Abdulkadir Selviコラム:シリア政権との対話とシリア新情勢

2019年10月16日付 Hurriyet 紙
エルドアン大統領は、メルケル首相と会談した際に「あなた方はテロ組織をNATOへと加えたのに、私たちだけが知らないのではないか」といって問いかけた。メルケル氏は、「いや、それは違う」と返答をしただけで済ませてた。

エルドアン大統領と各大臣が「平和の泉作戦」に関連して、各国首脳陣たちとおこなった電話会談でも似たような状況が起こっている。フルシ・アカル国防相は「平和の泉作戦」に関連して他国の国防大臣達に電話で「あなたたちの国へ榴弾砲が落ち、生後9か月の赤ん坊が命を落としたら、あなたは一体何をし、何を感じますか?」と問いかけた。

さて、対話の相手である大臣たちは、一体なんと返事をしたのだろう?アカル国防相が、一人の大臣に対して3回同じ質問をした時に、電話の向こうでは長い沈黙が流れる。アカル氏は、これに対して「あなたは私の問いかけに対して返事をするのですか?もしも返事をしないというのであれば、今後お会いした時にまたこの質問を投げかけます」と述べた。

「平和の泉作戦」が始まった日から今まで、PKK(クルディスタン労働者党:非合法) -クルド人民防衛隊(YPG)によって一般市民らに対して700発の迫撃砲が放たれた。現在にまで20人の市民が死亡し、162人が負傷した。

トルコはテロの回廊を崩すために「平和の泉作戦」を開始した際に、「市民が命を落とすことのないように」とキャンペーンをおこなった人々がいたが、彼らからは現在にいたるまで声は上がっていない。市民と口にするが、アクチャカレ、ジェイランプナル、ヌサイビン、クズルテペの人々は人間ではないのだろうか?

「トルコはPKKを無力化させる」とは言えないので「トルコはクルド人を殺害する」と述べた人々は、アクチャカレ、ジェイランプナル、ヌサイビン、クズルテペに暮らすクルド人はクルドではないというのか?クルド人であるには、PKK党員である必要があるのだろうか?

■戦略的作戦

この不快感の理由は明白だ。「平和の泉作戦」によって地域の勢力均衡は変わった。トルコは戦略的な作戦を決行した。新たな均等を作り上げた。新しいシリアを建設する憲法作業が始まる前に、まずその方面における我々の力を増強させた。トルコなしにシリアと中東の勢力均衡は作り上げられないということを示した。エルドアン大統領がアラブ連盟へ語ったように、「アラブ連合が集ったとしても、トルコ一国には敵うことはない」ということを地域の国々へ示したのである。トルコ-シリア国境において築かれようとしたテロ回廊はトルコにとって継続的な問題であるということを示したのである。

トルコは、アメリカの旗がたなびく地域へ軍事行動をとることは出来ないという認識を打ち砕いた

昨日以降、新しい状況が生まれた。アメリカが一帯から撤退したことによって、シリアにおける新しい状況に直面したのである。アメリカは、シリア北部から南部へと撤退している。アメリカがシリア北部から撤退したことによって、新しいバランスが出来上がった。ロシアとシリア政権は影響力のある地域を拡大させた。

「アメリカ合衆国とロシアの間で秘密協定が存在する」という論は再び正当性を獲得した。アメリカが明け渡したマンビジュにはロシアが落ち着いたのである。

「平和の泉作戦」の6日目にラス・アルアインとタル・アブヤド作戦を成功裡に遂げたトルコ国軍(TSK)は、機敏な機動作戦によってマンビジュに向かった。軍事作戦の7日目と8日目には、アメリカが迅速に退いたマンビジュをロシアへと明け渡したという現実を目の当たりにしている。

■新しい勢力バランス

アメリカが退いたことによってシリアで新しい勢力バランスが生まれた。このバランスをいかに統べるかという問いが重要なものとなってきた。このプロセスは流血をともなうのか、もしくは流血を伴わないものになるのだろうか?

シリア内戦において新しい展開がうまれるのだろうか、もしくは外交が全面にでることになるのだろうか?昨日までは軍事的な選択肢が前面に出ていたのだが、昨日からは外交が前面に出始めた。アメリカ軍が撤退したことによって生まれた空白がどのように満たされるのかは、外交が明らかにするだろう。このプロセスにおいてエルドアン大統領はロシアのプーチン大統領と会談することが予想されていた。これは昨晩実現した。

トルコがマンビジュへと向かったことを受けて、アメリカとロシアの間で交渉が行われた。アメリカは、マンビジュをロシアへと明け渡して退いた。実際のところ長きに渡ってアメリカとロシアの間に秘密裏の合意があったことが分かっていた。ロシアをシリアへと招き入れたのはアメリカであった。新たな状況は、両国間に秘密裏の合意があるという事実を今一度明らかにした。この展開に対して、私たちはどのような状況にあるのか?ラス・アルアインとタル・アブヤドを手に入れて、驚くべき形でマンビジュへと向かったトルコは、軍事的なポジションを保持している。引き返すことはありえない。

■シリア政権との対話

アメリカの協力を失ったPKK/YPGは何をしているのか?新たなパトロンを見出そうとしている。彼らは、ロシアに接近しようとしている。この間にトルコとシリア政権間の関係性は、「平和の泉作戦」の前に比べれば一層強まっているように見うけられる。ロシアのシリア担当特別代表アレクサンドル・ラブレンティエフ氏は、トルコとシリアが会談をおこなったと発表した。エルドアン大統領は、「シリア政権との関係はロシアを介してのものだ」と述べた。ロシアを介して双方の情報機関が会談をおこなったと発言した。ただ、作戦の安全面の点でシリア政権と対話を築いたものと理解される。扉が開かれたのは明らかだが、これは反体制側が求めたような、アサドとの会談という形のものではない。反体制側のリーダーたちが無駄に興奮することがないように、ここで明らかにしておきたい。


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翻訳者:堀谷加佳留
記事ID:47841