Ismet Berkanコラム:希望がもてる展開―多数派主義定着へ

2016年07月30日付 Hurriyet 紙
このコラムを常日頃読んでいる人であればお分かりになるだろう、私は、トルコにおける政治的闘争を、馬鹿らしいほどに110年間も続いている「トルコ主義」対「イスラム主義」の闘争と呼んでいる。
「トルコ主義」を「現代主義」と、そして「イスラム主義」を「保守主義」と言っても良いだろう。 私はただ、分かりやすいという理由でこの呼び方を使っているに過ぎない。トルコにおけるトルコ主義者は血にまみれたトルコ主義者でもないし、イスラム主義者も同様である。彼らは7月14日までは、それぞれ大きな傘の下で動く政治運動だったのではないだろうか。

この2つの潮流の間にある闘争は、プリンストン大学の重要な歴史家であるシュクリュ・ハニオール氏が述べたように、単なる政治的闘争ではなく、「道徳的支配戦争」である。

道徳という言葉について、ハニオール博士はそれを語義よりさらに広い意味で使用しており、今回発生した闘いもまた、「ある道徳(最も広い意味で人生観)が、他の道徳に対し優位性を確立し、下位にある道徳を滅ぼそうとする闘争」であると述べている。

■お互いを完全には消し去り切れず…

我々はみな分かっている。我々はこの2つの道徳が、お互いに対し究極的に優位に立とうと争う日々を過ごしてきた。けれどもどちらの道徳も、もう一方を消し去り切ることはできなかった。アタテュルクとイスメト・イノニュという2人の名のもとに成立した共和国の最初の27年間、「イスラム主義」は道徳的圧力の下にあった。完全に滅ぼされようとしたが、それは実現せず、存在し続けた。そして同様に、2002年(訳注:AKPが政権に就いた年)から今日に至るまでは、イスラム主義者が支配し続けているが、トルコ主義者の道徳を滅ぼそうとしても、実際に消し去ることはできなかったのである。

同様の政治的分解や分裂は、すなわち他の存在を受け入れず、さらには消し去ろうとするといった類の分解は、以前フランスとドイツで、カトリックとプロテスタントという姿で起こった。

しかしその後、ある時何かが起こった。カトリックはプロテスタントを、またプロテスタントはカトリックを滅ぼすことはできないことが分かり、それぞれの存在を受け入れたのである。

かつて私はこのことを踏まえて、「いつの日かトルコでも道徳戦争が終わり、それぞれがお互いの存在を受け入れるのだろうか?」と何度も考えたものだった。

■7月15日の影響は続く

いま、7月15日の血にまみれたクーデター未遂の後に起こった諸々の事柄を考えて、私は希望を感じている。(2つの異なる道徳観を持つ)それぞれが、お互いを消し去ることを諦め、その存在を認めようとする、そして戦争ではなく政治的なライバルとして競争する時代に突入しているのではないだろうか?

今はまだ、話すにも、希望を持つにもあまりにも早い段階かもしれない。しかし7月15日、市民が互いの政治的な違いを気に留めることなく外に繰り出していった事実は、今後にも続いてゆく影響であるように思われる。

あの、市民たちが通りに出たという行動の意味を、一度きちんと考えてみる必要がある。国民は、自分の国の将来が危険であると考えたからこそ通りに出た。そしてその危険を取り除く唯一のものは、これからも国を率いる人物は自らの一票でもって決めていくことだと示したのだ。

■多数派主義の到来か

民主主義というものは、終わりのない、非常に深い概念である。トルコにおける民主主義については、皆と同様私も不満を持っている。民主主義に対し障害となっている慣例や法律、規則を数え上げればきりがない。

しかしそうであっても、次のことを認めなくてはならない。民主主義の基本レベルが、政権与党が選挙で選ばれ選挙で解散するということであるならば、トルコのレベルはこれよりは低くない。(2つの道徳観をめぐる)我々の喧嘩は、より高いレベルのものだ。

今日、少なくともこの基本レベルにおいては、すなわち政権与党を選挙で決め、彼らを選挙で誕生させ、また解散させることについては、政治的/道徳的/歴史的な分離を超えた調和がある。

そしてこの調和を理解している各政党は、国会で、再びの体制転覆に対しては協力しあっており、お互いに慎重に言葉を選び、かつての喧嘩に決して戻りはしない。

これは決して政治的な喧嘩が終わりを告げたということではない。そうではなく、全く逆で、政治的な違いは現在でも存在しているし、今後も存在していくだろう。しかし政治家たちが、これらの違いのどれかを国の存続に関わる「生きるか死ぬかの違い」と考えることは最早ない。

そしてこのことが、多数派主義という扉を開くように私には思われるのだ。
希望を持てる理由がいくつもあると言えるのではないだろうか。


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翻訳者:木全朋恵
記事ID:40972