

2. 原則および必要とされる政策
・ 諸勢力間の信頼と安心を取り戻し、あるいは深めるため、また情報の中立性のため、政治プロセスに参加する政治諸勢力側および政府側から出される理にかなった政治的発言については、これを取り入れること。
・ 政治プロセスに参加する諸勢力と政府の持つ見解や様々に異なる政治的立場に対処するに当たっては、誠実な国民対話に拠って立つこと。
・ 国が抱えている諸問題を解決し、「身体的抹消」という現象に対処し、この危険な現象をコントロールするために努力を払うにあたっては、憲法と法律に則り、合法的にこれを行うこと。
・ 政府に参加している政治諸勢力は、テロリストやサッダーム・フセインの信奉者に対し、明確に反対の立場を採ること。
・ テロ行為や戦争犯罪、人道に反する罪に手を染めていない囚人には恩赦を出し、出来うる限り早急に冤罪者の釈放に必要な委員会を組織する。恩赦を望むものは暴力を批判し、選挙によって選ばれた国民政府を支持し、人権侵害を禁じた法を遵守せねばならない。また、刑務所改革に取り組み、拷問の責任者を処罰し、国内外の関連団体が刑務所を訪問し、囚人の状況を視察し、また軍事作戦によって民間人の人権が侵害されることを防ぐメカニズムを作るため、多国籍軍と協議することを可能にする。
・ 解体された部局、特に経済に関する部局の公務員の問題を解決し、彼らの経験を活用すること。
・ 憲法に記載された条項に従ってのバアス党排除手続きの見直しと、排除に技術的・法的形態を与えるため、法律と司法に基づいた措置を採らせること。
・ 公共サービス、特に気温の高い地域における公共サービス改善のために、早急な措置をとること。
・ 国連およびアラブ連盟と協調しつつ、国民融和のためのカイロ会議から生まれた準備委員会を活性化すること。またバグダード平和イニシアチブがアラブ・イスラーム地域をバランスの取れた方向へと導くことが出来るよう、イラク政府として働きかけを強め、諸国の政府、特にテロを支援し、あるいはテロを黙認している諸国の政府に対し、イラク国内の情勢と歩調を合わせ、国民融和のプロセスに賛成の立場をとらせる働きかけをすること。
・ 多国籍軍の撤退を準備するための、イラクの統治を担える軍隊の早急かつ真剣な育成。
・ 国防省と内務省に所属する軍隊および他の軍隊を技術的・愛国的基礎に基づいて育成する件について、早急かつ真剣に見直しを行うこと。なぜなら多国籍軍が撤退するには、それらの軍隊がイラクの統治を担い、治安事項の委譲を受けねばならないからである。
・ 前体制の犠牲者に支援と補償を与える法令を活性化させ、またイラク全土で公共サービスの行き届いていない地域に生活状況改善の可能性を提供すること。
・ 犯罪歴がなく、憲法に従ったイラクの再建を望むあらゆるイラク市民や団体の参加を妨げる一線を廃止すること。
・ テロ・軍事作戦・暴力による損害を受けた人々に補償を与え、司法の役割と犯罪者の処罰を活性化すること。また犯罪や前体制の指導的立場にあった人々、テロリスト、殺人・誘拐を行う犯罪者グループなどへの対処において、司法を唯一の権威とすること。
・ 軍隊を覇権を競い合っている政治勢力の影響下に置かないこと、また軍隊を政治問題に介入させないこと。民兵や非合法の武装集団の問題を解決し、政治・経済・治安面から対処すること。
・ イラクとイラク人を侵害するイスラーム強硬派のテロ集団やテロ分子に対する見解と立場を統一すること。
・ 被害を受けたイラクのあらゆる地域に対する大規模な再建キャンペーンを開始すること。
・ 失業問題に対処すること。
・ 選挙によって生み出された議会・憲法・挙国一致政府こそ、イラク国民の意思を代表する唯一合法的な機関として、主権や多国籍軍の存在の問題に対処する。
・ 避難民を出身地域に戻すこと。政府と治安機関が彼らの帰還の安全を確保し、破壊分子やテロリストから保護し、彼らの受けた損害を補償すること。
・ 人々を脅迫や強制から保護するために断固たる治安政策に依拠すること。
・ 司法が発する令状なしの急襲や拘束を行わず、令状に則って拘束や捜査を行うこと。また、それらは推測ではなく確実な情報に基づいて、人権に反しないように行われるべきこと。
・ 軍事作戦は公式な命令によって行われるべきこと。


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翻訳者:山本薫
記事ID:2825