ロシア政府、ハリーリー元首相暗殺等に関する国際法廷に50万ドル拠出

2008年04月05日付 Al-Nahar 紙
■ ロシア政府、国際法廷に50万ドルの資金を拠出
■ イスラエルの軍事演習に備えてレバノン国内で厳戒態勢
■ マロン派総大司教、レバノン大統領職の今後に信頼

2008年04月05日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 国内の諸問題をめぐる状況が停滞している。軸となる関心事は、ダマスカスで行われたアラブ首脳会議の後、レバノンに関連する様々な地域的、国際的問題がどのような進展を見せるかということであったが、大統領選出をめぐる危機は関心の外に置かれ、今なお悪循環を繰り返している。政府筋が本紙に対して述べたところでは、アラブ諸国レベルにおいて提起された事柄に関連する新しい情報は何もないという。アラブ連盟のアムル・ムーサー事務局長は、アラブ諸国提案履行のフォローアップを首脳会議において再度委任されたが、それに基づいた動きを何ら行っていないし、フアード・アル=セニョーラ首相も、レバノン・シリア関係の検討のためにアラブ外相臨時会議の開催を求めるレバノンの要請を実現するべく各方面と連絡をとり始めているわけでもない。

■ 対話

 一方、ナビーフ・ビッリー国会議長は昨日活動を再開し、アメリカのミシェル・シソン大使代行、イギリスのフランシス・ガイ大使、エジプトのアフマド・アル=バダウィー大使ら外交官と会談を行った。バダウィー大使はこれに先立ってマロン派のナスルッラー・ブトゥルス・スファイル総大司教および「レバノン軍団」のサミール・ジャアジャア執行部代表を訪問している。ジャアジャア代表は[レバノン各派の]対話を再生するとのビッリー議長の提案について、「時間を稼ぎ、通常国会開催の問題から目を逸らすための提案だ。もし真剣な提案だったなら、対話の各当事者に連絡をしていたことだろう」と述べた。また、ミシェル・スレイマーン国軍司令官の最近の発言は「すべての当事者に圧力をかける試み」との見方を示し、「スレイマーン司令官は、国軍司令官としての任期を終えた後も大統領候補者である」と主張した。

 一方、ウマル・カラーミー元首相は、「中立的な内閣を樹立し、公正な選挙法を制定して早急に選挙を実施し、それによって国家機構を再構築して、信頼を回復することが必要だ」と述べた。

■ スファイル総大司教

 ビキルキー[※マロン派総大司教座の所在地]にスファイル総大司教を訪問した人々によると、総大司教はレバノンの政治的危機の影響が最早解決が容易ではないほど複雑化していることに「強い懸念」を表明したという。総大司教は危機の複雑化によって暗雲に覆われた状況を反映するかのように、近いうちに大統領が選出される兆候となり得るような情報は何もないと述べた。

 また総大司教は「レバノンの責任者たちはいつまでも分裂して、国益をかえりみようとしない。そのために危機が一層深刻化している。手を組んで我々の問題を地域的・国際的紛争の影響から遠ざけ、国家にとって最も重要な事柄を各国の綱引きから遠ざけるべきなのに、危機の解決を外部からの介入に委ねざるを得なくなっている。大統領選出問題は彼らのせいで外部の紛争の虜と化している」と批判した。

 訪問者らによるとスファイル総大司教は、危機が長期化することを知っているにもかかわらず、「大統領の地位については、心配することはない。一部の者たちがこのポストを国外から持ち込まれた複雑な問題や、実行不可能な条件と結びつけて妨害しようとも、大統領の地位は遅かれ早かれ、生命を取り戻すだろう」との立場を示したという。

■ 特別法廷

 モスクワでは、本紙が写しを入手した声明によるとロシア外務省は、「ロシア政府は、ラフィーク・アル=ハリーリー元首相と同行者らの暗殺に関与したとされる被告人らを裁く国際的性格を有する特別法廷の資金として50万ドルを寄付した」と発表した。声明は、「ロシアはこれによって、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、オランダその他の諸国と同様、特別法廷に資金拠出を行う国際社会からの協力者の一員となった」と述べている。

 ロシア外務省のミハイル・カムイニン報道官は、「ロシアはハリーリー元首相暗殺事件の真相と犯人を究明し、犯人らに罰を受けさせようと努めている。いかなる場所で起こったとしても、政治的暗殺に対する我々の基本的立場は従来も今後も、反対の立場だからである」と述べ、「ロシアは確固たる決意をもって特別法廷を支援し、その活動に便宜を図ってゆく。法廷が政治目的に利用される可能性を取り除くため、法廷設立文書を精確に起草することの重要性を、我々は常に強調している。法廷の設立に関する文書の国際法的な詳細の一部分に我々は必ずしも満足していない。我々は、特別法廷の活動は最も高度の法的基準に適合するものでなければならないという原則に立っている。なかんずく、調査の結果や証拠に基づき、起訴事実の客観性に疑いの口実を与えないようにすべきである。そうなって初めて、特別法廷の活動は国際社会に課された主要な任務を果たすことができるだろう。それは、レバノンの主権確立と独立と国土の統一を支援し、レバノンの安定を保証し、レバノン全体の合意と全政治勢力および宗教集団の利益への考慮に基づく平和的な発展を保証することに他ならない」と述べた。

■ 軍事演習

 一方、セニョーラ首相は、イスラエルが明日実行する予定の軍事演習に懸念を表明し、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)と国軍に対して、「イスラエルがこの軍事演習を再び、レバノン領空の侵犯やレバノン南部国境の緊張を増大させる行動の口実に利用する可能性」に注意するよう呼びかけた。首相府の広報事務所から発表された声明は、「国連安保理決議第1701号の違反につながるイスラエルのあらゆる行動を予防すべく注意するよう」呼びかけた。

 国際部隊[UNIFIL]のヤースミーナ・ブーザイヤーン報道官は昨夜、イスラエル軍から今回の演習が「単なる訓練であり、いかなる攻撃的意図をも含むものではない」との通達を受けたとの談話を発表した。レバノン政府筋は、イスラエル側はこのように説明してはいるがレバノンは「予防的な措置を講じないわけには行かない」と述べた。


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翻訳者:梅原春奈
記事ID:13538