Murat Yetkinコラム:フィダン騒動の、3つの背景

2015年03月12日付 Radikal 紙
大統領制を目指す途上での権威の棄損、クルド問題解決プロセスの危機的な状態、ジェマート(教団)との闘争は、エルドアン大統領がダヴトオール首相に対するフィダン氏の[留任]主張する中で表面化した。

アフメト・ダヴトオール首相は、昨日登場し、何度も微笑んだ顔でもってタイイプ・エルドアン大統領との間にハーカン・フィダン氏について意見の相違がないことを説明した。

この発表の後すぐにダヴトオール首相のサインが入ったフィダン氏の任命状が国家諜報機構(MİT)に届いた。フィダン氏は一ヵ月を経て元の職に戻った。

「さて、もう問題ない。これ以上話すことはありますか」と考えている人びとは、このコラムのこの後の文章を読まないかもしれない。最初に言っておこう、後で「頭を混乱させるな」と言わないように。

ダヴトオール首相の昨日の声明に対して一ヵ月ほど前に、まさに2月8日、エルドアン大統領との間で意見の相違があったことを公言した。彼が公言しなかったならわからなかったことでもあった。

ダヴトオール首相が「ハーカン氏は私に政治面で必要だ」と言った事に対し、エルドアン大統領は「国家諜報機構で必要だ。そのまま留まれ」と言った。にも関わらずフィダン氏は先へ進んだ。エルドアン大統領の(フィダン氏に対する)毒のある、どきっとする会見から2日後の2月10日に、彼は6月7日の総選挙で公正発展党(AKP)の候補者になるため候補者申請を行った。

この状況は、エルドアン大統領がその日まで数多の困難でもって作り上げた「彼の発言に背く事はない」という権威に、側近2人が投じた引っ掻き傷のようだった。

この問題は、3月3日サウジアラビアから帰国する際、飛行機でエルドアン大統領に同伴していた新聞記者らによって大統領の憤りが収まっているとの望みにより再度尋ねられた。何故なら問題発生以降、両者が会談していたこと、そして3月2日にメディナでも会談していたという情報があったからだ。

しかし、エルドアン大統領はまだ憤っていた。あとは大統領本人のみが知る問題だ。

これには一つの訳があった。ダヴトオール首相は6月7日に選挙に勝ち、新政府でフィダン氏に職を与えたとしても、エルドアン大統領が大統領の権限でこれを拒否できたのだ。そうなれば、ビュレント・アルンチ副首相が2月7日にアーキフ・ベキ氏の番組で述べたように、フィダン氏は「平の国会議員」になるため「消費」されるところだった。

これ以上話しを延ばすまい。ダヴトオール首相はエルドアン大統領を説得できず、エルドアン大統領はダヴトオール首相を説得した。「見解の一致」はエルドアン大統領の言葉のうえにこのように実現したのだった。

エルドアン大統領が「秘密の瓶」とするフィダン氏は、前職に少し傷がつく状態でこのように戻った。

さて、公正発展党の執行部の中でここ一月フィダン氏の嵐を吹かせる事になったエルドアンの主張の背景に何があったのか。

3つの理由が表面化した。
1. エルドアン大統領の権威:エルドアン大統領は大統領制を欲していることを隠していない。フィダン氏の辞職後、議論は公正発展党の中での権威問題に発展し、選挙のため立候補者選定期間に議員らを混乱させたように見える。アブドゥッラー・ギュル元大統領のメディアへの露出がこの構図を複雑にした。エルドアン大統領は唯一のリーダーが誰なのかをこうして示したかったのだ。

2. クルド人問題:エルドアン大統領は人民の民主主義党(HDP)が選挙に党として参戦し問題なく投票率10%の足切りを突破した場合、新国会で大統領制の条項を含む憲法案が国会を通らないと見ている。PKK(クルディスタン労働者党;非合法)がネヴルーズの前、あるいは選挙キャンペーンの際に発する重大発表がことの流れを変え、人民の民主主義党が陣営を整えうる、と彼自身は考え、この目的でフィダンがクルディスタン労働者党のリーダー、アブドゥッラー・オジャランと長い間築いた対話[関係]を信頼しているのかもしれない。

3. ギュレン・ジェマート(教団)との闘い:フィダン氏とダヴトオール首相はエルドアン大統領が「国家権力の二重構造」と捉えているフェトフッラー・ギュレン師のジェマートとの闘いおいて最も信頼する人物である。長官にフィダン氏がいない国家諜報機構が、選挙に向かう中この闘いから手を引くことを危惧しているのかもしれない。エルドアン大統領の政治的見解の中で現在最も重要性を帯びる問題の中に、国家機構の中または国外のトルコ機関におけるジェマートの存在があることを忘れられてはならない。

野党は現在いくらか国家諜報機構が国政で使われうることを心配しているため憤っている。

共和人民党(CHP)の党首のケマル・クルチダオール氏は、ダヴトオール首相をエルドアン大統領の「後見人」下にあって、政権上でまったく影響力のないことを非難する。フィダン氏は公式に公正発展党の候補者に申請した。国家諜報機構の国家上の性質は忘れられるべきでないし、この組織が公正発展党の「裏庭」であってはならない。

人民の民主主義党所属のイドゥリス・バルケン氏は、この状況を公正発展党の「運営上の危機」と主張し、この危機的状況においてクルド問題の進展を妨げてはならないと述べた。

民族主義者行動党(MHP)所属のオクタイ・ヴラル氏はというと、国家の諜報機関が諸政党に対して不利に、また選挙に向かう中利用されうる杞憂について発言した。

情報筋は、他国で政党に属する人物が、例えばアメリカ合衆国のレオン・パネッタが情報のトップに選ばれた例を挙げて、事務次官[任命の正当性]を主張しているが、フィダン氏がこの問題ですでに十分に注意する必要があるのは明らかだ。


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翻訳者:満生紗希子
記事ID:37100