アゼルバイジャン、カラバフで反テロ攻撃開始

2023年09月19日付 Hurriyet 紙

アゼルバイジャンは、カラバフで以前から予想されていた行動に出た。アゼルバイジャン防衛省は、カラバフで反テロ攻撃を開始したと発表した。アゼルバイジャンのヒクメット・ハジエフ大統領補佐官は、攻撃の目標がほぼ達成されたとし、アルメニア人分離主義者らが停戦を求めている、と発表している。アゼルバイジャンによる攻撃の後、アルメニアのパシニャン首相は緊急で安全保障会の緊急会合を要請した。アルメニア外務省の発表は以前のアルメニア政府の方針と真逆のものを曝け出した。一方、カラバフにあるアルメニア系武装勢力の60以上の基地がアゼルバイジャン軍の管理下に入ったことが発表された。また、アゼルバイジャン大統領府は、カラバフでの対テロ攻撃の停止の唯一の条件として、カラバフに不法に留まるアルメニア系武装勢力が降伏すること、カラバフの架空の体制廃止を挙げている。

カラバフから悲しい知らせが続いた後、ついにアゼルバイジャンが引き金を引いた。

アゼルバイジャン国防省は、カラバフの憲法構造を再構築することを目標に反テロ攻撃を開始したと発表した。

■アルメニア人分離主義者の牙城で爆発音

AFP通信によると、バクーの発表後、ナゴルノ・カラバフ地域でアルメニア人分離主義者らの牙城であるステパナケルトで爆発音がしたという。

アゼルバイジャン国防省は、発表の中で「市民やインフラ施設は攻撃対象ではない。正式な軍事施設のみが攻撃されている。」と述べた。

■レーダー基地と弾薬庫を破壊

アゼルバイジャン国防省は、以下の施設を破壊したと発表した。ロシアの平和維持軍がホジャベンド県で暫定的に駐留している土地にあるアルメニア系武装勢力のP-18レーダー基地、アーダラ方面にあるアルメニア系武装勢力第五防衛部隊の弾薬庫の一つである。

ロシアのプーチン大統領は先日、カラバフに関し「アルメニアは、カラバフにおけるアゼルバイジャンの主権を確かに認めた」との注目発言を行っていた。

■シュシャで市民一人が犠牲に

アゼルバイジャン検察庁は、アルメニア系武装勢力所属の部隊がアゼルバイジャンのカラバフからシュシャへ追撃砲による攻撃を実施したと発表した。

発表によると、攻撃によりシュシャ公立林でエンジニアとして勤務していたヴィダディ・フェルハドフ氏が亡くなったという。

■アゼルバイジャン軍、60以上の拠点を制圧

アゼルバイジャン国防省は、カラバフで開始した対テロ攻撃で、60以上のアルメニア系武装勢力の拠点を制圧したとし、「カラバフのアルメニア系武装勢力に降伏するよう求めている」と述べた。

■「攻撃休止の条件は武装勢力が降伏すること」

アゼルバイジャン軍がカラバフで開始した対テロ攻撃を継続する一方で、アゼルバイジャン政府は攻撃休止の条件を明らかにした。アゼルバイジャン大統領府は発表の中で、カラバフのアルメニア人居住者の代表者らに対しアゼルバイジャン側から繰り返し対話を呼びかけていたにもかかわらず、全て拒否されていたことを強調し、アゼルバイジャン側はカラバフのアルメニア人居住者の代表者らとイェヴラフで会談する準備はできていると明らかにした。一方で、「しかし対テロ攻撃休止の条件は、アルメニア系武装勢力が降伏し、全ての武器を引き渡し、不当な体制を自ら廃止することである。さもなければ、対テロ攻撃は最後まで継続する。」とも述べている。

一方、カラバフの分離主義体制側の情報本部は書面で、「カラバフ側はアゼルバイジャン側に対し、直ちに攻撃をやめることと問題解決のため話し合いの席に着くことを求めている」と発表している。

■「平和維持の唯一の手立てはアルメニア系勢力の撤退である」

アゼルバイジャン外務省は、カラバフで開始した対テロ攻撃に関して説明を行っている。説明によると、アルメニア系武装勢力はカラバフでの挑発を継続するために戦闘基地の強化を行っており、また部隊が戦闘準備態勢に入っていることを突き止めたことを受け、対テロ攻撃を開始したという。

アルメニア系武装勢力の動きへの対抗措置の中で、アルメニア系武装勢力の拠点と攻撃拠点を高感度兵器を使用して破壊したと強調した。2020年11月10日に取り決められた三カ国協定の規定に反する形でアルメニア系武装勢力がカラバフに留まり続けたことで、地域の安全と安定に深刻な脅威をもたらされていることを繰り返し述べてきた、と伝えている。説明では、「地域の平和と安定を守るための唯一の手立ては、アルメニア系武装勢力がアゼルバイジャンのカラバフから無条件に完全撤退すること、架空な体制を廃止することだ。」と述べている。

■アルメニア人分離主義者らが休戦を求める

ヒクメット・ハジエフ大統領補佐官は、攻撃の目標はほぼ達成されたとし、カラバフのアルメニア人分離主義者らが休戦を求めていると明らかにした。

カラバフの分離主義体制の情報本部も書面で「カラバフ側はアゼルバイジャン側に対し、直ちに攻撃をやめることと問題解決のため話し合いの席に着くことを求めている」と述べている。

■ハジエフ大統領補佐官: 体制は彼ら自身が廃止する必要がある

アゼルバイジャンのハジエフ大統領補佐官は、カラバフのアルメニア人側の不法な分離主義傀儡体制は彼らが自ら廃止する必要があると強調し、以下のように述べた。

「アゼルバイジャンのカラバフに留まるアルメニア系武装勢力は武装解除する必要がある。アゼルバイジャンは軍事拠点を高性能の誘導弾を用いて攻撃している。絶対に市民に危害を加えていない。」

■「市民は攻撃対象ではない」

アゼルバイジャンは、カラバフで実施している対テロ攻撃で市民に危害を加えないと繰り返し説明しており、その証拠を次々と示している。

アゼルバイジャンのハジエフ大統領補佐官は、カラバフでアルメニア人市民を狙い攻撃をしたとの話は嘘であると明らかにし、以下のように述べた。

「カラバフで塹壕を掘って強化されたアルメニア系勢力の軍事監視所は、正式な軍事対象であったにもかかわらず、近くに一般市民がおり車もあったため攻撃を中止した。アゼルバイジャンは一般市民を攻撃しない。」

ハジエフ大統領補佐官は、アルメニア系武装勢力が使用する軍事監視所の近くに一般市民や車がみられたことにより攻撃を中止した映像をソーシャルメディアに投稿している。

■「トルコ-ロシアの共同監視本部に情報が寄せられた」

アゼルバイジャン国防省は「カラバフでの対テロ攻撃について、ロシア平和維持司令本部とトルコ-ロシア共同監視本部に情報が寄せられた」と明かした。

「アルメニア系武装勢力は、アゼルバイジャンの領空を通過する航空会社の旅客機のGPS衛星ナビゲーションシステムに対し、再度妨害行為を行った。」とし、以下のように続けた。

「アルメニア系武装勢力部隊は、アーダム地域方面にあるアゼルバイジャン軍の拠点に砲撃を行っている。我々の部隊もこれを受けて対抗措置をとっている。」

■アルメニア側から初めて説明

アルメニア国防省は、ナゴルノ・カラバフにはアルメニア軍所属の兵士がいなかったと説明している。

一方アルメニア外務省は、表現が適切ならば、ロシアに助けを求めている状態だ。同外務省は、ロシア平和維持軍がアゼルバイジャンの対テロ攻撃を制止させる役割を担うと述べている。

アゼルバイジャンによる攻撃の後、アルメニアのニコル・パシニャン首相は安全保障会議開催を緊急で要請した。

安全保障会議事務局は「会議ではアゼルバイジャンのナゴルノ・カラバフに対して開始した大規模軍事攻撃が議題に挙がっている。」としている。

アルメニアのパシニャン首相は、先日アルメニアの安全保障がロシアに依存していることに関し「戦略の失敗」と評価していた。この発言の反響が続く中、外務省がまるでロシアに介入するように呼び掛けていることは驚きを呼んだ。パシニャン首相がロシアとの架け橋をないがしろにする一方で、外務省がモスクワにこのような呼びかけをするといった急な方針転換からは、エリヴァン(アルメニア政府)のパニック具合を明らかにするものととれる。

■パシニャン首相はアゼルバイジャンに非

アルメニアのパシニャン首相は、安全保障会議を前にアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフで開始した対テロ攻撃に関して以下のように述べた。

「ナゴルノ・カラバフとは連絡をとりあっている。しかし、通信の問題も発生している。ナゴルノ・カラバフには初め、砲兵・さまざまな兵器で攻撃がなされた。その後、様々な方向から陸上作戦が始まった、という情報がある。」

また、アゼルバイジャンが攻撃を開始する前にロシアの平和維持部隊に知らせていたにもかかわらず、ロシア側からは(アルメニア側に)情報提供がされなかったとし、以下のように述べた。

「この過程で、アゼルバイジャンが攻撃に関する情報の流れを握っており、攻撃開始に関しロシア側に正式な情報を流していることは、我々をたいへん混乱させた。我々は、仲間であるロシアから情報を得ることができなかった。カラバフの状況が安定するよう、ロシア平和維持部隊が対策をとるよう願っている。」

パシニャン首相はアゼルバイジャン側を非難し、「今日、アゼルバイジャンの一連の通信機関は、複数の公式メディアを通じてアゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフでアルメニア軍部隊に向けて攻撃を行ったと報じている。残念ながら、この情報は、アルメニアとアゼルバイジャンに軍事行動を中止するよう呼びかけているとする一部の「パートナー」によっても繰り返されている。アルメニアは軍事行動を行っていないと明言してほしいものだ。ナゴルノ・カラバフにはアルメニア軍がいないことを再度断言したい。アルメニアとアルメニア軍をこの衝突に組み込もうという企ては許さないと再度強調したい。一部の内部勢力や外部勢力がアルメニア政府を糾弾させるように仕向けることは決して許されない。」と述べた。

◾︎トルコのヤシャル・ギュレル国防相とアゼルバイジャンのハサノフ国防相が会談

アゼルバイジャン国防省は「ザキル・ハサノフ国防相はトルコのヤシャル・ギュレル国防相と電話会談を行った。ハサノフ国防相は、同じ国防相という立場であるギュレル国防相に、アゼルバイジャンのカラバフでの対テロ攻撃について伝えた。ギュレル国防相は、トルコはこれまで通りアゼルバイジャンの味方だと言っていた。」と発表した。

■ロシアからの発表

ロシアのマリア・ザハロワ外務省報道官は、アゼルバイジャンが攻撃を始めた後、「二国と連絡をとっている。カラバフでの緊張の高まりを懸念している。二国に対し攻撃をやめるよう呼び掛けている。ロシア平和維持軍は、ナゴルノ・カラバフで任務にあたり続ける。」と述べた。

■EU「攻撃をやめろ」

アゼルバイジャンがカラバフで開始した対テロ攻撃に関し、EUが声明を出した。EUのジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表は書面で以下の声明を出した。「EUは、接触を図っており、カラバフの他の場所で高まる軍事的緊張を非難する。敵対行為を直ちにやめ、アゼルバイジャンに対しては現在行っている軍事行為をやめるよう呼びかけている。バクー(アゼルバイジャン政府)とカラバフのアルメニア人の間で早急に対話を行う必要がある。この軍事的緊張は、地域住民の移住を強いる口実として利用されるべきではない。平和と正常化のための話し合いに相応しい状況にするためにも暴力行為が止む必要がある。交渉の末の目標に向かうには、双方の真の約束の履行が必要だ。」

欧州理事会のシャルル・ミシェル議長も、アゼルバイジャンに対し直ちに対テロ攻撃をやめるよう呼び掛けている。

フランス外務省は、アゼルバイジャンがカラバフで開始した対テロ攻撃について以下のようにコメントしている。「フランスは、この許されがたい攻撃に、地域の安全に向け醸成された脅威に相応の厳しい対応を示すべく、ヨーロッパとアメリカのパートナー達と緊密な連携をとっている。」

■次々と発生する爆発の犠牲に

アゼルバイジャン幹線道路局は、現地時間今日3時45分頃、アフメドベイリ-フュズリ-シュシャを結ぶ幹線道路で工事を行っていた幹線道路局所有の車一台が通行中に、対戦車地雷が爆発したことにより同局の二人が亡くなったと発表した。

この知らせを受けて現場に向かった警察車両に乗っていた警察官4人も、通過中に爆発した地雷により犠牲になったという。

■この軍事的緊張はどのようにして始まったのか

この地域とアルメニアを結ぶ主要回廊であるラチン回廊は、現在ロシア平和維持軍の管理下にある。アゼルバイジャンの領土を通るこの回廊を通じて、食料を含む必要物資をアルメニアは輸送できていた。

しかし、アゼルバイジャン当局は、アルメニア側がこの回廊からナゴルノ・カラバフに武器を輸送しているとして非難している。そのため、アゼルバイジャン側は、赤十字社の救急車以外の車がこの地域を通ることを認めていない。

その代わりに、アゼルバイジャンのアーダム市からハンケンディに向かう道から物資を輸送可能と言っている。

分離主義関係者らは、ラチン回廊の代わりとなるこの道路の使用を受け入れれば、ラチン回廊を二度と使用できなくなるのではないかと懸念している。この道から物資を送ってもらうよりかは、地域の農家に倉庫にある穀物を提供するように求めている。

アゼルバイジャンは、アーダム道の使用開始から24時間後にラチン回廊を開放するとしているが、アルメニア人側はこの新ルートの既成事実化を望んでいない。


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翻訳者:金子萌
記事ID:56354