レバノン:カアクの有名店「アブー・アラブ」閉店

2020年05月27日付 Al-Nahar 紙

■貧者の「カアク」がこの世を去る…「アブー・アラブ」が閉店

【本紙】

ザアタル・カアク(注)すらも貧しい者のために残されることはなかった。この食べ物は、散歩や外出の際に有り金をはたくことなく貧しい者のお腹を満たす。この厳しい現実はどれほど悲しいことか。会社は休業し、従業員に仕事はない。いつになったらこの悪夢は終わるのか、一体いつ?

レバノンが直面している厳しい経済状況の結果、同国にはホテルや飲食店の倒産の波が押し寄せ、毎日数百人の従業員が失業保護の対象者に転じている。そして、数千世帯が路頭に迷ったり、貧困に陥ったりする危険に直面しており、そしてその割合は刻一刻と増えている。

そんな中、複数のアカウントがSNSを通じて「アブー・アラブ・カアク」が店を閉めるという内容のお知らせを広めた。拡散したお知らせは次のような内容だった。「この会社はレバノンで有名な、気前の良さとサービスの手本でした。今日では、経済状況とドル高が理由でレバノン人は値上げを強いられており、危機の始まりから今日までに、ドルの価格は300パーセント上昇し、市場の物価は倍になりました。しかし、アブー・アラブは価格を据え置き、革命前の1000レバノン・ポンドから50パーセント引き上げて今日の1500レバノン・ポンドにした以外の値上げはしませんでした。」

また、その知らせは以下のように続いた。「この会社が為替レートの差に耐えたのは貧しい人や裕福な人、皆の食べ物を残すためでした。私たちは、アブー・アラブ全店舗を当面の間閉店しますことを、お客様方、そしてレバノン人の皆様にお詫び申し上げます。そして神が私たちの直面している事態から救い出し、この国の人々に恵みを与え、皆のもとに安全、安心、健康を取り戻してくださいますようお祈りしております。」

なお、本紙の複数の消息筋によると、アブー・アラブの経営側は従業員たちに閉店通知を送ったことを確認したという。


注:カアクとはアラブで広く親しまれている焼き菓子やパンのこと。円形やリング状になっているものが多い。ザアタルとは、ここではシリアンオレガノをはじめとしたハーブやゴマ、塩等を混ぜて作られる調味料を指す。


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翻訳者:佐藤竣介
記事ID:49186