Murat Yetkinコラム:6月総選挙、鍵を握るクルド票

2015年03月13日付 Radikal 紙
人民民主主義党(HDP)が政党として選挙に臨み10%を超える支持を獲得するとなると、公正発展党(AKP)エルドアン大統領のいう『スーパー大統領モデル』に依拠した憲法を実現するには、HDPの支持を得ることが不可欠である。

近頃発表される選挙アンケートの数は増えているが、まだ有権者はこれといった考えを持っているという訳ではなさそうである、とまず申し上げておかなくてはならない。このように考えられる主な理由は、総選挙まで残り2か月半ほどにも関わらず、未だどの政党に投票するか決めていない人々の数が10-15パーセント程いること、またそのような人々の分布は、2014年3月30日の地方選挙結果を基に判断されるていることにある。

確かに全体としてAKPは第1党と見受けられており、それに共和人民党(CHP)、民族主義者行動党(MHP)と続く。HDPのことになると、見解は様々だ。HDP支持者があの不正な10%[条項]を僅かに上回るとするアンケートもあれば、下回るとするものもある。しかし選挙の運命を握るのは、国会でのHDP選出議員となるだろう。

そもそもまず、HDPに対しクルド人有権者のみが票を入れるということも、あるいはクルド人有権者がHDPにのみ投票するということもないだろう。クルド人有権者の半数、篤信家および保守主義者の半数がAKPに投票すると考えられている。しかし一方で、(正確には、クルディスタン労働者党 (PKK)代表のアブドゥッラー・オジャランによる「インスピレーション」による)平和民主党(BDP)のHDPへの変更に伴い、トルコ人左派たちの間にもHDP支持者が見受けられる。

HDPの様々な前提が限定する6パーセントという数字は、[昨年の]大統領選挙の際にセラハッティン・デミルタシュ氏が得た9.8%という得票率により越えることは明白である。

PKKやHDPに、6月7日の総選挙で10パーセント以上の支持率を得るのではないかと期待させるのは、この数値の上昇である。

彼らは、選挙に自身の紋章を付けて[政党として]臨み、そして10%の支持率を越えれば、それぞれが無所属として選挙に臨んだ際に獲得した25人程の議員数が最低でも二倍となると分かっている。このような状況で、トルコの政治的地図は大いに変わる可能性がある。

およそどのアンケートをとって見ても、CHPあるいはMHPの得票率に変動はなさそうだ。さらに、双方に更に得票の上昇傾向もある。しかしどちらも、特にMHPは近年、クルド人有権者からあまり票を集められておらず、トルコ東部・南東部から選出議員を出すのに苦労している。

このため、HDPが政党として選挙に挑み10%を超える支持が得られれば、最も得票を食われる議員はAKPになる可能性が極めて高い。

もっと正確に言えば、HDPが政党として国会に入ることになれば、CHPとMHPが得票率を上げることがなくても、AKPが300議席を獲得することも難しいと考えられる。エルドアン大統領が目標に掲げた400議席などには触れないでおこう。

もう一歩踏み込んでみよう。HDPが政党として選挙に挑み、10%の得票率を越えれば、「スーパー大統領となる」という目標は水の泡となることをエルドアンは分かっている。

この例外はというと、こういった状況でHDPが連邦制という意味でクルド人に広範な権利を要求したとしても、権力分立や、均衡・監視を求めない、エルドアンの言うところのスーパー大統領モデルに「はい」と言う状況だ。

しかしこうした態度は、「HDPが国会に入り、スーパー大統領を妨害してくれ」と願い投票する社会主義者、民主主義者、そして自由主義者たちの思いと真逆のものだ。 しかも、HDPがここまで示してきた政治にもそぐわないだろう。だが政治とはこういうものだ、机上のものであっても、勘定に入れなければならないのである。

つまりエルドアンは、HDPの「選挙に自力で挑む」という決定を覆すか、HDPを支持する有権者たちの一部をAKPに引き込むか、またはHDPをやめにして10%以下の得票に抑えるといったような、魔法のような解決策を模索しているのである。

長いことオジャラン氏と培ってきたとても特殊な関係によって、国家諜報機構(MİT)の長の職に復帰させたハカン・フィンダン氏にエルドアンが期待するのもこういうことだ。

PKKとの対話が、今日現在、3月21日のネウルーズを前に加速化しているのは、4月7日の総選挙候補者の高等選挙委員会への申請、よってHDPが政党として選挙に臨む事が判明することと無関係ではないし、6月7日の総選挙とも無関係ではない。

なぜならエルドアン大統領は、HDPが選挙で10%の得票率を得られなければ、国会でどれほど深刻な損失をもたらす可能性があるか、ということよりも、 AKPがトルコ東部・南東部から多くの票を集めることによって少なくとも330の議席を獲得することが出来るか、ということを考えるだけにとどまっているからだ。この議席数の獲得は、彼が望む類のスーパー大統領に基づいた憲法改正の国民投票実施への出発点となる。

こういった状況になって、何か月もの間、あらゆる主張にも関わらず、スーパー大統領制に関し公衆の面前で支持を示してこなかったアフメト・ダヴトオール首相やAKP議員らは、エルドアン大統領の要求に従わざるを得なくなりうる。

しかし、次のような構図もあり得る。AKPが投票で党外部から支援を集めることが出来ないかぎり、スーパー大統領を含んだ憲法修正法案を法制化できず、しかしながら単独政権を築き上げる。こうなると、エルドアンはそうではなくとも、ダヴトオールを十分に満足させることが出来るのである。

当然これは、[昨年]3月30日の[地方]選挙でAKPが獲得した44%の支持率をすべて保持するという前提があってのことである。しかもAKP周辺で45%と言い始めたのは2011年の総選挙の状況を見てのことである。例えばHDPがAKPから奪うかもしれないクルド票についてまったく考慮していない。

しかし有り得ないことではない。HDPが10%以上の得票率を獲得して国会に進出し、それによりAKPが支持率を42%以下に落とし始めれば、AKP選出議員の数は、単独政府を成立させるために必要な276人に向かって減少するかもしれない。

どの観点から見るにせよ、トルコが6月7日の総選挙以降の政治において、クルド人有権者の意向をどのように反映していくかが、今後重要な要因となると考えられる。


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翻訳者:木全朋恵
記事ID:37114