レバノン内閣、国軍司令官の人事をめぐって対立

2008年08月19日付 Al-Nahar 紙
■ ヒズブッラーとサラフ主義勢力の「相互理解文書」に各方面が反発
■ 国軍司令官およびレバノン銀行副総裁の人事に関する「パッケージ」めぐり対立
■ ヨルダン外相:「対話支援にアラブ諸国の役割を」

2008年08月19日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 スレイマーン体制および政府の今週のスケジュールに上った関心事や課題は多岐にわたっている。政界の雲行きは、軍および行政関連の人事をはじめとする諸懸案における重要な決定への道ならしとなるような状況ではなさそうだ。

 フアード・アル=セニョーラ首相のエジプト訪問が物議を醸した後、「変化と改革ブロック」代表のミシェル・アウン議員は昨日、副首相[アウン派]の置かれた立場を「受け入れられるものではない」と主張した。また、ヒズブッラーが一部のサラフ主義組織と「相互理解文書」に調印したことを受けて、ヒズブッラーと多数派勢力の一部の間で再び激しい対立が起こっている。

 人事に関しては昨夜、様々の情報が錯綜した。政府消息筋が本紙に語ったところによると、先月から空いているレバノン銀行副総裁4人と国軍司令官の人事を次の木曜日[21日]に決定すべく現在努力がなされている。これら5つのポストは特別かつ重要であり、任命を急ぐ必要があるからだという。一方、局長級の10ないし12ポストと運営評議会議長約6ポストの人事については、単一の「パッケージ」としてではなく、追って個々に決定する可能性もあるとのことだ。

 しかし同筋が明らかにしたところによると、第1陣の人事についても未だ固まっていないという。国軍司令官の職について、現在治安機関の長官を務める高級将校の名前が最有力候補として挙がっているが、この人選について合意が成立していないためである。木曜日の閣議の議題は今日[18日]朝に各閣僚に伝達され、人事問題が取り上げられるか、国軍司令官に関する合意の成立まで延期されるかが明らかになる見込みだ。他の治安機関の長官などのセンシティヴな人事は、国軍司令官の人選と絡み合う問題である。

(中略)

■ ヨルダン外相

 こうしたなか、ヨルダンのサラーフッディーン・アル=バシール外相がレバノンを訪問し、スレイマーン大統領、ナビーフ・ビッリー国会議長、セニョーラ首相およびファウズィー・サッルーフ外相と会談した。バシール外相が本紙に対して明らかにしたように、今回の訪問ではヨルダンがレバノンとの「2国間および地域レベルにおける協調」に関心を抱いていることが明らかにされた。

 バシール外相は、ヨルダン国王アブドゥッラー2世からスレイマーン大統領へのアンマン招聘の意向を伝え、今回の訪問の目的は「両国間および地域レベルの問題に関する政治的協議の強化」だと述べ、ヨルダンが「レバノンの安全と復興、正しい憲政の道への歩み」に関心をもっていることを強調した。

 またバシール外相は、「ドーハ合意には、アラブ連盟が国民対話会議に同席し積極的に参加することがうたわれている」ことを指摘し、「アラブ諸国はスレイマーン大統領の主宰するレバノン国民対話を支援し、ドーハ合意におけるアラブ諸国の実績を強化するとともに、合意の履行に向けて速やかな措置を講ずる役割を果たさなければならない」と述べた。

 一方イラク政府は昨日公式に、セニョーラ首相が今週、大規模の代表団を率いて初めてバグダードを訪問すると発表した。イラク政府報道官によるとセニョーラ首相はイラクのヌーリー・アル=マーリキー首相と会談し、政治・経済の重要課題について協議する予定である。今回の訪問はセニョーラ首相にとっては初めてであり、レバノンの要人としては今年7月17日に「ムスタクバル潮流」代表のサアド・アル=ハリーリー議員がイラクを訪問したのに次いでこの1ヶ月で2回目である。

■ 「2番目の」相互理解

 政局に関しては、ヒズブッラーと一部のスンナ派サラフ主義勢力の代表者との間で昨日調印された相互理解文書に対して、別のサラフ主義勢力や「ムスタクバル潮流」および多数派勢力の各方面から激しい非難の声が上がった。

 文書にはヒズブッラーのイブラヒーム・アミーン・アル=サイイド政治局長と「信仰・公正・善行協会」会長のハサン・アル=シャッハール師が署名したが、サラフ主義潮流の創始者で「導きと善行協会」会長であるイスラム宣教者シャッハール師を含む主要なサラフ主義の指導者らは参加せず、シャッハール師は「文書はヒズブッラーのスンナ派社会に対する侵犯行為である」との見解を示した。

(後略)


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翻訳者:平川大地
記事ID:14591