Ali Bulaçコラム:今、おきていること

2015年08月22日付 Zaman 紙
狂気めいた状態が我々を支配し始めた時、段階的に何が起こっているのかを理解することは、容易なことではない。我々は平和を守り、今何が起きているのかに目を向けなくてはならない。

今日の政治思想の他にも、政府のクルド問題解決プロセスへの態度を変えさせた真っ当な理由がある。
そのうちには、解決プロセスの間中、クルド地域が一歩一歩着実にPKKのコントロール下に置かれていったこと、想定される衝突に備え、大量の武器が配布されたこと、自治政府への道が敷かれたこと、停戦合意にも関わらず、武装集団が国境外へ出て行かないことなどが挙げられる。これら全ては正しく、もし地方自治が強化され、中央集権制から地方分権制への移行を目指す、地域主催へのモデルチェンジが望まれているのであれば、これはクルド問題の解決を可能にする3つの基本的要求の1つであり、理にかなった要求である。しかし「民主的自治政府」の名の下で、地域のいくつかの居住地域をシリアのような州に変え、連邦政府として機能させようとしているのであれば、これは単に一方的に主張するような決定ではありえない。可能性の世界からみれば全てがあり得ることだ。しかし、すべての可能性を実行可能にする交渉とは、必要性と承認である。必要性と承認でもって、あらゆる選択肢が実現可能になる。承認されないような既成事実は一方的な、実効支配である。

ここに公にならなかったことがある。クルド政治は6月7日の総選挙で、全く新しい段階に突入した。HDPは単に10%という足切り得票率を超えるにとどまらず、信仰心篤い、保守的なクルド人のほか、トルコの民衆からも支持を得たのである。13%という数字は、クルド人ナショナリスト、あるいはエルドアンを嫌う人々からの支持だけで得られる数ではない。クルド問題が、民主主義的な方法で、かつトルコ全体の問題として取り上げられることを望む人々もHDPへ投票したのである。HDPの6月7日の選挙での勝利は、クルド問題が非武装で解決され得ることを示しており、それは言い表しようのないほど素晴らしいことであった。

さて、それでは尋ねるとしよう。80人の国会議員が選出されたクルド政治が、この勝利を無視して武装することについて、理に適った説明が可能なのだろうか?「我々は13%の票を得ました、さあ武器を持とう、州設立を宣言しよう」と述べることが適切なのだろうか?

クルド地域はPKKのコントロール下に入り、何十万もの人々の手に武器が渡り、地方裁判所が機能し、検問、更にはカフェで麻薬の検査が行われ、税がとられている。クルド問題解決プロセスの中、178回ものPKKのデモ活動があった時、果たして政府はどこにいたのか?そもそもクルド人は、部族として基本的権利を今日まで与えることなく、これらをPKKとの交渉カードとし、この地域に暮らすムスリムのグループと対話しなかったことは、イスラム的な観点からして過ちであり、政治の悲惨な失敗なのである。もう十分である!さて、政府は本当にPKKがあの地域をトルコから奪い取り、自治州を作ることが出来ると考えたのだろうか?このように考えたのであれば、私に言わせれば単純な発想に至ったものである。スルチ県の殺人事件も、あるいは全く関係のないジェイランプナルでの2人の警察官の殉職も、私にはとても理にかなっているとは思えない。もしISがスルチ県の殺人を起こしたのであれば、国家のベッドで眠る2人の無垢な警察官の罪は何であったのだろうか。

6月7日の選挙後にクルド政治が行わなくてはならなかったことは、武装勢力の国外追放とHDPの道を開くことであった。クルド人が彼らの味わってきた歴史的苦難を終わらせたいのであれば、例えばPKKは、トルコ国外へ出したメンバーらをシリアに移動させ、そこでクルド人たちが誇りをもって生きていくことのできる場所を作り上げていただろう。「クルド問題」を軸に据えた政党(HDPのこと)が80人の国会議員を輩出したそばから、武装し、警官や兵士たちを殺害し、自らの若者らを死に晒し、機械を焼き、堀を掘るなど正気の沙汰ではない。これらには正当性がなく、また合理性もない。つまり、6月7日にHDPに投票したクルド人たちが、この武力を用いた反逆に、「革命人民戦争」の呼びかけに支持を寄せていないこと明白である。PKKと警察が衝突した居住地域で、人々は家に閉じこもり、警官、あるいは兵士に対し武装していない。クルド人が自らのアイデンティティ、母語、そして彼らがさらされてきた不当な事柄について、非常に敏感で、確固たる信念を持っており、しかしもう武器を望んでいないことは明らかである。トルコ世論も「HDPにYES、PKKにNO」と言っているのだ。

一連の出来事をより大きく捉えると、ひとつは中から、もうひとつは外から、2つの力点がすべてを破壊したと述べることができる。回復した「内深部の構造体」と、全体の地方政治に偏見を持つ「外部要因」が、トルコを地獄に変えるために動いていることがうかがえる。トルコ人とクルド人が、AKP支持者が、MHP支持者が、CHP支持者が、HDP支持者が、そしてスンナ派とアレヴィーが平安と一体性を守ることで、この忌まわしき循環から抜け出すことが出来るのだ。


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翻訳者:木全朋恵
記事ID:38483