ガザを待つ危機

2023年10月10日付 Milliyet 紙
イスラエル軍は、ハマスによる攻撃の後、同国の南部を再掌握した。攻撃への応酬として、現時点でガザ地区に空爆を行うイスラエルによる地上作戦の実施が注目されている。軍事専門家らは、この状況は悲劇を招くとしている。

ハマスが土曜日にイスラエル南部に対して実施した攻撃は世界に衝撃をもたらした。イスラエル軍が金網、障壁、障害物が存在する国境で24時間体制で空からの監視も行っているにも関わらず、ハマス勢力は侵入に成功した。両者間の3日間にわたる衝突では、何百人もの人が命を失い、何千人もの人が負傷した。イスラエルは、1973年から現在までで初めて正式に戦争を宣言し、ガザ地区向けの攻撃を実行する前に、市民に対し地区から離れるよう求めた。「完全包囲」という形で進行する計画では、イスラエルはガザ地区の水源を遮断した。

◾️「あらゆる場所から攻撃が行われることになる」

米陸軍士官学校の近代戦争研究所の専門家ジョン・スペンサー氏はこの件に関し、「イスラエルは、ガザ地区に対して史上最大の陸/海/空/宇宙からの軍事作戦を開始する」と予想している。エルサレム戦略安全機構のアレクサンダー・グリンベルグ氏は、「攻撃ではまずハマス司令センターと部隊が攻撃目標となり、あらゆる場所から攻撃が行われる。」と述べた。

イスラエル軍が実施する可能性のある地上作戦は、たいへん困難なものとみられている。イスラエル政府は無数の罠、市民、ハマスの構成員らと向き合うこととなるが、狭い路地では装甲車を使用できなければ大惨事を招く可能性もある。

■可能性のあるリスク

元イギリス軍将校で現在は民間の情報会社Janesでアナリストを務めるアンドリュー・ガレル氏は、包囲が実現された場合、イスラエル軍が全方面で戦闘を行うことになり、あらゆる場所から攻撃を受ける可能性があると述べた。Janesは砲撃も効力を発揮しないとして、砲撃を行えば自軍の部隊を攻撃してしまう可能性もあると明かしている。

■「ガザの地下トンネル」

230万人のパレスチナ人が住むガザの地下はまさに地下都市のようになっている。張りめぐらされたトンネル網はエジプトからイスラエルまで伸びており、ハマス勢力はこれらのトンネルで武器の製造、作戦、兵站活動を行っている。なかには地下40mにまで掘られたトンネルもあり、地上戦となった場合には、ハマス勢力がこのトンネルを通り素早く居場所を変えることによって、イスラエル軍は困難な状況に陥る可能性がある。France24によると、イスラエルは直近で2021年にこれらのトンネルを爆破したものの、いまだに存在が明らかになっていないトンネルがある可能性が高いという。

■難易度が高く多数の死者

ニューヨークに拠点を置くシンクタンクであるスーファン・センターの調査ディレクターを務めるコリン・クラーク氏は、ハマスが「トンネルを熟知している」と指摘し、以下のように述べた。「このような都市での戦闘準備には包括的な情報が必要である。イスラエルにはそのような準備ができていない可能性がある。戦術的な観点からすると、ハマスはこの点で有利になる可能性がある。」

■人質の問題

土曜日と日曜日、無数のイスラエル市民がハマスに人質としてガザ地区に連行された。実施の可能性がある地上戦では、この状況もイスラエルの行動を制限することとなる。フランス国立科学研究センター(CNRS)でイスラエル研究を行っているシルヴェヌ・ビュル氏は「人質の命を第一優先にせねばイスラエル社会が許さない」と述べた。テルアビブに拠点を置くシンクタンクであるイスラエル国家安全保障研究所(INSS)で研究員を務めるコービー・ミハエル氏は、政府は現時点では話し合いができないと述べている。


この記事の原文はこちら

同じジャンルの記事を見る


翻訳者:金子萌
記事ID:56472