シリア:在日本シリア大使館がパルミラ市の破壊をテーマとする映画上映会・シンポジウムを開催

2023年08月20日付 その他 - シリア国営通信 紙

■東京で映画「ナツメヤシの血」の上映会およびパルミラの被害に関するシンポジウムが開催

【シリア国営通信:ルアー・ハリーファ】

在日本シリア・アラブ共和国大使館は、テロ組織「イスラーム国」によって殺害されたシリア人考古学者のハーリド・アスアド氏の追悼記念日に際して、初めて日本語に翻訳されたナジュダト・アンズール監督作品「ナツメヤシの血」の上映イベントを開催した。

さらにこのイベントでは、映画の上映後にシンポジウムが開かれ、歴史ある古代都市パルミラの重要性に光が当てられた。このシンポジウムには、パネリストとして考古学・博物館総局事務次長兼発掘・考古学研究部長のハマーム・サアド博士(リモート参加)のほか、奈良県立橿原考古学研究所所属の考古学者である西藤清秀博士と、筑波大学所属の建築・考古学専門家である松原康介博士が参加した。

サアド博士は本紙への声明のなかで、このシンポジウムには、パルミラの歴史と同市がこれまで負った被害に関するブリーフィングが含まれたことを明らかにした。同博士によるとこうした被害は、テロ組織「イスラーム国」が同市を支配している最中に行った数々の考古学的物品の破壊および違法な発掘・略奪によって、さらには今年2月にシリアを襲った地震災害によって生じたものだという。



さらにサアド博士は、シリアの考古学的物品や文化遺産に関するシンポジウムを国外、特に日本で開催することの重要性を指摘した。またその理由として、こうした遺物や、それらが過去数年間の戦争を通じて受けた侵略、盗難、破壊の被害を知らしめる機会が生まれることを挙げた。

さらにサアド博士は考古学博物館総局が、戦争が起きる以前、西藤清秀教授率いる日本パルミラ使節団や数々の遺跡や遺物の修復に貢献したその他の使節団を含む、複数の考古学的使節団と協力していたことを明らかにした。

サアド博士はシンポジウムで、シリア文化省が被害に歯止めをかけるため行ってきた取り組みや、損傷した遺物の修復を開始するために必要な調査の準備段階、修復作業の実施段階を解説するプレゼンを行った。

一方西藤博士は、かつて日本パルミラ考古学使節団のメンバーとしてパルミラの埋葬地区で活動した自身の個人的な経験について語った。さらに故ハーリド・アスアド氏と同年代であった自身が同氏とともに働いた経験を有していることから、自身が実際に映画を鑑賞した際に受けた大きな衝撃について述べた。



次に松原博士は、シリアの現状に関心を持つ人々に実際に起きたことを詳細に伝える機会が得られたとして、自身のシンポジウムへの参加がもつ重要性について語った。さらに同博士は、シリアに現在課されている制裁が、シリアの遺物を保護する手段を模索している日本の学術系団体の活動の妨げになっていると示唆した。

一方在日本シリア・アラブ共和国大使館のムハンマド・ナジーブ・イールジー臨時代理大使は、映画「ナツメヤシの血」の上映とこれに続くシンポジウムが、日本の国民や考古学専門家らに、テロ組織「イスラーム国」や、同組織がパルミラ市で行ったテロ行為によってもたらされた破壊の規模を知ってもらうことに貢献したと述べた。さらにイスラーム国による破壊行為について、「彼らの、あるいは彼らの協力者である『ヌスラ戦線』などのテロ組織が、2011年にシリアに対するテロ戦争が始まって以来抱いてきた犯罪的な思考を表すものである」と付言した。



さらにイールジー氏は、世界中のメディアによる情報かく乱キャンペーンにさらされている日本国民は、シリアで起こったことに関する真実を知ることを望んでいるとしつつ、在日本大使館が今後シリアの文明や有形・無形遺産を紹介するための多くの文化的イベントを主催するとの意向を述べた。

今回の上映会およびシンポジウムには、東京で信任された外交団グループのほか、多数の日本メディア、考古学の専門家らや関係者ら、非政府組織の代表者ら、アラビア語を勉強する日本人学生らなどが出席した。


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翻訳者:国際メディア情報センター
記事ID:56187