ハマスの切り札は地下トンネル

2023年10月15日付 Milliyet 紙

ガザで地上戦がおこなわれる場合、ハマスが使用する地下トンネルはイスラエル軍にとって最大の障壁となるだろう。地下トンネルはガザ地区全体に延び、イスラエル国境内にも及んでいる。またトンネルの特定は非常に困難である。

イスラエルは、ハマス関係者やそのインフラの排除を目的としてガザ地区への空爆を開始した。しかし、伝えられるところによれば、ハマスは同地区を網羅する巨大な地下トンネルを使って活動しており、それによりイスラエル軍は新たな戦略の実施を迫られている。ハマスのトンネルは長さ数キロメートルにも及び、これは、イスラエルが満足するまでガザを爆撃したところで、ハマス壊滅には数十万人規模の地上兵を投入しなければならないことを意味する。そのため、イスラエルが予定する地上作戦で展開する戦略は、これまでの多くの作戦とは似ても似つかないものになるだろうと言われている。このように、イスラエルによる大規模地上攻撃を前に、地下鉄網のごとく市内に張り巡らされたガザトンネルの詳細が再び注目を集めている。

軍事専門家らによれば、ハマスは「一般的な敵」のような動きはしていない。(ハマスの)過激派は、イスラエルの爆弾の矢面に立たされる多くのパレスチナ市民とは異なり、地上の居住地には住まず、表通りに出たりもしない。その代わり、過激派は、2007年のガザ地区の支配権獲得後に築いた大規模トンネル網の中で活動していると専門家らは述べている。

実際、早くも2002年頃からガザには複数の簡単な地下トンネル網が存在していた。そのうち一つは、2004年にイスラエルの警察署を爆破するために使用された。また2004年12月にはイスラエルの警察署に対して二度目の爆弾攻撃が発生し、イスラエル兵5名が死亡している。

初期のトンネルは、ハマスが2007年にガザの支配権を獲得後にガザ地区とエジプトの間に建設され、イスラエルによる封鎖をすり抜けて消耗品等を密輸することを目的として設計された。トンネルはガザ地区のみならず、多くはイスラエル領土の地下にまで到達しており、長年にわたり幾度もハマスの攻撃拠点として機能してきた。

2013年までには、トンネル網は確実にエジプト国境からイスラエルに向かって延び、イスラエルとガザの境界の地下には少なくとも3本のトンネルがあり、うち2本は爆発物であふれている。これらのトンネルは、2014年時点で、ハマスにとって対イスラエル戦における最も効果的な手段の一つだった。過激派はこのトンネルによって武器を運搬し、イスラエルに入国し、兵士を待ち伏せし、また地下道を通ってガザに戻った。そして、2014年7月、ハマスは初めてこのトンネルをイスラエルへの攻撃に利用した。戦闘員13名がトンネル網を利用してキブツ付近の地上へと出た。当時、ハマス指導者イスマーイール・ハニーヤは、このトンネルは「占領に抵抗し、地下と地上の両方で敵と戦うための新たな戦略」であると述べていた。

その後、ハマスがイスラエル領土に向けて発射したロケット弾と、同じくイスラエル軍がガザ地区に発射したロケット弾を発端として、2014年7月から公式的には7週間にわたる紛争が勃発。「防衛線作戦」として知られたこの紛争で、イスラエルの主な目的の一つはハマスのトンネル網を破壊することだった。その際、イスラエル軍は、イスラエルとガザ地区の境界線の端から端まである32本のトンネル(うち14本はイスラエル領内に届いている)を「無効化」したと報告しているが、トンネルは地下網を利用し続けるハマスによって新たに建設された。

『サンデー・テレグラフ』紙は、当時の情報筋によれば、トンネル再建には主にイランから資金提供があったと報じている。イランはハマスの武器刷新のためにロケット弾やミサイルも提供した。それ以降、ハマスは、おそらく先日(10月7日)の攻撃に向けてトンネル網を大幅に拡大したと考えられる。

地下トンネル網は現在、ガザ地区に沿って数十キロメートルに及び、ハーンユーニス、ジャバリア、アル・シャティの難民キャンプにまで延びている。また、同じくイスラエル領内にも広がっている。

地下トンネルは、ハマスやパレスチナ・イスラミック・ジハードといった組織をも含む、ガザの複数の組織によって利用されている。こうした組織はそろって、トンネルは防衛のために必要であり、イスラエルの厳しい国境管理がもたらす困難を克服するために使用しているのだと述べている。

イスラエル軍は長年、この巨大トンネル網の破壊を試みてきたが、かなりの困難を強いられている。その主な理由は、建設に3000万~9,000万ドルを投じたと思われるトンネルを空から探知するのが非常に難しいためだ。トンネルは空襲や崩落への対策としてコンクリートで補強されている。

(写真:市街戦になった場合、兵士に先んじてブルドーザーが地雷や爆発物を撤去することになる)

■イスラエルは「テディベア」を発動

パレスチナ人入植地で地上作戦が行われることになる場合、国境地点に集結する戦車300台及び兵士17万3千人の進路を確保するための特別な装備が必要となる。

イスラエル軍は、無敵のブルドーザーとして世界的に知られるD9R装甲ブルドーザーを使用するのではないかと予想されている。このブルドーザーは、イスラエル軍の隠語で「テディベア」を意味する「ドゥビ」という名で呼ばれている。

イスラエル製D9Rは、戦闘時に地雷や手榴弾を爆発させたり、道路上の障害物を破壊したりするために使用される。15トンの追加装甲と強化ブレードを備えたD9Rは、武器や爆発物への耐性を有し、兵士らが安全に前進する上で重要な役割を果たす。


この記事の原文はこちら

同じジャンルの記事を見る


翻訳者:原田星来
記事ID:56517