Serpil Çevikcanコラム:レイナ襲撃、その背景

2017年01月03日付 Milliyet 紙
2017年が大変な一年になるということを、私たちは新年が始まった直後、最もつらい形で思い知った。
イスタンブルのナイトクラブ「レイナ」で起きた銃撃事件で、39人が亡くなり、多数のけが人が出た。
これまでに、トルコ国内でISが犯行声明を出したのはアタテュルク空港の事件のみであったが、今回の襲撃対してISが犯行声明を出した。治安部隊は、あらゆる方面に捜査を拡大している。
昨日この記事を書き始めたとき、テロリストの身元が判明し、拘束に向けた大きな進展があったという情報が入った。昨日私が話を聞くことができた治安関係者から得た情報のうち、以下のことをお伝えしたい。

■まさに戦場

これまでトルコへの攻撃を控えていたISが、今回犯行に至ったことについては、「以前はトルコを、戦闘員を確保する場所として見ていたが、今はまさに戦場として見ている」という解釈がなされている。ISが最近になって、トルコを「背教者のトルコ国家」、「十字軍と結託するトルコ国家」呼ばわりするようになったのもこのためだ。ISの指導者バグダーディーは、少し前にトルコに対する命令を広報に掲載していた。バグダーディーは、「どんな機会をも逃すな、武器がなくても刃物で刺せ」という指令を出した。この指令は、リスクが高まっていることを示していた。

■なぜ単独の犯行だったのか

ISが虐殺のような形でトルコを標的にし始めた主な原因は、アル・バーブ作戦である。アル・バーブに集結するISには、毎日のように爆弾が落とされている。テロ組織は、資力の減少に伴い単独犯行に切り替えている。アル・バーブで多大な傷を負ったテロ組織の応答が、このような形の攻撃であり、これを継続していくつもりなのだろう。

アル・バーブを包囲した「ユーフラテスの盾」作戦以前、トルコ国境で300キロメートルに近くに及ぶ範囲を支配し、国境からトンネルを通して爆弾や戦闘員を送り込んでいたISは、現在この経路をすべて絶たれている。攻撃は単独で、カラシニコフ銃を使用して行われるようになったのも、爆弾を満載したトラックなどの手段が取られないのも、資力が制限されたのが主な原因だ。ISは、トルコが30-40キロメートルの緩衝地帯を設けたことで、2-3キロのトンネル掘削、国境の使用機会を完全に断たれた。そのため、このような事件を起こすことで主張をアピールしようとするのだろう。

■死を覚悟していた

米国の諜報機関は、PKKの攻撃に対してはあまり警報を出していないが、ISについては警報システムがより活動的だ。以前には、ISが大都市で計画していた攻撃が警報によって防がれたこともある。しかし、今回の事件では正確な警告はなかった。年末年始にかけて一般的な攻撃の警告があったのみである。
ISは、これらのパラメーターを考慮に入れ、最も効果的な攻撃形態を選択する。ISは自爆攻撃を認めているが、レイナでの攻撃では犯人が逃亡できる可能性を残した計画を立てていた。敵対勢力との戦場でも、パリのような大都市においても、自爆攻撃は常に選択されるわけではない。しかしそれでも、今回の攻撃で犯人が死を覚悟して犯行に臨んだことは確かだろう。

犯人が周辺のことをよく知り、事前に調査し、どこから飛び込んでどこから逃げるのかを前もって決めており、入口にいる人たちが武装しているかどうかまで知っていたと考えられている。内部からの手助けがあった可能性は低いという。15-20人の犯行支援グループが背後にいると言われているが、この攻撃に向けて何か月も準備を重ねてきたという主張は否定されている。この点について、ISがトルコに送り込んだ戦闘員に対して送っている指令は興味深い。前もって指令を受けたうえで送り込まれる戦闘員たちは、「しかじかの発表がなされた時、行動を起こせ」という命令のもと、標的の設定と準備を行い、行動を起こすという点が強調されている。

■戦闘経験のあるメンバー

犯人は5年間もの間、戦場であらゆる戦闘を経験したISのメンバーであることが注目をひいている。そのため、兵器の使用は戦闘に参加した戦闘員レベルに熟達しているとみられている。6つの弾倉を装填し、カラシニコフを使いこなしていることがそれを示している。初期の見方では、犯人が東トルキスタン人、ウイグル人であるという主張は否定されていたが、昨日夕方の時点では「中央アジア出身者の可能性が高い」と治安関係者は話した。

ISには「単独攻撃」のスタイルを継続する思惑があると見られている。小型・軽量の武器で仕掛けられる攻撃がなされるという見方だ。レイナでの攻撃の後に明らかになった前後関係もある。

■最後に…

トルコはPKK、IS、FETÖ、革命的人民解放党・戦線などと同時に戦っている。
この状況は、リスクを高いレベルにまで引き上げている。このリスクを最低にまで引き下げるには、グローバルかつローカルなタイミングが重ならなければならない。米国でのトランプ氏の大統領就任、シリア停戦の広範囲での持続、アル・バーブ作戦が成功裏に終わること、シリアとの国境からPKKを完全に排除すること、などのパラメーターが決定力をもつ。
全て相関関係にあるこれらの状況がトルコに利するようにいけば、平和をもたらすことができるだろう。


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翻訳者:今城尚彦
記事ID:41880