Murat Yetkin コラム:研究者脅迫は、いつまで

2016年01月16日付 Radikal 紙
研究者らの身に起きていることで、大学だけでなく社会全体が、発言しようとする全ての人に対し、様々な考えを発信すればテロであるという非難に遭うのを心配し、黙っている方を勧めている。

初めからはっきりと述べておこう。

私だったらその嘆願書に署名はしなかった。

しかし戦闘状態が終わるよう求める旨の嘆願書がPKK(クルド労働者党)の行為に全く言及せずに国家に「クルド人の政治的意思」の要請を受け入れるよう求めたとはいえ、単にひとつの声明に署名しただけで、暴力の賞賛をしない嘆願書に署名したがために、大学教員が警察のテロ対策局によって逮捕され裁判にかけられるのは間違っていると考える。

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あなたが誰かの意見に同意せず、批判し、非難し、対する意見で嘆願書を発表し、暴力によらずに抗議するとしよう、これによってあなたは民主的議論に参加することになるのだ。

(ところが)先方はあなたの思想と表現の自由を制限し、圧力をかけて非難するという手に出る。

アフメト・ダヴトオール首相は昨日YÖK(高等教育機構)メンバーに対し、現代民主主義において国軍以外の国家と対抗する武装勢力の存在を見逃せないと述べたが、これは一つの現実を示していた。

しかしその現代民主主義では、このような嘆願書に署名した研究者たち、もしくはいかなる人もテロ組織のプロパガンダやメンバーかのように投獄されたり裁判にかけられたりすることはない。

昨日アメリカのジョン・バス大使が述べたように、トルコの民主主義は(不足はあるが)その嘆願書で示された考えによって崩壊することがない程度には安定している。まだそうなのだ。

CHP(共和民主党)は暴力に賛成するものを除く全ての考えの自由な表現について、内容は別として嘆願書に関わった人たちの考えを表明する権利を支持することを表明した。

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しかし昨日完全に起きてはいけないことが起きた。

昼頃コジャエリで逮捕者が出始めた。その後他の場所からもニュースが飛び始めた。ブルサから、エルズルムから…

勤務先の大学の居室で脅迫文を受け取った教員がいた。

様々な場所からその嘆願書に署名した1128名の署名者の一部を勤務先の大学を追い出したり罰するよう仕向けられていることが分かった。

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これだけではない。

例えばYÖKは大学に対してメッセージを送り、「前述の嘆願書に署名した人たちについての対応を始めること」とこれをYÖKに対して通知することを求めた。

大学連合は学長に、その嘆願書に署名した人たちを非難する通知に署名するよう求めたが、学長たちの大部分はこれに合意せず、通知を-今のところは-出していない。

特に小さな大学や私立大学の理事会は署名した教員たちの雇用契約をすぐに打ち切るよう学長に求めていた。これに一部の学長は従っているが、多くは抵抗するか判断を先送りしていた。

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しかしタイイプ・エルドアン大統領この種の時間稼ぎや状況を理解しようとする努力を手ぬるいと見て、反発している。

昨日、「取るべき対策」が少しでも早く取られる必要があると述べた。国会に来て政治をするなり、(PKKの戦闘員のように)「壕を掘り山に向かう」なりしたらいいだろうということだ。

大統領が署名者たちを大学からすぐに追い出すよう求めたことが分かる。

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エルドアン大統領の約2時間後、ダヴトオール首相はYÖKのメンバーに対して嘆願書について言及し、1960年及び1980年のクーデタで大学がクーデタ参加者側に立ったことを引き合いに出した。

確かに大学では様々な考えが共存しなければならないが、テロを擁護する自由はなかった。エルドアン大統領同様ダヴトオール首相もこの嘆願書がPKKのテロ行為を特に非難しないことをテロの擁護と捉えていた。

2人とも実際は、PKKが声明等で自分たちのことをクルド人の唯一の政治的代表として示すために使っていた「クルド人の政治的意思」という文言が、作戦が始まった原因であるPKKの行為に一切触れずに政府の作戦を停止してその「要請を考慮したロードマップ」を作ることを望んでいることに反発していたのだ。

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それではこの反発が非難や抗議の枠を超えてテロの非難により裁判にかけたり大学から追放しようとする方向へ向かったのは正しいだろうか。

PKKの非常に有効なプロパガンダメカニズムが嘆願書も相まって政府に過剰な反応をさせたと主張し、政府がこの罠に落ちるべきではないと言う、例えばアキフ・ベキのような考えの持ち主がいる。ここには妥当性もある。

このような罠が見えているのに、なぜこの罠に落ちるのだろうか。

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実際、MHP(民族主義者行動党)が党内議論に熱中している間に、この問題でAKP(公正発展党)がMHP支持層への影響力を増す機会を与えたことも明らかだ。見てみてください、MHP支持層は嘆願書についてAKPの基盤よりも積極的に支持しています。

一方でこの議論は、社会における緊張と二極化を深刻に増大させている。

大学だけでなく社会全体で、発言しようとする全ての人が、発言しようとする全ての人に対し、様々な考えを発信すればテロであるという非難に遭うのを心配し、黙っていることを余儀なくされている。

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この問題には別の側面もある。

アメリカとEUは最近、シリア人難民とイスラム国との戦闘に関するトルコへの過度な期待により、またテロ行為が自国民の命をも害し始めたことから、トルコの措置を批判することを避けている。

しかしこれらの問題はいつか、AKP政権だけでなくトルコの不利に使われるために、どこかに蓄積されているのだ。

このため政府は、嘆願書危機がトルコの民主主義の質にさらに悪影響を及ぼす形で拡大しないよう、沈静化した方が良い。


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翻訳者:南澤沙織
記事ID:39678